各種の障害者関係の施設を運営している組織から発行されている機関誌には、新年の挨拶が掲載されている。それらを読んでいて、感じたことを記してみたい。私が最近感じていることを述べる。かつて、障害者小規模作業所移行調査で新聞社の取材に応じたときも、話したことでもある(読売新聞、2008年12月28日)。
■ 事業経営の大切さを述べている
多くの障害者関係の事業所を運営している組織が発行している機関紙を読んだ。それぞれの組織は、障害者共同作業所(多くは無認可)とか、NPO法人運営とか、社会福祉法人立とかに限らない。多くは理念も大切だが、経営を維持することも大切だと述べている。経営が安定しないと立派な理念を掲げていても、それが実現できない事態に陥ってしまう、と書いてある記事もある。
逼迫した財政の影響で、事業所への補助金やさまざまな報酬も削減されて事業所の運営が危機に陥っている外部的要因もあるのだろうと思う。現在、障害者への介助などの仕事や障害者たちとともに働いている複数の常勤スタッフを常勤は一人に減らして、他はボランティアとか非常勤に替えることを提案された事業所もあるという。あるいは行政から、今年度は財源を確保するからとして、次年度以降は大幅に圧縮すると宣言された組織もあるようだ。
原材料の高騰で運営に苦労している事情も加わっている。どうしたら、経営を安定化させることができるのか。スタッフたちは、いろいろな思案を行い、実際に運営にあたって工夫もしている。これ以上、どうすれば改善できるのか、運営を投げ出したくなるほどだ。
■ これまでは、たしかに甘い経営をしている事業所もあった
各種の障害者事業や高齢者介護事業を運営している組織では、これまで行政の補助金をたよりに運営してきた長い歴史がある。独自に運営しようと思っていても、どうしても行政の補助金や措置費などに頼る結果になりがちだ。その自治体行政の財政が逼迫した(だから障害者自立支援法で中央政府の財源に移行して欲しいというのだろう。新聞社が障害者小規模作業所の調査を行なったのもわかる)。障害者自立支援法や介護保険法に従い、中央政府も報酬を減額してきた。だから、事業所の経営も危機に陥っただろう。
しかも、障害者や高齢者などからの利用料収入だけで、事業所の運営を賄うには無理だという事情もある。そもそも、福祉事業を運営しているのだから、運営を賄う収益が確保できるはずはないと考え勝ちだった。
販売収入を増大しようとしても、活動の中心である利用者の力では、なかなか成果があがらない事情もあるだろう。スタッフたちも商品開発力や営業技術をもっているわけとは限らない。いろいろ工夫しても収入増加へのあきらめもあっただろう。たしかに、市場における民間営利企業との競争では、なかなか思うように成果がでなかった。
経費を削減する努力も無視したわけではない。ただ、そこで多くの利用者の状態を考えると、介護などで関わる必要度が高い人も多かったという事情もあった。民間企業との連携や提携も考えたが、効果が上がるようにするには、民間営利企業の体制や環境も十分ではなかったであろう。
とはいっても、経営を自立させるためにいろいろな努力をしてきた事業者も多い。そうした事例も多くある。一方でどうも収入増や経費節減への工夫が不足していたと思われる組織もあった。
その意味では、組織のリーダーたちが、経営安定や健全化を中心に考えるように変化したことは、大きな意識変革である。これまで私も、組織の担当者たちはもっと経営努力を払うべきだと主張してきたつもりだ。ただ最近の動きは私から見ると、リーダーたちは組織の経営を安定化する方向に意識を集中しすぎているように感じる。これまで表明してきた考えとは矛盾するが、それだけでいいのか、と反問したくなる。
■ 地域の共同財産として人々に認識されてきただろうか
事業所の経営安定化を図ることも大切である。だが、作業所にとって理念を重要なものと扱ってほしい。現実と理念とを対比させ、どちらが重要かを競うつもりはないが。
障害者などが地域で共に働き暮らすための拠点としての事業所だっただろう。設立の時には、今の企業社会では実現がおぼつかない働き方を求める地域の拠点だったと思う。地域に存在する多くの人々が場所や資金、労力・知力などを提供しあい、共に働く場を創ってきたはずだ。
実際に自分たちの働き方を実現する。それを地域の人々も受け止める。その働きの一つが製品(一般には商品ともいう)に結実しているだろう。販売を拡大する活動だろう。あるいは、具体的に対人・対物サービスによって形を示すという方法もある。
