もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

翁長知事に見るアジアの緊張緩和

2018年06月24日 | 野党

 昨日「沖縄全戦没者追悼式典」行われ、翁長沖縄県知事が平和宣言を行った。

 6月23日は、沖縄の地上戦を指揮した32軍司令官の牛島満中将が自決し、組織的な戦闘が終わった日とされており、翁長知事は平和宣言の中で「辺野古移設はアジアの緊張緩和に逆行する」と述べ、改めて移設反対の持論を強調した。しかしながら、米朝首脳会談を含めて核保有国間で行われる軍縮交渉は、戦略兵器の削減と相互に先制攻撃を行わないことを確認するもので、中・短距離の攻撃兵器については配備される地域が争点になるだけで、削減について協議されることは少ない。大国の戦略兵器の削減から何が生まれるかを考えると、核の削減により余剰となった核技術者が海外(核未開発国)に流出して開発に携わるために、かえって核の脅威が拡散することとなる。一方、余剰となった製造設備が戦術兵器の生産に向けられる結果、中・短距離ミサイルを含めた局地戦用の兵器が世界中に蔓延して、紛争を複雑かつ凄惨なものにしている。このことは、北朝鮮とパキスタンの核保有、イラン・イラク・リビアの核開発疑惑、湾岸戦争・シリア内戦・イスラム国の戦闘激化の直接原因となっていることからも明らかである。翁長知事の発言に話を戻すと、米朝首脳会談における北(または半島)の非核化とは北の戦略兵器凍結と米中が相互に先制攻撃を行わないことが最大・究極の眼目であり、アジアにおける緊張は緩和されるどころか局地紛争勃発の危険性は却って増大するものである。それ故にこそ、局地紛争を利用しての勢力拡大を常套手段とする中国も一定の理解を示し、北を支援しているものと考えるのが至当と思う。

 アメリカのみの保全と経済的な独り勝ちを目指すために、全ての事象を短期的なコスト・損得勘定で推し量るトランプ大統領、習王朝と習王朝に冊封を誓った金王朝それぞれの野望、アジア情勢は新たな混沌の時代を迎えようとしているのではないだろうか。