11月1、2日に兵庫県で開かれる身体障害者野球の世界大会に、「東京ブルーサンダース」(国立市)の田中寿明選手(26)=千葉県柏市=と山崎晃裕選手(18)=埼玉県鶴ケ島市=が出場する。2人とも生まれつき右手首から先がなく、高校時代には野球部で健常者とともにプレーした経験を持つ。
右打席の山崎さんが、ほぼ左腕一本でたたいた打球は、2打席続けてフェンスを越えていった。
26日、埼玉県所沢市の国立障害者リハビリテーションセンターのグラウンドであった練習試合。昨年秋の全日本選手権で準優勝した東京ブルーサンダースの相手は都内の健常者チーム。4対5の惜敗だった。
「高校球児としてプレーしたことが今の自信につながっている」と山崎さん。山村国際高(埼玉県坂戸市)野球部出身。バットを左手で握り、右手首を添える打法だ。寝るのも惜しんで素振りをするときもあった。3年生だった昨夏の埼玉大会で背番号「7」をつかむ。控えに回ったが、3回戦の7回、代打で逆転の2点二塁打を放った。
健常者との野球に区切りをつけて、身体障害者野球世界大会を目指すことを決めていた。東京国際大でスポーツ科学を学びながら、個人トレーナーを雇って体づくりに励む。ベンチプレス80キロ、スクワット180キロを誇る肉体で長打を量産する。世界大会では1番打者として期待され、「フルスイングでチームに勢いをつけたい」。障害者野球を広く知ってもらうことや、障害者に勇気や希望をもってほしいという願いを込めている。
会社員の田中さんは神奈川県平塚市生まれ。8年前の夏、神田(現平塚湘風)の投手として神奈川大会で1勝を挙げた。
投げるときはグラブを右わきの下に挟み、投げ終わるや左手に持ち替える。ストレートは132キロを記録したこともある。
健常者と野球をするときに、片腕だからと特別扱いをされたことはない。「障害者野球に物足りなさが全くないわけではない」と明かす。だが、選手たちの夢をあきらめない姿に共感を覚える。「日の丸をつけてプレーできることは誇りに思う」
どのチームでプレーしても投手が一番やりがいがあるという。「試合をつくる役割に責任感を覚える」。初めての世界大会の目標は「第一に優勝。第二に楽しんでやること」という。先発を任せられる予定だ。
〈身体障害者野球〉 1993年に日本連盟が設立され、同年から全国大会がほぼ毎年行われている。今年3月現在で全国で33チーム、876人が登録する。足が不自由で走れない打者には打った直後から代走が許されるなど、特別ルールがある。
世界大会は日本の呼びかけで始まり、2006年、10年と日本が連覇。第3回は兵庫県豊岡市の但馬ドームであり、日本、米国、プエルトリコ、韓国、台湾が総当たりで争う。
練習試合で登板した田中寿明選手=埼玉県所沢市
11月1、2日に兵庫県で開かれる身体障害者野球の世界大会に、「東京ブルーサンダース」(国立市)の田中寿明選手(26)=千葉県柏市=と山崎晃裕選手(18)=埼玉県鶴ケ島市=が出場する。2人とも生まれつき右手首から先がなく、高校時代には野球部で健常者とともにプレーした経験を持つ。
右打席の山崎さんが、ほぼ左腕一本でたたいた打球は、2打席続けてフェンスを越えていった。
2014年10月28日03時00分 朝日新聞