売上げを増やすということは、自分たちが行なった活動の結果でもある。地域の人々にその働きを評価される度合いを高めることにもつながる。事業所で仕事をすることが、地域の共同財産という証明にもなる。地域社会や人々の考え方を変えていくことにつながると、思う。
■ 事業経営の大切さを述べている
多くの障害者関係の事業所を運営している組織が発行している機関紙を読んだ。それぞれの組織は、障害者共同作業所(多くは無認可)とか、NPO法人運営とか、社会福祉法人立とかに限らない。多くは理念も大切だが、経営を維持することも大切だと述べている。経営が安定しないと立派な理念を掲げていても、それが実現できない事態に陥ってしまう、と書いてある記事もある。
逼迫した財政の影響で、事業所への補助金やさまざまな報酬も削減されて事業所の運営が危機に陥っている外部的要因もあるのだろうと思う。現在、障害者への介助などの仕事や障害者たちとともに働いている複数の常勤スタッフを常勤は一人に減らして、他はボランティアとか非常勤に替えることを提案された事業所もあるという。あるいは行政から、今年度は財源を確保するからとして、次年度以降は大幅に圧縮すると宣言された組織もあるようだ。
原材料の高騰で運営に苦労している事情も加わっている。どうしたら、経営を安定化させることができるのか。スタッフたちは、いろいろな思案を行い、実際に運営にあたって工夫もしている。これ以上、どうすれば改善できるのか、運営を投げ出したくなるほどだ。
■ これまでは、たしかに甘い経営をしている事業所もあった
各種の障害者事業や高齢者介護事業を運営している組織では、これまで行政の補助金をたよりに運営してきた長い歴史がある。独自に運営しようと思っていても、どうしても行政の補助金や措置費などに頼る結果になりがちだ。その自治体行政の財政が逼迫した(だから障害者自立支援法で中央政府の財源に移行して欲しいというのだろう。新聞社が障害者小規模作業所の調査を行なったのもわかる)。障害者自立支援法や介護保険法に従い、中央政府も報酬を減額してきた。だから、事業所の経営も危機に陥っただろう。
しかも、障害者や高齢者などからの利用料収入だけで、事業所の運営を賄うには無理だという事情もある。そもそも、福祉事業を運営しているのだから、運営を賄う収益が確保できるはずはないと考え勝ちだった。
販売収入を増大しようとしても、活動の中心である利用者の力では、なかなか成果があがらない事情もあるだろう。スタッフたちも商品開発力や営業技術をもっているわけとは限らない。いろいろ工夫しても収入増加へのあきらめもあっただろう。たしかに、市場における民間営利企業との競争では、なかなか思うように成果がでなかった。
経費を削減する努力も無視したわけではない。ただ、そこで多くの利用者の状態を考えると、介護などで関わる必要度が高い人も多かったという事情もあった。民間企業との連携や提携も考えたが、効果が上がるようにするには、民間営利企業の体制や環境も十分ではなかったであろう。
とはいっても、経営を自立させるためにいろいろな努力をしてきた事業者も多い。そうした事例も多くある。一方でどうも収入増や経費節減への工夫が不足していたと思われる組織もあった。
その意味では、組織のリーダーたちが、経営安定や健全化を中心に考えるように変化したことは、大きな意識変革である。これまで私も、組織の担当者たちはもっと経営努力を払うべきだと主張してきたつもりだ。ただ最近の動きは私から見ると、リーダーたちは組織の経営を安定化する方向に意識を集中しすぎているように感じる。これまで表明してきた考えとは矛盾するが、それだけでいいのか、と反問したくなる。
■ 地域の共同財産として人々に認識されてきただろうか
事業所の経営安定化を図ることも大切である。だが、作業所にとって理念を重要なものと扱ってほしい。現実と理念とを対比させ、どちらが重要かを競うつもりはないが。
障害者などが地域で共に働き暮らすための拠点としての事業所だっただろう。設立の時には、今の企業社会では実現がおぼつかない働き方を求める地域の拠点だったと思う。地域に存在する多くの人々が場所や資金、労力・知力などを提供しあい、共に働く場を創ってきたはずだ。
実際に自分たちの働き方を実現する。それを地域の人々も受け止める。その働きの一つが製品(一般には商品ともいう)に結実しているだろう。販売を拡大する活動だろう。あるいは、具体的に対人・対物サービスによって形を示すという方法もある。
売上げを増やすということは、自分たちが行なった活動の結果でもある。地域の人々にその働きを評価される度合いを高めることにもつながる。事業所で仕事をすることが、地域の共同財産という証明にもなる。地域社会や人々の考え方を変えていくことにつながると、思う。