「ロービジョン」という言葉をご存じだろうか。症状として視力低下、視野狭窄(きょうさく)などの視覚障害があることを指す。そのロービジョンを簡単に体験できる教材があると聞き、取り寄せてみた。国内のロービジョンの対象者は約140万人いるという。多様な「見えにくさ」の中で暮らしている人たちの大変さの一端が垣間見えた。【蒔田備憲】
教材は「ロービジョン体験キット」。視覚障がい乳幼児研究会が作製し、現在は京都ライトハウスがホームページ(http://www.kyoto-lighthouse.or.jp/services/read/id/30)で1部200円で販売している。ハサミとノリ、テープがあれば誰でも作れ、ロービジョンの人の見え方を手軽に体感できる。学校や企業などに年間約1000部が売れているという。
キットで体験できるのは、視野狭窄▽白濁体験▽盲−−の3種類。先端を切り取った四角錐(すい)を付けた「視野狭窄眼鏡」では、周囲の環境がほとんど分からず、立ち上がっただけでも不安を覚えた。
フィルターを張り、明るい部分と暗い部分の明暗差を少なくする「白濁体験眼鏡」で困ったのは、テレビやパソコンのディスプレーがほとんど見えなくなること。普段、私は約50センチの距離でディスプレーに向かうが、この眼鏡をかけると10センチまで近づけてようやく見えた。
ロービジョンの当事者にも話を聞いた。網膜色素変性症患者の福井芳次さん(63)=神埼市=の場合は、視野の中心の一部と、周辺が見える「ドーナツ形」だ。取材時も正対する私に対し「正面を向くと顔が見えにくい」と30度ほど顔を右に向けて話をしてくれた。
外見から福井さんの「見えにくさ」は伝わらない。知人とすれ違っても近距離でないと気づかず、スピードを出して歩道を走る自転車に恐怖を感じることも多い。
福井さんは明かりや環境に合わせ、5種類以上の眼鏡を使い分けている。「節電」の影響で、スーパーなど店舗内が暗くなり、見えにくくなっていることが気がかりだ。
毎日新聞 2012年07月16日 地方版
教材は「ロービジョン体験キット」。視覚障がい乳幼児研究会が作製し、現在は京都ライトハウスがホームページ(http://www.kyoto-lighthouse.or.jp/services/read/id/30)で1部200円で販売している。ハサミとノリ、テープがあれば誰でも作れ、ロービジョンの人の見え方を手軽に体感できる。学校や企業などに年間約1000部が売れているという。
キットで体験できるのは、視野狭窄▽白濁体験▽盲−−の3種類。先端を切り取った四角錐(すい)を付けた「視野狭窄眼鏡」では、周囲の環境がほとんど分からず、立ち上がっただけでも不安を覚えた。
フィルターを張り、明るい部分と暗い部分の明暗差を少なくする「白濁体験眼鏡」で困ったのは、テレビやパソコンのディスプレーがほとんど見えなくなること。普段、私は約50センチの距離でディスプレーに向かうが、この眼鏡をかけると10センチまで近づけてようやく見えた。
ロービジョンの当事者にも話を聞いた。網膜色素変性症患者の福井芳次さん(63)=神埼市=の場合は、視野の中心の一部と、周辺が見える「ドーナツ形」だ。取材時も正対する私に対し「正面を向くと顔が見えにくい」と30度ほど顔を右に向けて話をしてくれた。
外見から福井さんの「見えにくさ」は伝わらない。知人とすれ違っても近距離でないと気づかず、スピードを出して歩道を走る自転車に恐怖を感じることも多い。
福井さんは明かりや環境に合わせ、5種類以上の眼鏡を使い分けている。「節電」の影響で、スーパーなど店舗内が暗くなり、見えにくくなっていることが気がかりだ。
毎日新聞 2012年07月16日 地方版