新潟市は、障害がある人への差別を解消するための県内初の条例作りを進めている。条例検討会では、障害者への合理的配慮(※)を民間企業などの事業者に義務づけるかどうかが最大の論点となっており、市は、全市民に関わる身近なテーマとなるため、条例作りに関心を持つよう呼びかけている。
■たたき台基に
9月18日夜、障害者団体や民間企業などでつくる検討会は新潟市役所で会合を開き、条例のたたき台を巡って初めて意見を交わした。
たたき台では、市には障害者に合理的配慮を提供することを義務づけたが、事業者には「努力義務」で、障害者団体などは「事業者も義務にしてほしい」と訴えた。3月現在、全国で12自治体が同様の条例を制定しているが、うち7自治体が事業者も義務としている。
一方、事業者側は「努力義務でなければ経営が立ち行かなくなる」と警戒感を示す。事業者の金銭や労力など負担が過度にならないように提供することが規定されているが、「過度」の程度が不透明だからだ。
■「罰則」に賛否
条例に実効性を持たせるための差別者への罰則も論点の一つだ。たたき台に罰則は明記されなかったが、市が差別をやめるよう勧告しても従わない場合に差別の事実や名前などを公表する仕組みは盛り込まれており、検討会では「事実上の罰則ではないか」などの声が出て、賛否が割れている。
検討会メンバーで脊髄損傷により車いすを利用している遁所(とんどころ)直樹さん(51)は、「当事者の一人として罰則がほしいが、せめて合理的配慮の提供は義務にしてほしい」と複雑な心境を語る。
■市民の責務
市は早ければ来年12月の施行を目指しており、施行されれば差別解消の取り組みは市民の責務となるが、6、7月に各区で行われた意見交換会に参加した延べ422人の多くは障害者や福祉関係者だったという。
市は検討会の傍聴を募っており、市障がい福祉課の小野秀之課長は「障害のある人もない人も尊重し合う社会を推し進める条例になるよう、全市民に考えてほしい」と話している。12月~来年3月には市民からの意見公募も検討している。
※合理的配慮 障害者が障害のない人と同じことをする時に、企業や市民などが障害者の求めにより、状況に応じて変更や調整を行うこと。企業であれば、聴覚障害者に筆談で指示する、うつ病の診断を受けた社員を休養させる、などの措置が考えられる。