新型イージス艦「まや」が進水して2020年に就役する予定であり、2021年就役予定の同型2番艦を加えると、当面目指していたイージス艦8隻体制が完成することになる。
イージス艦8隻体制の完成によって1個護衛隊群当たり2隻保有できることとなり、イージス艦のやりくりに余裕が生まれ艦隊防空能力や本土に飛来するミサイル防御能力が著しく向上する。しかしながら、不安に思うのは推進機関として、COGLAG(ガスタービンエレクトリック・ガスタービン複合推進方式:COmbined Gas turbine eLectric And Gas turbine)方式を採用していることである。COGLAG方式とは、低速時にはガスタービン発電機による電気推進で航走し、高速時にはガスタービンも直接併用して推進力を得るものである。COGLAG方式を採用した理由としては、低速時の燃費と静粛性が向上することにより低速遊弋を余儀なくされるミサイル監視における滞洋能力の向上を図ったもので、南極観測艦「しらせ」での使用実績に自信を持ったことに起因するものと思う。しかしながら、戦闘艦艇の推進機関の最大の使命は、戦闘時に艦を戦列に維持し損傷を受けた場合にも応急処置によって基地に辿り着くことであると考えれば、従来の機関に推進電動機を付加した複雑な推進システムは、戦闘被害と故障処置に対する脆弱性を高めるものではないだろうか。また、推進システムの構成品が多くなれば、整備費が割高になるとともに補給品目が増加することは必至で、防衛費の増額にも繋がるものと思う。しかしながら最大のネックは、装備品の形態管理が場当たり的であることである。貧乏海軍が折に触れて(主として政治的な理由から)種々雑多なシステムを採用した結果、整備・補給の面から艦艇の即応体制低下が懸念されているのが実状ではないだろうか。
複合型推進機関に対しては、ライフサイクルコスト面と設計上の両面から種々のメリットが喧伝されるが、それと同程度のデメリットが存在することも事実である。強靭な海軍力を建設するための総合的なデザインをもって艦艇建造を図って欲しいと願うものである。
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