「駅構内でエスカレーターが使えるようにしてほしい」と、視覚障害者から国土交通省や鉄道事業者に対して、点字ブロックによるエスカレーターへの誘導を求める声が出ている。現在は階段やエレベーターへの誘導が主流で、エスカレーターへの誘導はほとんどないためだ。
視覚障害者の利用が比較的多いとされる都営地下鉄大江戸線新宿西口駅(東京都新宿区)を、東京視覚障害者協会役員の山城完治さん(58)と歩いた。ホームは地下約二十二メートルにある。出入り口からホームまでは三つのエスカレーターで結ばれ、点字ブロックは階段かエレベーターへ誘導している。
すべて階段を使うと計百十段あり、構内の隅にしかないエレベーターに乗る場合は、数十メートル余計に歩かなければいけない。階段を上り終えると息切れがした。エレベーターまでの移動も点字ブロックで誘導されるとはいえ、慣れない場所だと相当な負担となる。
「階段は他人に接触する不安もある。上り下りは足腰が悪い人にとって特に大きなバリアーだ」と山城さんは訴える。
バリアフリー法に基づいて必要な設備の目安を示す国のガイドラインは、視覚障害者が駅構内で上下移動する際の具体的な手段までは明記していない。
国交省によると、設備の状況に応じて鉄道事業者の判断に委ねており、エスカレーターは「昇り降りの方向を間違うと危険」といった理由から、ほとんどの駅は階段かエレベーターへ誘導しているという。
日本網膜色素変性症協会理事の金沢真理さん(59)は、都内の自宅から協会事務所への移動などで頻繁に電車に乗る。「視覚障害者にとって駅は最も危険な場所。単独で歩く場合、人の流れに乗ることが大事で、エスカレーターは階段と異なり、前方から人が来ない安心感がある」と話す。
鉄道事業者は「進入方向を間違うと、けがにつながることもある」(JR東日本)、「音声案内による補完が必要だ」(東京都交通局)などとして、現時点ではエスカレーターへの誘導を考えていないという。これに対し、金沢さんは「安心して移動するため、利用者の多い駅で実証実験をやってほしい」と求めた。
◆新しいルールを
<バリアフリー施策を研究する交通エコロジー・モビリティ財団(東京都千代田区)の沢田大輔企画調査課担当課長の話> 視覚障害者も高齢化が進み、階段の上り下りは大変で、エスカレーターに乗れるのが一番良いと思う。ただ、その場合は新しい点字ブロックの形状を考えるなど、普遍性がある誘導ルールを決める必要がある。
