◇12月最終公演
全国の聾(ろう)学校や特別支援学校100校以上を2年以上かけて回り、防災人形劇「稲むらの火」の上演を続ける聴覚障害者と健聴者でつくる劇団「デフ・パペットシアター・ひとみ」(川崎市)の活動が大詰めとなった。「聴覚障害のあるすべての子どもたちに防災の意識を高めてもらいたい」と始めたツアーは12月に富山県立富山聴覚総合支援学校で大団円を迎える。
「稲むらの火」は、江戸時代の1854年の安政南海地震の際、今の和歌山県に住んでいた浜口儀兵衛(梧陵(ごりょう))の活動をモデルにした物語。聴覚障害者は大災害時に、ラジオや広報車などの情報から取り残される恐れがあり、劇団は「人形劇で分かりやすく防災教育を」と手話のナレーション付きの「稲むらの火」の上演を続けてきた。
ストーリーは、庄屋の五兵衛(ごへえ)が地震の後、潮が引くのを目にし、海辺にいた人たちに危険を知らせるために稲束に火を付ける、というもの。初公演は08年10月に川崎市の聾学校で行い、劇の後には地震や火災時のアドバイスもしてきた。聴覚障害があり、手話のナレーションを務める善岡(よしおか)修代表(35)は「各地の子どもたちの反応を見ながら、劇での表現を変えたりもし、いわば、全国の子どもたちと作ってきた」と笑顔で話し「聴覚障害者の先輩として、子どもたちに夢を持ってほしい、との思いも込めて続けてきた」と振り返る。
今月13日には京都府立聾学校で上演。小学部から高等部の57人が真剣な表情で鑑賞した。高等部3年の会田崇紘さん(17)は「もっと地震や津波について勉強したい。家で家族とも話し合いたい」と話した。善岡代表は奄美大島の豪雨災害のニュースもテレビ映像で見た。「逃げ遅れは聞こえない人たちにも起こりうることだ。想像できない程の勢いで水かさが増えたという話も聞く。地震や津波についてもそうだが、私たちは時にオーバーな想像力で想像することも必要」と話す。
毎日新聞 2010年10月27日 東京夕刊
全国の聾(ろう)学校や特別支援学校100校以上を2年以上かけて回り、防災人形劇「稲むらの火」の上演を続ける聴覚障害者と健聴者でつくる劇団「デフ・パペットシアター・ひとみ」(川崎市)の活動が大詰めとなった。「聴覚障害のあるすべての子どもたちに防災の意識を高めてもらいたい」と始めたツアーは12月に富山県立富山聴覚総合支援学校で大団円を迎える。
「稲むらの火」は、江戸時代の1854年の安政南海地震の際、今の和歌山県に住んでいた浜口儀兵衛(梧陵(ごりょう))の活動をモデルにした物語。聴覚障害者は大災害時に、ラジオや広報車などの情報から取り残される恐れがあり、劇団は「人形劇で分かりやすく防災教育を」と手話のナレーション付きの「稲むらの火」の上演を続けてきた。
ストーリーは、庄屋の五兵衛(ごへえ)が地震の後、潮が引くのを目にし、海辺にいた人たちに危険を知らせるために稲束に火を付ける、というもの。初公演は08年10月に川崎市の聾学校で行い、劇の後には地震や火災時のアドバイスもしてきた。聴覚障害があり、手話のナレーションを務める善岡(よしおか)修代表(35)は「各地の子どもたちの反応を見ながら、劇での表現を変えたりもし、いわば、全国の子どもたちと作ってきた」と笑顔で話し「聴覚障害者の先輩として、子どもたちに夢を持ってほしい、との思いも込めて続けてきた」と振り返る。
今月13日には京都府立聾学校で上演。小学部から高等部の57人が真剣な表情で鑑賞した。高等部3年の会田崇紘さん(17)は「もっと地震や津波について勉強したい。家で家族とも話し合いたい」と話した。善岡代表は奄美大島の豪雨災害のニュースもテレビ映像で見た。「逃げ遅れは聞こえない人たちにも起こりうることだ。想像できない程の勢いで水かさが増えたという話も聞く。地震や津波についてもそうだが、私たちは時にオーバーな想像力で想像することも必要」と話す。
毎日新聞 2010年10月27日 東京夕刊