「何とかして普通高校を卒業させたかった」。10年ほど前、伊藤さんは発達障害の子どもを育てる保護者に、胸の内を打ち明けられたことがある。子どもは全日制の普通高校に進学したが勉強について行けず、途中退学したのだという。
伊藤さんには、普通高校卒業を望む親の切実な思いが理解できた。自身も、難病と重度の障害を抱える長男を育ててきた。1997年に私立保育所を開設したのも、長男を受け入れてくれる保育所が見つからなかったからだ。後に障害者福祉施設などを開設。明石、神戸市など約20か所で運営してきた。
施設運営を通じて、全日制の普通高校に適応できずに不登校になったり、退学したりする生徒を数多く見てきた。通信制高校を選択したものの、自力で課題をこなすことができず挫折する生徒も少なくない。通信制と提携する民間のサポート校を利用したくても、費用負担がネックになり、断念するケースもあるという。
「保護者にも障害者にも多様な価値観がある。選択肢は多いほどいい」と、福祉施設を併設したサポート校の開設を発案。今年に入って、全国約50校の通信制高校に提携を打診してきた。障害者への理解が得られず断られることも多かったが、9月、勇志国際高校(熊本県)が提携に応じてくれた。
JR魚住駅近くの同会の福祉施設が入居するビルを改装してオープンさせる計画。授業料は、公立高校と同程度の年間約20万円。授業後には、部活動としてネイリスト養成講座や就労訓練、スポーツカリキュラムを受講してもらうという。
伊藤さんは「サポートの有無が子どもたちの人生を変えることにもなる。責任持って、必ず通信制を卒業できるよう支援したい」と話している。
問い合わせは同会本部(078・946・7692)へ。
サポート校 一般的には自習やリポート提出を軸にした通信制高校と連携し、生徒の学習を支援するための民間教育機関。全日制高校に近い通学スタイルの場合が多い。通信制高校を運営する事業グループや学習塾などが開設するケースも。