自治体が犯罪被害者らを支援する態勢に「格差」が生じている。犯罪被害者等基本法は「地域の状況に応じた施策の策定と実施」を自治体の責務と定めているが、施行から7年が過ぎても全国20の政令市のうち犯罪被害者を支援するための条例を持つのは6市にとどまっていることが、読売新聞の取材でわかった。「全国犯罪被害者の会(あすの会)」は、条例制定を求める要望書を各市に提出するなど地域差の解消を求める働きかけを進める。
犯罪被害者らに対する支援には、死亡したり重度の障害が残ったりした場合に国が最大約3900万円を支給する「犯罪被害者等給付金制度」がある。加えて、国と自治体が適切に役割分担して支援を進めることなどを目的に2005年4月、同法が施行された。
しかし、自治体側に条例の形で支援を進める動きは鈍い。読売新聞の調べでは、政令市で支援条例を制定したのは京都、岡山両市だけで、札幌、新潟、静岡、浜松各市は他の条例に支援策を盛り込む形で対応。大阪、堺、神戸など14市は未制定だった。
低調さは政令市以外の自治体も同様で、昨年4月時点で都道府県・市区町村(計1794)のうち、特化した条例があるのは86自治体(約4・8%、内閣府調べ)にとどまっていた。
内閣府が08年、犯罪被害者約400人を対象に行った意識調査(複数回答)では、5割近くが「外出したくないと思った」「不眠や食欲不振で体調を崩した」と答え、約3割が「経済的に困った」「今暮らしているところから離れたいと思った」と回答している。
各地の条例は、こうした被害者の実情に配慮。京都市の「犯罪被害者等支援条例」(昨年4月施行)は〈1〉故意の犯罪で3日以上入院し、1か月以上のけがを負うなどした被害者に生活資金30万円を支給〈2〉DV(配偶者からの暴力)で自宅に住めなくなった女性らに対し、民間の一時避難所(シェルター)代金を負担――などで、昨年度は生活資金を2人に支給した。
岡山市は市営住宅への優先的な入居などを規定。新潟市では関連条例に相談体制の整備を定め、被害者同士の交流も支援している。
あすの会代表幹事で、妻が殺人未遂事件の被害に遭った林良平さん(58)(大阪市)は「自治体の見舞金などの支給は比較的速やかで、被害直後の出費に備えられる。どこに住んでも大差ない支援が欲しい」と訴える。
(2012年4月28日 読売新聞)
犯罪被害者らに対する支援には、死亡したり重度の障害が残ったりした場合に国が最大約3900万円を支給する「犯罪被害者等給付金制度」がある。加えて、国と自治体が適切に役割分担して支援を進めることなどを目的に2005年4月、同法が施行された。
しかし、自治体側に条例の形で支援を進める動きは鈍い。読売新聞の調べでは、政令市で支援条例を制定したのは京都、岡山両市だけで、札幌、新潟、静岡、浜松各市は他の条例に支援策を盛り込む形で対応。大阪、堺、神戸など14市は未制定だった。
低調さは政令市以外の自治体も同様で、昨年4月時点で都道府県・市区町村(計1794)のうち、特化した条例があるのは86自治体(約4・8%、内閣府調べ)にとどまっていた。
内閣府が08年、犯罪被害者約400人を対象に行った意識調査(複数回答)では、5割近くが「外出したくないと思った」「不眠や食欲不振で体調を崩した」と答え、約3割が「経済的に困った」「今暮らしているところから離れたいと思った」と回答している。
各地の条例は、こうした被害者の実情に配慮。京都市の「犯罪被害者等支援条例」(昨年4月施行)は〈1〉故意の犯罪で3日以上入院し、1か月以上のけがを負うなどした被害者に生活資金30万円を支給〈2〉DV(配偶者からの暴力)で自宅に住めなくなった女性らに対し、民間の一時避難所(シェルター)代金を負担――などで、昨年度は生活資金を2人に支給した。
岡山市は市営住宅への優先的な入居などを規定。新潟市では関連条例に相談体制の整備を定め、被害者同士の交流も支援している。
あすの会代表幹事で、妻が殺人未遂事件の被害に遭った林良平さん(58)(大阪市)は「自治体の見舞金などの支給は比較的速やかで、被害直後の出費に備えられる。どこに住んでも大差ない支援が欲しい」と訴える。
(2012年4月28日 読売新聞)