もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

対中ODAとスワップ協定

2018年10月26日 | 与党

 安倍総理の訪中に関して、標記の2案件が脚光を浴びている。

 対中ODAについては、平成19年で終了した「低金利円借款」以後も引き続き行われていた無償資金協力等も終了するとのことであり、世界2位の規模まで成長した中国に上納金的な関係を引きずることに抵抗を覚えていた自分としては、今回の全面的な取り止めは遅きに失した感があるものの評価するものである。一方「通貨交換(スワップ)協定は、2002年に締結した協定が、2012年9月の沖縄・尖閣諸島の国有化による日中関係の悪化で更新されず、2013年9月に失効していた旧協定の10倍(約3兆円)にまで規模を拡大して締結しようとするもので、アメリカとの貿易戦争に先行き不安の中国元にとって円の支援は喉から手の出る程に欲しいものと思う。スワップ協定に関して、運用の詳細まで理解しているわけではないが、素人考えでは「手形の裏書保証」や「連帯保証人」的なものと考えている。円と元の通貨不安が起きる事態を考えれば、アジア諸国で相次ぐ「一帯一路構想」の見直し、アメリカから求められている知的財産保護に起因する「中国製造2025」の停滞、「軍備拡張」等の諸条件を見る限り、元の通貨不安が起きる公算の方が大きいと思う。もし元の通貨不安に対して円が支援する事態となれば、中国の新植民地政策や軍備拡張に手を貸すこととなり、結果的に日本は自分で自分の首を絞めることにしかならないと思う。中国経済の躍進に手を貸した形の総額4兆円近いODAが、中国国民に知らされることもなく、感謝どころか反日政策で応えられた歴史を持っている。日中首脳会談、特にスワップ協定の締結のためか今日にして急に対中ODAの実情を広報し始めた中国政府の姑息な手法に、日中関係好転の兆しと喜ぶべきではないだろう。日中首脳会談の手土産げにしてはあまりにもリスクが大きく、もし締結するならば、尖閣諸島近海からの公船の撤退、或いは白樺ガス田の廃棄等の目に見える対価を得て欲しい。おそらく中国はスワップ協定の対価として中国人旅行者の拡大や、文化交流促進、東シナ海の海底資源の共同開発程度しか提案してこないと思う。それらの空文にも等しい提案で過去に何度も煮え湯を飲まされた経験を思い起こして、安倍総理の外交に期待するものである。

 アメリカとの擦り合わせを終えてのスワップ協定締結であろうが、全世界的な中国膨張警戒感の下での協定を決して急ぐべきではないと思うし、具体的な対価の無い安易なスワップ協定は敵に塩を送り・地歩を与えることにしかならないと思う。


ホンジュラス発の移民集団に思う

2018年10月25日 | アメリカ

 ホンジュラスを源流としてアメリカを目指している移民集団が、グァテマラを通過してメキシコ国境に到達した。

 メキシコは国境で入国を阻止しているが、人道的な配慮から婦女子を優先して難民申請の受理を始めたと報じられている。移民集団の存在が報道され始めた頃は2000人程度であったが、各集団が合同したりグァテマラ領内で合流したりと、現在では7000人規模に膨れ上がっており、国連の発表では1万人以上ともされている。一方、最終目的地とされるアメリカは、当該集団が経済難民であること、中東住民の混在が疑われること、集団の移動にベネズエラ左翼政権が関与している疑いを理由として、当初から入国拒否・断固阻止を表明しているため、アメリカに入国できる可能性は極めて低いとみられている。メキシコにしても大量の移民を受け入れる素地は無く、難民申請を認めた者を除いて強制送還せざるを得ないものと考えられる。今回のような大量移動ではないものの、ホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの中米3国からの不法移民流出は2010年以降断続的に続いており、アメリカが不法移民にも比較的寛容であった民主党のオバマ政権であったことから、アメリカに入国できた者も少なくないとされており、密入国のルートと相場が確立していたのではないだろうかと推測する。前記3国は、最貧国に数えられるとともに凶悪犯罪発生率でも世界の5指にランク付けされるほど経済・治安が悪化しており、より良い生活とより安全な地域を求めて移民(難民)を目指すことは、彼等にとって死活問題であろうことは容易に推測できる。また、キューバやシリアが行ったように、国内の不平分子や犯罪者が難民の名の下に国外に脱出することを黙認(或いは奨励・強制)する例は多いので、今回のように略奪行為を働くことなく長期間の移動に耐え、暴徒化せずに組織だった行動を執る背景には、移民流出国と通過国の意志やユニセフ以外の勢力の支援が疑われるのは当然かとも思う。 

