ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

働く喜び意欲へ 生活介護事業が軌道に

2016年07月09日 03時05分43秒 | 障害者の自立

  NPO「きぼうの会」(坂本晶彦理事長)が和歌山県上富田町生馬で運営する障害者福祉施設「きぼうの木」が開所して1年が過ぎた。重度障害者も介護を受けながら仕事ができる「生活介護事業」も軌道に乗ってきた。50代で初めて給料をもらった利用者もおり「もっと仕事を頑張りたい」と意欲を見せている。

 生活介護は常時介護を必要とする障害者に、施設で入浴や食事の介護、創作活動、生産活動の機会を提供するサービス。

同施設では必要な支援の度合いが高い「障害者支援区分5、6」の7人が利用している。重度障害者が働ける施設は紀南でも少ないという。

 働くのは1日に30分~1時間半程度。髪飾りのシュシュやアクセサリー作り、軽度な農作業などに取り組んでいる。

 上富田町の障害者施設で暮らす肢体不自由の女性(30)は中学生時代から、作業所で働きたいと思っていたが、昨年6月から「きぼうの木」に通所し、夢がかなった。「いろいろなものを作る仕事は楽しい。給料は貯金している」と笑顔を見せる。

 同町のグループホームで暮らす肢体不自由の女性(55)は、ヘルパーに勧められ、4月からこの施設を利用している。「働いてお金がもらえるのはうれしい。もっと稼げるようになりたい」と目を輝かせた。

 「きぼうの木」では上富田町、白浜町、田辺市を対象に送迎もしている。

 問い合わせは、きぼうの会(0739・33・7942)へ。

【シュシュ作りに取り組む作業所の女性(和歌山県上富田町生馬で)】

2016年7月9日   紀伊民報


映画「聲の形」硝子と将也の声が聞ける予告公開!悠木碧や小野賢章らも出演

2016年07月09日 02時54分47秒 | 障害者の自立

大今良時原作による劇場アニメ「映画『聲の形』」のメインビジュアルと予告編が公開された。

さらに追加キャストも発表。先天性の聴覚障害を持つ硝子の妹・西宮結絃役は悠木碧、将也のクラスメイトでモコモコ頭とぽっちゃり体型が特徴的な永束友宏役は小野賢章、将也への密かな恋心を抱き続ける植野直花役は金子有希、そばかすが特徴の優しい女の子・佐原みよこ役は石川由依、真面目で正義感が強い優等生・川井みき役は潘めぐみ、将也に興味を持つ真柴智役は豊永利行がキャスティングされた。また石田将也の小学生時代は、松岡茉優が演じる。キャストたちのコメントも到着した。

「聲の形」は、聴覚障害者の西宮硝子と、彼女を傷つけた少年・石田将也の再会と成長を描く物語。別冊少年マガジン2011年2月号に掲載された読み切りを経て、2013年8月より週刊少年マガジン(ともに講談社)にて連載された。山田尚子が監督を務める映画は9月17日より新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー。石田将也役は入野自由、西宮硝子役は早見沙織がそれぞれ演じる。

2016年7月8日   コミックナタリー

 

「非正規雇用をなくして」 難病のシングルマザーが訴え

2016年07月09日 02時47分31秒 | 障害者の自立

 参院選の争点の一つが正規・非正規社員の格差の是正。多くの政党が「同一賃金同一労働」を公約で掲げるが具体的な道筋は必ずしも見えてはいない。東京都中野区在住のシングルマザーの女性(43)は「非正規という制度そのものをなくしてほしい」と訴える。 

 「今の社会は一度、人生の太いラインから外れると、貧困を強いられ、逃れられなくなる」。女性は自分の人生を振り返り、そう実感している。

 八年前までは都内に購入したマンションで、建築関係の仕事を持つ夫と二人の息子と暮らす、悠々自適の専業主婦だった。だが離婚を機に生活は暗転した。

 子どもの親権は自分側となり、当時十一歳だった聴覚障害者の長男と九歳の次男を養うために、都内の小学校で、管理栄養士として働くことに。平日のみ午前八時十五分から六時間ほど働いても、手取りの給与は十万円程度。正規との差は二倍近くあった。

 正規で働くことができる病院の管理栄養士の職もあったが、勤務時間帯は不規則で、シングルマザーの女性にとってハードルは高かった。「三人で暮らすにはギリギリの給与で、ぜいたくは敵でした」

 ひどい倦怠(けんたい)感が続いたため、昨秋、病院で検査。脳全体が常に腫れる難病「下垂体前葉機能低下症」であることが分かった。日常生活もままならなくなり、今年二月に手術を受けたが腫瘍は摘出できず、今は薬で脳の腫れを抑えるしかない。副作用で仕事を続けられなくなり、今年六月末に解雇された。

