障害者の雇用を義務付けた法律の対象に精神障害が加わる方向になった。
国の労働政策審議会の分科会が2018年4月からの実施を妥当とする答申を先ごろ出した。厚生労働省は障害者雇用促進法の改正案を今国会に提出する方針だ。働く意欲を生かせるよう支援と理解を広げたい。
いまは身体障害者と知的障害者が対象になっている。新たに加えるのは、そううつ病や統合失調症などの疾患があり精神障害者保健福祉手帳を持つ人だ。症状が不安定といった理由でこれまで対象外になってきた。
企業の準備期間などを考慮して実施まで5年の猶予を設ける。審議会で企業側は「受け入れ環境が整っていない」などとして義務化に難色を示していた。妥当とする結論が出たことを歓迎したい。
見直しの背景には、就職を希望する精神障害者の増加がある。全国のハローワークへの新規求職者数は2011年度、約4万9千人だった。02年度の8倍近い。投薬治療を受けたりして働いている人は多い。雇用義務の対象に加えるのは当然の流れといえる。
法律は、全従業員に占める一定割合以上の障害者を雇うよう義務付けている。いまの法定雇用率は1・8%で、4月から2・0%になる。精神障害者が加われば、さらに引き上げが見込まれる。障害者にとって雇用の機会が広がる。
企業が障害者の雇用率を算定する際には今も精神障害者を対象に含めていいことになっている。法改正を待つことなく、積極的に進めたい。
改正案の要綱は、企業側に配慮し、国の支援が不十分なら法定雇用率の上昇幅を抑えることもあり得るとした。国は後押しを強める必要がある。
精神障害者が働きやすい職場づくりに対する奨励金など、既に取り組んでいる。企業のためらいや不安を減らし、障害者が無理なく働けるようにするため、さらに何が必要か。当事者の声も聞きながら支援策を充実させてほしい。
職場の理解も鍵になる。思いがけず精神疾患になることは誰にでもあり得る。働きやすい環境をつくることは特定の人のためではない。自分にも関わる問題として向き合いたい。
プライバシーに配慮するのは言うまでもない。精神障害を知られたくない人もいる。企業が雇用率に算定するため、本人の意思に反して手帳の取得を強いるといったことがあってはならない。
信濃毎日新聞-03月27日(水)
国の労働政策審議会の分科会が2018年4月からの実施を妥当とする答申を先ごろ出した。厚生労働省は障害者雇用促進法の改正案を今国会に提出する方針だ。働く意欲を生かせるよう支援と理解を広げたい。
いまは身体障害者と知的障害者が対象になっている。新たに加えるのは、そううつ病や統合失調症などの疾患があり精神障害者保健福祉手帳を持つ人だ。症状が不安定といった理由でこれまで対象外になってきた。
企業の準備期間などを考慮して実施まで5年の猶予を設ける。審議会で企業側は「受け入れ環境が整っていない」などとして義務化に難色を示していた。妥当とする結論が出たことを歓迎したい。
見直しの背景には、就職を希望する精神障害者の増加がある。全国のハローワークへの新規求職者数は2011年度、約4万9千人だった。02年度の8倍近い。投薬治療を受けたりして働いている人は多い。雇用義務の対象に加えるのは当然の流れといえる。
法律は、全従業員に占める一定割合以上の障害者を雇うよう義務付けている。いまの法定雇用率は1・8%で、4月から2・0%になる。精神障害者が加われば、さらに引き上げが見込まれる。障害者にとって雇用の機会が広がる。
企業が障害者の雇用率を算定する際には今も精神障害者を対象に含めていいことになっている。法改正を待つことなく、積極的に進めたい。
改正案の要綱は、企業側に配慮し、国の支援が不十分なら法定雇用率の上昇幅を抑えることもあり得るとした。国は後押しを強める必要がある。
精神障害者が働きやすい職場づくりに対する奨励金など、既に取り組んでいる。企業のためらいや不安を減らし、障害者が無理なく働けるようにするため、さらに何が必要か。当事者の声も聞きながら支援策を充実させてほしい。
職場の理解も鍵になる。思いがけず精神疾患になることは誰にでもあり得る。働きやすい環境をつくることは特定の人のためではない。自分にも関わる問題として向き合いたい。
プライバシーに配慮するのは言うまでもない。精神障害を知られたくない人もいる。企業が雇用率に算定するため、本人の意思に反して手帳の取得を強いるといったことがあってはならない。
信濃毎日新聞-03月27日(水)