障害者の中から、介助や施設入所などの支援を受けられなくなる人が出てくるかもしれない。
障害者総合支援法などの改正で来年4月から、福祉サービスを受ける際には「相談支援専門員」に支援計画を作ってもらうことが義務化される。ところが計画の作成率が低調で全国で4割、本県では3割にとどまっている。
支援を受けられない人など一人も出してはならない。行政の早急な対応が求められる。
障害者への福祉サービスは従来、本人や家族の希望に基づき市町村が認定してきた。2012年度から始まった新制度では両者の間に専門員が入る。ヘルパーによる介助や施設入所、就労支援などの内容を、「プロ」の目で総合的、長期的に決めるためだ。
本人の状況に応じて、きめ細かな支援を提供するとの狙いは理解できる。ただし実態が追い付いていない。最大の要因は専門員の不足にある。
専門員は福祉事業所で5~10年の勤務実績を持つ人が対象。31・5時間以上の研修を受けた後に都道府県が認定するが、こうした人材の確保が難しいとされる。さらに、専門員の報酬の低さも増えない背景にはあるようだ。
とはいえ、対象者が2500人を超す高知市では、今年6月末で計画の未作成が2228人、作成率はわずか13・6%だ。このまま来春を迎えれば混乱は必至である。
高知市は市が委託する専門員の報酬を独自に上乗せする方針という。専門員の確保を急ぎ、対応を加速させなければならない。
計画の未作成は全国的な傾向だが、一方でそんな中でも作成率トップの愛知県は69%。本県以外の四国3県も62~57%となっている。なぜこうした「格差」が生じたのか。
12年度から本年度までの3年間は猶予期間であり、この間の準備姿勢に自治体間で差があるとの指摘もある。他の自治体にできることが、なぜ進んでいないのか。しっかり検証することも今後の取り組みには欠かせない。
厚生労働省も事態を重視し、「(障害のある)利用者が困らないよう対応を考えたい」としている。
全国でこれほど計画作成が難航している以上、制度設計に問題はなかったのか。このまま来春の義務化をスタートさせるべきなのかどうかも含めて、慎重な検討を求めたい。
2014年10月07日08時13分 高知新聞