 離婚後、息子の通学のため自分たちがマンションに住み続けているが、難病に伴う傷病手当を受けているため生活保護を受給することもできない。これまでのわずかな貯蓄を切り崩して、何とか命をつなぐ。

 厚生労働省の二〇一一年度の調査によると母子世帯の平均年収は二百二十三万円で父子世帯に比べ百万円以上低い。父子家庭の父親の67・2%が正社員であるのに対し、母子家庭の母親は39・4%。約六割が非正規となっていることが大きな要因だ。

 バブル崩壊に伴う賃金の低下など労働市場が悪化し、非正規労働者数は日本全体で一五年に千九百八十万人を突破するなど右肩上がりの状況が続く。総務省の統計では、全体の雇用者数に占める割合は37・5%(一五年)と、今や五人に二人が非正規という現状だ。

 投票日を間近に控え、各候補者の訴えのボリュームは大きくなる。女性は街頭演説を聞きに出向くこともできず、離婚前から飼う犬を抱いてソファに横たわる。「候補者の名前と党名の連呼は聞こえますが、非正規への言及は乏しい。政治家なら、もっと日本の足元、日本の現実を見てほしい」と感じながら、政治の声に耳を澄ましている。

非正規雇用で働くシングルマザーの女性。難病を患い、自宅ではだるさと眠気で常に横になっている

2016年7月8日    東京新聞


「ズルい生活保護者」には働けないワケがある

2016年07月09日 02時30分58秒 | 障害者の自立

前回の記事(若い貧困者が「生活保護はズルい」と思うワケ)ではK君に生活保護の必要性を肌感覚で理解してもらうため「連れション」のたとえ話を使ったが、あえなくはね返されてしまった。果たして、働「け」なくなっている人たちを社会がケアする根拠と方法について、K君に納得してもらうことはできるのか。本記事はK君への説諭の後編である。

 まだ現役年齢なのに生活保護を受けつつ飲んだくれていて衛生観念のない祖父。その保護費を横取りして男を渡り歩く母。聞けばK君が「そもそも生活保護なんてズルい」と言い切ってしまう気持ちもわからなくもないのだが、ここで話を終えるわけにはいかない。

なぜなら、話を聞いた記者である僕自身がその祖父や母親を直接知っているわけではないし、あくまで孫であり息子のK君を通しての情報しか知らないからだ。たとえK君がこうした生い立ちを話してくれるまでに何度もの取材を要して、それが過去の治りきらぬ傷から出る血膿のような話だったとしてもだ。

誘導的に質問を続ける。同情できる要素などいっさいなさそうなその祖父に、いいところはなかっただろうか?

「あんな汚いジジイにいいところなんかあるはずないですよ」と言うK君に、あらためて記憶を掘り出してもらうと、ずいぶんと考え込んだ後にK君は話し始めた。

「そういえば、中学で初めてアイパーかけたときに、カネ出してくれたのはジジイでしたね。隣町までバスで行かないとアイパーやってる床屋がなくて、バス代もくれました」  

ケガをして働くことをやめた祖父

酒を飲んで暴れるということはなかったのだろうか?

「気分屋だったんで、酒飲むと上機嫌になって語り出すか、めそめそ泣くかですね。マジかっこ悪くて同情なんかできないけど。上機嫌のときの話は、若い頃にあちこち登山して回った話とかです。泣くっていうのは、だいたい死んだばあちゃんのことですね。俺は見たこともないけど、ばあちゃんはうちの母親がガキの頃に白血病で死んだらしい。そのあとジジイはケガしたこともあって働くのやめちゃって。それでスゲー貧乏になったらしいんですけど」 

K君が子どもの頃、ゴミため状態の部屋の窓際には仏壇にも入れられていない裸の位牌が置いてあり、祖父はいつも季節の花を一輪挿しに供えていたという。

「でもケガしてから何十年もまともに働いてないヤツに、俺は同情はできないですよ。アル中だし、くだんねー盗みで何回かマエ(前科)あるし。大体汚い。酒に酔って寝ながらウンコ漏らして気づかないヤツなんか、俺のジジイ以外、見たことないですよ」

では、母親についてはどうか?

