宮城県石巻市中心部に、障害者と健常者が働くレストラン「いち」が開店した。
震災で一時働く場を失った障害者たちの雇用確保や、地域住民との交流の場にと、同市の社会福祉法人「石巻祥心会」が運営し、障害者らが育てた有機野菜や手作りピザなどを提供している。マネジャーの黒田龍夫さん(62)は「働く障害者もお客様も心地良く過ごせる店にしたい」と話している。
「新しいピザです。デザートもいかがですか」
配膳を担当する佐藤久子さん(65)が客に声をかける。知的障害のある佐藤さんは、他の従業員から指導を受けながら、厨房(ちゅうぼう)で皿洗いを担当する障害者の女性(53)とともに元気に働く。
店はJR石巻駅から東に徒歩約10分で、約50種類の樹木やハーブなどに囲まれた落ち着いた雰囲気。9月20日から営業を始めた。日替わりのピザや10種類以上の野菜を使ったサラダ、パスタなどが90分間食べ放題のビュッフェ形式で、中学生以上は1500円、小学生は800円(いずれも税込み)。小学生未満は無料だ。
祥心会は市内12か所で障害者入所施設や就労支援事業所を運営し、様々な野菜を有機栽培するほか、パンの製造も手がける。地域住民と交流しながら障害者の自立を目指すため、震災後は自らの製品を販売する店舗を開店させてきた。
「いち」もその一つで、復興に向けて一歩ずつ進む決意を店名に込めた。震災後、農作業の仕事を失った佐藤さんは、レストランと同じ敷地内に約2年半前に完成し、自家製パンやバームクーヘンなどの菓子を販売する店で接客の経験を積んできた。「緊張するけど、知ってる人が来るとうれしい」と笑顔で語る。
現在の従業員は障害者2人と健常者4人。近く新たに障害者を採用する予定といい、黒田さんは「少しずつ成長していく障害者たちを温かく見守ってほしい」と話している。
営業時間は午前11時~午後3時。水、木曜定休。問い合わせは同店(0225・25・7260)。