 民族の移動と言えば、1000年余を掛けてヨーロッパを席巻した「ゲルマン民族の大移動」や「モーゼの出エジプト」が思い起こされるが、規模は小さいながらも今回の移民行動は民族の移動とも呼ぶべきものではないだろうか。「行くも地獄・留まるも地獄」の立場に立たされた場合、自分はどうするのだろうかと考えたが結論までには至らなかった。いや、考えるのを途中で止めたのが本音である。


岩谷産業の駅伝選手に学ぶ

2018年10月24日 | カープ・スポーツ

 福岡で行われた全日本実業団対抗女子駅伝予選会で、負傷した岩谷産業の選手が担当区間残りの200mを這ってタスキをつないだ。

 一連の顛末では、大会運営と審判には批判的な意見が、当事者である女子選手には称賛の声が多く寄せられている。自分も女子選手の行動を称賛するものであり、そこには日本人としての美意識が窺い知れると思うからである。団体競技の神髄は「One For All,All For One(一人は全員のために、全員は1つの目標に)」に尽きると思うが、その発露を最も求められるのが駅伝であると思う。負傷した女子選手にすれば「全員(チーム)のために自分がタスキを繋ぐこと」が唯一の使命であり、それ以外の選択肢は次善のものと考えた結果が競技を続けるという事であったと思われる。”選手生命が終わるかもしれない””甚大な後遺症が残るかもしれない”というような最悪の事態さえ覚悟しての競技続行であり、その決断に立った自己犠牲に対して他人が口を挟むことは彼女への冒涜であると思う。第4次安倍内閣の新任文科相が教育勅語を「現代風にアレンジすることで現在の教育資料としての使用にも耐え得る」との発言に対して反発している野党諸氏は、彼女の行為と信条を如何に理解するのであろうか。「朋友相信ジ」「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ」、将に教育勅語が求める日本人の具現ともいえるものではないだろうか。日本以外に駅伝競技が普及しないのは、日本人の大方が持っている自己犠牲を至高のものとするDNAを他の民族が持っていないことに起因するものと思う。特に、自己の権利と主張は声高に叫ぶものの、果たすべき義務については無視する漢族や朝鮮族にとっては、理解することもできないだろうと推測するものである。そういえば、複数の野党指導者がネット上で漢族や朝鮮族のDNA継承が取り沙汰されていることも、納得できるところである(笑)。

 功利的行為と自己保身が横行する現在、今回の岩谷産業の女子選手の行為は一服(以上の)の清涼剤と感じたのは自分だけではないと思う。当該選手の一日も早い回復と競技復帰を願うとともに、今回の英断が彼女の今後を更に素晴らしいものにするであろうことを願うものである。

 


