東京電力が発注した福島第1原発事故の収束作業を巡り、下請け会社の役員が作業員に対し、放射線の線量計を鉛のカバーで覆うよう指示していたことが分かった。労働安全衛生法の規則で上限が決まっている作業員の被ばく線量を少なく見せかけるための工作とみられ、厚生労働省は同法違反の疑いがあるとして調査を始めた。
この下請け会社は、福島県の中堅建設会社「ビルドアップ」。東電が昨年11月、東電グループ会社の「東京エネシス」(東京都港区)に発注した工事の下請けに入った。作業は第1原発1〜4号機近くにある汚染水処理システムのホースを保温材で巻くもので、昨年12月に実施。ビルド社によると、この役員は「事前に現場に行った時に線量計の音の速さに驚き、被ばく低減の措置をしようと思った。現場で1度使用し、人数は9人」などと話しているという。
労働安全衛生法22条は労働者の健康障害防止のため必要な措置を講じなければならないと規定。鉛で線量計を覆って作業にあたらせれば違反となり、6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金になる。
福島労働局などは21日、同原発内の東京エネシス事務所を立ち入り検査した。
ビルド社の和田孝社長は「大変お騒がせして申し訳ない。誠に遺憾で、ことの重大性を深く受け止めている。作業員からの情報を基に正確に調査し報告させていただく」と説明。東京エネシスの担当者は「19日に和田社長から報告を受けた。鉛のカバーを作ったのは事実のようだ。あってはならないし、信じられない」と言う。
東電広報部は「東京エネシスから19日に報告を受け、事実関係を調査して速やかに報告するよう指示した」とコメント。厚労省労働基準局監督課は「過去に線量計をつけないなどの問題はあったが、今回のようなケースは聞いたことがない。悪質な場合は書類送検なども考えられる。法令違反が確認され次第、厳正に対処したい」と話している。【福島祥、市川明代】
◇原発作業員の被ばく線量
労働安全衛生法の規則は、被ばく線量の上限を通常時で1年間50ミリシーベルトかつ5年間100ミリシーベルト、緊急時の作業期間中は100ミリシーベルトと規定。福島第1原発事故の3日後に緊急時の上限は250ミリシーベルトに引き上げられ、昨年末に100ミリシーベルトに戻された。今年1月末時点で作業員約2万人のうち50ミリシーベルト超〜100ミリシーベルトは756人、100ミリシーベルト超は167人。
毎日新聞 2012年07月21日 11時46分(最終更新 07月21日 14時09分)
この下請け会社は、福島県の中堅建設会社「ビルドアップ」。東電が昨年11月、東電グループ会社の「東京エネシス」(東京都港区)に発注した工事の下請けに入った。作業は第1原発1〜4号機近くにある汚染水処理システムのホースを保温材で巻くもので、昨年12月に実施。ビルド社によると、この役員は「事前に現場に行った時に線量計の音の速さに驚き、被ばく低減の措置をしようと思った。現場で1度使用し、人数は9人」などと話しているという。
労働安全衛生法22条は労働者の健康障害防止のため必要な措置を講じなければならないと規定。鉛で線量計を覆って作業にあたらせれば違反となり、6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金になる。
福島労働局などは21日、同原発内の東京エネシス事務所を立ち入り検査した。
ビルド社の和田孝社長は「大変お騒がせして申し訳ない。誠に遺憾で、ことの重大性を深く受け止めている。作業員からの情報を基に正確に調査し報告させていただく」と説明。東京エネシスの担当者は「19日に和田社長から報告を受けた。鉛のカバーを作ったのは事実のようだ。あってはならないし、信じられない」と言う。
東電広報部は「東京エネシスから19日に報告を受け、事実関係を調査して速やかに報告するよう指示した」とコメント。厚労省労働基準局監督課は「過去に線量計をつけないなどの問題はあったが、今回のようなケースは聞いたことがない。悪質な場合は書類送検なども考えられる。法令違反が確認され次第、厳正に対処したい」と話している。【福島祥、市川明代】
◇原発作業員の被ばく線量
労働安全衛生法の規則は、被ばく線量の上限を通常時で1年間50ミリシーベルトかつ5年間100ミリシーベルト、緊急時の作業期間中は100ミリシーベルトと規定。福島第1原発事故の3日後に緊急時の上限は250ミリシーベルトに引き上げられ、昨年末に100ミリシーベルトに戻された。今年1月末時点で作業員約2万人のうち50ミリシーベルト超〜100ミリシーベルトは756人、100ミリシーベルト超は167人。
毎日新聞 2012年07月21日 11時46分(最終更新 07月21日 14時09分)