子どもの送り迎えなど、障害者のちょっとしたお願いに地域住民のサポーターが「ワンコイン(500円)」で応じる、札幌市の「地域ぬくもりサポート事業」が好調だ。2年前に中央区の一部でモデル事業として始まり、現在は中央区と南区の全域に拡大、利用件数も増えつつある。利用者とサポーターの継続的な交流に発展したケースもあり、地域づくりにも一役買っている。
事業は、障害者の福祉サービスの対象にならない分野を、事前登録したサポーターが1回(1時間半程度)500円で担う仕組み。2012年9月に中央区の幌西、南円山地区で開始。昨年7月に中央区全域に拡大され、今年7月には南区も加わった。市の委託を受けた中央区の社会福祉法人「あむ」が窓口となる「地域ぬくもりサポートセンター」を法人内に設け、利用者の依頼に応えられるサポーターを引き合わせる役割を果たしている。
登録は利用希望者58人、サポーター150人。最初の1年間は160件の利用だったが、昨年9月~今年8月の2年目は2・15倍の344件と大きく伸びた。サポーターには主婦や定年退職者、学生などが登録。障害者からの依頼は保育園や幼稚園の送り迎え、作業所への付き添い、話し相手などが多いという。
中央区の視覚障害者杉本和恵さん(36)は1年半前から週に1度、5歳と3歳の子ども2人の保育所の迎えを、近くに住むサポーターの吉羽文雄さん(65)に依頼している。特に冬場は頼りになるといい「雪道は道が分かりにくく、週1日でもお迎えに行ってもらえると助かる」と感謝する。吉羽さんは子どもを送り届けると、そのまま絵本を読んだり絵を描いたりして遊ぶ。吉羽さんは「子どもたちの成長を見られて僕もうれしい。これからも交流を続けたい」と目を細める。
一方、課題もある。登録者のうち、南区の利用希望者は3人、サポーターは10人。区内の面積が広いこともあり、まだ利用に結びついた例がない。
市は将来的に事業の全市拡大を目指しているが、ぬくもりサポートセンターの姉帯哲征(てつまさ)さん(50)は「希望者のニーズはさまざま。もっと周知してサポーターを増やさなければ、障害者の要望に応えることができない」と指摘する。事業の問い合わせは同センター(電)206・6511へ。
(10/15 16:00) 北海道新聞