もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

防衛計画の大綱の改定とクロス・ドメイン

2018年08月30日 | 防衛

 防衛計画の大綱改定に対する有識者懇談会の初会合が開催される等、作業が本格化した。

 防衛計画の大綱は、概ね10年間隔で改定されることになっているが、前回改定後の国際関係の急激な変化に対応すべく5年経過後に改定が検討されるものである。しかしながら大綱に盛り込まれた諸施策が実効的に完成されるためには数年の期間が必要であり、常に自衛力が情勢変化に後追い状態であるのは致し方のないところと思う。今回の大綱改定のキ-ワードは「クロス・ドメイン(自民党訳は多次元横断:政府訳は「領域横断)と「アクティブ・ディフェンス(積極的防御)」機能の強化であると思う。クロス・ドメインとはインターネトで世界中のサーバーから公開されたコンテンツを利用できるシステムであると思っていたが、一般的にも使用されるものだと知った。それはさておき、自民党から今回提言された「クロス・ドメイン」は、従来の陸海空3自衛隊の統合運用の枠を宇宙やサイバー空間にまで広げたもので、ハイブリッド戦にも対応できる防衛力の整備を念頭に置いているもののようである。折りしもJAXAはスペース・デブリ(宇宙ゴミ)回収方の開発研究や有人宇宙船(月面離陸船)の開発に意欲を見せており、防衛計画と気脈を一にした動きとも考えられる。一方、アクティブ・ディフェンスは、これまでの専守防衛の概念から一歩踏み出して、侵攻兵力の後方に位置する策源地若しくは指揮管制機能を攻撃し得る兵力を整備しようとするもので、これまで忌避されていた巡航ミサイル等の長射程火力、EMP兵器、ステルス戦闘機等の整備を可能とするものと考える。また、米中の関係が進展してアジア地域におけるパワーバランスが崩れる事態を考慮すれば、これまでのようなアメリカの兵器体系に従属・隷属する状態からの脱却をも考慮しなければならないと思う。現在、日本学術会議は軍事技術の研究開発には加担しないとしているが、これまでも半導体、金属材料、AI等のデュアルユース技術開発を担って世界の軍拡に手を貸している事実を認めて、象牙の塔から出て日本の存立に貢献することを求められる日も近いと思うところである。

 今回の大綱改定、特にアクティブ・ディフェンス能力の強化に伴って問題視されるのが、憲法9条との兼ね合いであろうと思う。二つのテーマを並べてみるとき、9条2項を削除するという石破茂氏に軍配を挙げたくなるのだが、果たして総裁選ではいかに・・・。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