湯河原町在住の高校1年生が津波研究に意欲をのぞかせている。東日本大震災の教訓を生かそうと昨夏、通っていた中学校の自由研究で町内の危険箇所をくまなく歩き、避難に関するリポートをまとめた。「東日本大震災のような悲劇を繰り返したくない」という願いは今も変わらず、進学後も継続して取り組もうと思っている。
リポートをまとめたのは、県立西湘高1年田口桃さん(15)。
湯河原海岸を遊び場にして育ち、海沿いの湯河原中学校に通っていた田口さんにとって、「3・11」の映像は衝撃的だった。濁流にのみ込まれていく街並み。「湯河原を津波が襲ったらどうなるんだろう」。不安がしばらく頭から離れなかった。
そんな思いから、昨年の夏休みの自由研究で、町内約100カ所に設置された「海抜表示板」の調査に取り組んだ。海抜15メートル以下の地域を重点的に歩いて写真に収め、自作の拡大地図に落とし込む作業を進めた。
「湯河原は坂道が多く、海から遠ざかっても海抜が急に低くなる場所がある。高台に向かうにも、傾斜がきつい道があった」。歩いて初めて気付いたことを書き出すうちに、「みんなが避難経路を考える参考にしたい」という思いが強まった。
湯河原中(海抜7メートル)にいるときに地震が起きたと想定し、自宅や湯河原駅(同30・1メートル)まで速足で歩いて時間や歩数を計測してみた。自宅に戻るには川に架かる橋を渡らなければならないが、そのときに津波が川をさかのぼってきたら…。頭の中でイメージし、避難時に注意すべき点も考えた。
湯河原海岸のサーフィン客はどこに避難すればいいかを調べるため、海岸近くから付近の吉浜小(海抜42・3メートル)まで走ってみたりもした。結果は3分46秒。「大人の足なら津波が来る前に逃げられるはず」と実感した。
自分なりの視点で課題も探った。例えば海抜表示板の色分け。同町の表示板は10メートル以下は黄色、10~15メートル以下は青、15メートル超は緑と分けられているが、電柱に取り付ける場合、管理会社の基準で青に統一しなければならない。「いざというときに誤解を生む可能性があるから、電柱でも色分けしたほうがいい」。また、11カ所ある津波避難ビルを調べ、「最上階や屋上の高さの表示があるとより安心できる」と書き加えた。
インターネットを活用して、海抜表示板の設置が進んでいない沿岸自治体があることも調べる一方、避難所の耐震化などを含めた防災対策の難しさも知った。
仕上がったリポートはA4判20枚近くになり、教諭の勧めで模造紙に書き写した。今年3月に町内で開かれた防災イベントなどで紹介され、反響を呼んだ。
「特にお年寄りや障害者に役立ててほしい。日ごろから津波や防災について意識していることが大事だと思う」。田口さんはそう訴える。
カナロコ(神奈川新聞) -2012年4月15日
リポートをまとめたのは、県立西湘高1年田口桃さん(15)。
湯河原海岸を遊び場にして育ち、海沿いの湯河原中学校に通っていた田口さんにとって、「3・11」の映像は衝撃的だった。濁流にのみ込まれていく街並み。「湯河原を津波が襲ったらどうなるんだろう」。不安がしばらく頭から離れなかった。
そんな思いから、昨年の夏休みの自由研究で、町内約100カ所に設置された「海抜表示板」の調査に取り組んだ。海抜15メートル以下の地域を重点的に歩いて写真に収め、自作の拡大地図に落とし込む作業を進めた。
「湯河原は坂道が多く、海から遠ざかっても海抜が急に低くなる場所がある。高台に向かうにも、傾斜がきつい道があった」。歩いて初めて気付いたことを書き出すうちに、「みんなが避難経路を考える参考にしたい」という思いが強まった。
湯河原中(海抜7メートル)にいるときに地震が起きたと想定し、自宅や湯河原駅(同30・1メートル)まで速足で歩いて時間や歩数を計測してみた。自宅に戻るには川に架かる橋を渡らなければならないが、そのときに津波が川をさかのぼってきたら…。頭の中でイメージし、避難時に注意すべき点も考えた。
湯河原海岸のサーフィン客はどこに避難すればいいかを調べるため、海岸近くから付近の吉浜小(海抜42・3メートル)まで走ってみたりもした。結果は3分46秒。「大人の足なら津波が来る前に逃げられるはず」と実感した。
自分なりの視点で課題も探った。例えば海抜表示板の色分け。同町の表示板は10メートル以下は黄色、10~15メートル以下は青、15メートル超は緑と分けられているが、電柱に取り付ける場合、管理会社の基準で青に統一しなければならない。「いざというときに誤解を生む可能性があるから、電柱でも色分けしたほうがいい」。また、11カ所ある津波避難ビルを調べ、「最上階や屋上の高さの表示があるとより安心できる」と書き加えた。
インターネットを活用して、海抜表示板の設置が進んでいない沿岸自治体があることも調べる一方、避難所の耐震化などを含めた防災対策の難しさも知った。
仕上がったリポートはA4判20枚近くになり、教諭の勧めで模造紙に書き写した。今年3月に町内で開かれた防災イベントなどで紹介され、反響を呼んだ。
「特にお年寄りや障害者に役立ててほしい。日ごろから津波や防災について意識していることが大事だと思う」。田口さんはそう訴える。
カナロコ(神奈川新聞) -2012年4月15日