◇「安心できる施設」建設へ--鹿児島
「養護学校へ通う子供たちが将来も笑顔でいてほしい」
そんな障害児を持つ母親なら当たり前の願いを実現しようという活動が、母親の手で始まっている。「みつばちビレッジ」プロジェクト。障害者が安心して暮らし働きながら、必要な身体ケアも受けられる総合福祉施設を目指す試みだ。母が子を思う一心で、少しずつ活動の輪を広げている。
同プロジェクト実行委代表の原田真琴さん(38)=鹿児島市皷川町=は、01年10月30日、予定日より約4カ月早く長男の雄羽(ゆう)君と次男の翔生(いしょう)君の双子を出産した。体重は2人ともわずか700グラム前後。鹿児島市立病院に長期の入院を余儀なくされた末、雄羽君は1歳10カ月で亡くなった。一方、翔生くんは脳内出血など幾度となく生死の境に直面したが乗り越えた。発達遅滞と足に障害を持ち、今は養護学校の小学部4年生だ。
だが、養護学校高等部の卒業後を考えると、不安は大きい。「学校では子供たちの能力を伸ばしてくれる。でも福祉の中で生きる卒業後は、果たして必要なサポートを受けられるのか」
卒業後、就職できる子どもは限られている。ほとんどが障害者施設に通所または入所する。ただ、多くの施設では空きがなく、毎日別の施設を転々とするケースもある。さらに、人手不足から食事や排泄の世話など必要最低限の世話にとどまり、「ただそこで過ごすだけの場」になってしまっている場合も多いという。例えば、オムツ着用を求められ自力でできた排せつもできなくなってしまう。「それでは大切な命の可能性を摘み取ることになる。できることはやらせてその子らしく生きていける施設を」。やがて想いを同じくする母親らが集まり始めた。
実行委員の福森由紀さん=同市東坂元3=もその一人。長男(9)は足が動かないなどの障害がある。翔生君と同級生で「福祉は手薄で、ニーズに追いついていない。多くの人が知るきっかけにもなれば」と活動に参加している。
みつばちビレッジは、グループホームや入所施設に工房、菜園、カフェなど働く場を併設し、リハビリや心身のケアの看護体制も充実させる構想。コンサートやバザーを開いて開放型とし、障害の有無を超えた交流の場を目指す。実行委員は県内に住む母親ら17人。昨秋から準備を進め、今年5月に立ち上げイベントを開いた。雑貨店など9店舗が並び、収益の一部を建設資金として積み立てている。
「資金や土地の確保など、現実的なところはまだまだ。でも、みつばちのように元気に飛び回りたい」と原田さん。組織をNPO法人化し、今後も精力的に活動する方針だ。実行委はカンパや協力者を募っている。問い合わせは(050・1337・0930)へ。
毎日新聞 2011年8月6日 地方版
「養護学校へ通う子供たちが将来も笑顔でいてほしい」
そんな障害児を持つ母親なら当たり前の願いを実現しようという活動が、母親の手で始まっている。「みつばちビレッジ」プロジェクト。障害者が安心して暮らし働きながら、必要な身体ケアも受けられる総合福祉施設を目指す試みだ。母が子を思う一心で、少しずつ活動の輪を広げている。
同プロジェクト実行委代表の原田真琴さん(38)=鹿児島市皷川町=は、01年10月30日、予定日より約4カ月早く長男の雄羽(ゆう)君と次男の翔生(いしょう)君の双子を出産した。体重は2人ともわずか700グラム前後。鹿児島市立病院に長期の入院を余儀なくされた末、雄羽君は1歳10カ月で亡くなった。一方、翔生くんは脳内出血など幾度となく生死の境に直面したが乗り越えた。発達遅滞と足に障害を持ち、今は養護学校の小学部4年生だ。
だが、養護学校高等部の卒業後を考えると、不安は大きい。「学校では子供たちの能力を伸ばしてくれる。でも福祉の中で生きる卒業後は、果たして必要なサポートを受けられるのか」
卒業後、就職できる子どもは限られている。ほとんどが障害者施設に通所または入所する。ただ、多くの施設では空きがなく、毎日別の施設を転々とするケースもある。さらに、人手不足から食事や排泄の世話など必要最低限の世話にとどまり、「ただそこで過ごすだけの場」になってしまっている場合も多いという。例えば、オムツ着用を求められ自力でできた排せつもできなくなってしまう。「それでは大切な命の可能性を摘み取ることになる。できることはやらせてその子らしく生きていける施設を」。やがて想いを同じくする母親らが集まり始めた。
実行委員の福森由紀さん=同市東坂元3=もその一人。長男(9)は足が動かないなどの障害がある。翔生君と同級生で「福祉は手薄で、ニーズに追いついていない。多くの人が知るきっかけにもなれば」と活動に参加している。
みつばちビレッジは、グループホームや入所施設に工房、菜園、カフェなど働く場を併設し、リハビリや心身のケアの看護体制も充実させる構想。コンサートやバザーを開いて開放型とし、障害の有無を超えた交流の場を目指す。実行委員は県内に住む母親ら17人。昨秋から準備を進め、今年5月に立ち上げイベントを開いた。雑貨店など9店舗が並び、収益の一部を建設資金として積み立てている。
「資金や土地の確保など、現実的なところはまだまだ。でも、みつばちのように元気に飛び回りたい」と原田さん。組織をNPO法人化し、今後も精力的に活動する方針だ。実行委はカンパや協力者を募っている。問い合わせは(050・1337・0930)へ。
毎日新聞 2011年8月6日 地方版