CSRの概念

2018年10月23日 | 社会・政治問題

 日本財団の笹川陽平会長のCSRに関する論評を読んだ。

 不明にしてCSRという言葉さえ知らなかったので、氏の論評の梗概を借りつつ勉強した。”ことバンク”では<CSR(corporate social responsibility):企業が収益を上げ配当を維持し、法令を遵守するだけでなく、人権に配慮した適正な雇用・労働条件、消費者への適切な対応、環境問題への配慮、地域社会への貢献を行うなど、企業が市民として果たすべき責任をいう。企業の社会的責任又は社会的責任投資>と解説されている。笹川氏によると、インドでは企業の「純資産」「総売上高」「純利益」の3要件に一定の基準を設けて、そのうちの1つでも要件を満たした場合には、過去3年間の平均純利益の2%以上をCSR活動に費やすように義務付けられているそうである。アメリカでも「Give Five」という合言葉で税引き前利益の5%を公益的な寄付に拠出する取り組みが存在し、日本でも1990年に経団連が「1%クラブ」を設立して、現在では法人226社、個人850人か会員となり経常利益や可処分所得の1%以上を社会貢献活動に拠出しているそうである。続けて笹川氏は、日本経済が好況にも拘わらず企業利益の労働分配率が66.2%に留まり、残余の大半が社内留保されている現況が消費の低迷に繋がっていると分析して、1%クラブの精神を社内留保預金にも及ぼす取り組みを提言している。現在、企業の社内留保預金は200兆円を超えているために、当該預金に1%クラブの精神が及んだ場合は2兆円近い資金が公的な活動に充当されるとも書かれている。

 過去、業績悪化の企業が最初に着手する人員整理の余波で体育関係のクラブが閉鎖されることが多かったし、マイナーなスポーツであるフェンシングで銀メダルに輝いた太田選手は無職であった。そのようなときに奇特な企業や資産家がスポンサーに名乗り出ないかと期待していたが、日本にも限定的ながらCSR活動が存在していることを知って安堵した。苦境に陥った女子体操選手に支援の手を差し伸べた高須院長の志も、CSRの精神であろうか。貧者の願望と承知で結論すれば、日本の大企業や資産家が、月旅行や奢侈やドンファンとして報道されるのではなく、CSR活動で脚光を浴びることを期待するものである。


サウジアラビアの記者殺害は?

2018年10月22日 | 社会・政治問題

 サウジアラビアの反体制ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がサウジの在トルコのサウジ総領事館内で殺害されて半月余が経過した。 

 殺害・死亡の経緯が次第に明るみになっているが、当初見られていた反体制ジャーナリストの殺害による言論封殺とは別の側面も取り沙汰されるようになった。カショギ氏は、サウジの名家に生まれ王室内で一定の地歩を築いたがビンラディンの影響を受けて、近年では一般的な反体制ジャーナリストの概念を超えてエジプトのイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」の別動隊的な活動家若しくはスポークスマンと見られるようになったと報じられており、アメリカでは同氏の亡命を受け入れたことが問題視されている。そのことはさておき、領事館内での殺害を認めざるを得なくなったサウジは、殺害は「同氏を説得せよ」という指示を超えて起きた偶発的は事件としているが、事件が在外公館内で起きたこと、実行部隊が移動にプライベートジェットを使用していること等を考えれば、殺害はサウジの高いレベルの意思を受けた確信的な犯行であることは間違いないことと思われる。カショギ氏がジャーナリストでるにせよ活動家と呼ばれにせよ、一人の殺害事件が西洋的な改革を目指すサウジとイスラム原理主義の確執、サウジを巡る米露の軍事的相克、最大の産油国サウジの石油戦略が複雑に絡んだ様相に発展している。反体制者や政敵を排除するために国家の最高レベルが関与したであろうテロは未だ健在で、最近でもマレーシアでの金正男暗殺、イギリスでの亡命ロシア人セルゲイ・スクリパリ襲撃が挙げられるが、中国での孟宏偉国際刑事警察機構(ICPO)総裁の神隠し(粛清?)も国家テロと呼ぶべきかもしれない。

 日本でも、民主党政権誕生に暗躍したテレビ朝日元報道局長の椿貞良氏、従軍慰安婦を捏造した朝日新聞元記者の植村隆氏を始めとして、ジャーナリストを装った反体制活動家の存在が見受けられるが、言論封殺の国家テロの標的とされることもなく活動できていることは何と幸せなことだろうか。