「母親に関しては憎んでるとかないんですよ。本当にダメな女で、しょーがない人だなとは思ってる。っていうのも、ウチの母親は空気が異様に読めないヤツで、性格ひん曲がりまくってて、思ったこと全部口に出しちゃうんです。それで、どんな仕事についてもすぐに女の上司とか同僚ともめたり、それで男の同僚とか上司とすぐにセックスして、職場追い出されるんです。そんでまた別の男に頼って。笑えるぐらい同じパターンで仕事が続かないで、いっつも文句ばっかり言ってる。男にDV食らうのも、俺があいつの彼氏だったら殴りたくなるのもちょっとわかるんです。ほんと空気読まないからあいつは……、言ってることはいつも正論なんだけど……。今はなんか俺の知らない人と結婚して、仕事はデリヘルの受付電話取ってるらしい。5年会ってないけどメールは来ますよ」  

第三者からの情報だけで人物像の特定はできない 

さて、この祖父と母。当初K君の言葉を通じて聞きかじった段階とは、ずいぶんと印象が変わってきたではないか。母親については、ソーシャルスキルが足りず、孤立を招きがちなパーソナリティの持ち主。空気が読めず融通も利かずに正論を主張し続けるというのは、実はK君にも同様なところがあって、遺伝だなあと思う。程度はわからないが、大人の発達障害的な気配も感じさせる。

祖父に関しては、連れ合いの死とケガが失職とその後の貧困の入り口だったというが、そうなる前は登山やスポーツ(バレーボール)が好きな職人で、機嫌のいいときの登山話などは、K君がせがんで聞くほどに面白かったという。

仕事は左官工であった。出身は九州の貧しい山村で、親族とは年賀状の付き合いもなかったという。

ここまで聞き取って、学べることは、まず当事者自身ではない第三者からの聞き取りで、単純に人物像の特定はできないということだ。K君は初回の取材から一度もウソを言ってはいないと思うが、粘って聞き込んでエピソードを深めるたびに、レンズの先に結ばれる人物の像はどんどん変化していく。  

 

K君が子どもの頃、ゴミため状態の部屋の窓際には仏壇にも入れられていない裸の位牌が置いてあり、祖父はいつも季節の花を一輪挿しに供えていたという。

「でもケガしてから何十年もまともに働いてないヤツに、俺は同情はできないですよ。アル中だし、くだんねー盗みで何回かマエ(前科)あるし。大体汚い。酒に酔って寝ながらウンコ漏らして気づかないヤツなんか、俺のジジイ以外、見たことないですよ」

では、母親についてはどうか?

「母親に関しては憎んでるとかないんですよ。本当にダメな女で、しょーがない人だなとは思ってる。っていうのも、ウチの母親は空気が異様に読めないヤツで、性格ひん曲がりまくってて、思ったこと全部口に出しちゃうんです。それで、どんな仕事についてもすぐに女の上司とか同僚ともめたり、それで男の同僚とか上司とすぐにセックスして、職場追い出されるんです。そんでまた別の男に頼って。笑えるぐらい同じパターンで仕事が続かないで、いっつも文句ばっかり言ってる。男にDV食らうのも、俺があいつの彼氏だったら殴りたくなるのもちょっとわかるんです。ほんと空気読まないからあいつは……、言ってることはいつも正論なんだけど……。今はなんか俺の知らない人と結婚して、仕事はデリヘルの受付電話取ってるらしい。5年会ってないけどメールは来ますよ」  

第三者からの情報だけで人物像の特定はできない 

さて、この祖父と母。当初K君の言葉を通じて聞きかじった段階とは、ずいぶんと印象が変わってきたではないか。母親については、ソーシャルスキルが足りず、孤立を招きがちなパーソナリティの持ち主。空気が読めず融通も利かずに正論を主張し続けるというのは、実はK君にも同様なところがあって、遺伝だなあと思う。程度はわからないが、大人の発達障害的な気配も感じさせる。

祖父に関しては、連れ合いの死とケガが失職とその後の貧困の入り口だったというが、そうなる前は登山やスポーツ(バレーボール)が好きな職人で、機嫌のいいときの登山話などは、K君がせがんで聞くほどに面白かったという。

仕事は左官工であった。出身は九州の貧しい山村で、親族とは年賀状の付き合いもなかったという。

ここまで聞き取って、学べることは、まず当事者自身ではない第三者からの聞き取りで、単純に人物像の特定はできないということだ。K君は初回の取材から一度もウソを言ってはいないと思うが、粘って聞き込んでエピソードを深めるたびに、レンズの先に結ばれる人物の像はどんどん変化していく。  

実際にK君の母と祖父に直接取材をすれば、さらに違う何かがわかったかもしれない。こんなことは当然なのだが、取材記者としての僕も駆け出し時代はずいぶんとこの伝聞の人物像に惑わされたことがある。報道によって切り取られた人物像というのは視聴者や読者にとっては同じく記者を介した伝聞だから、これはこの連載の初回で提言した「貧困者のコンテンツ化」が抱える問題にもつながる。

だがここであらためて提起したいのは、また別の問題だ。第一に、この祖父は働「け」なかったのか、働「か」なかったのか。

前回、K君に、旅する人類のたとえをもって説諭したとおり、生活保護制度には、社会を維持存続させる人材を守るという大義名分がある。ご存じのとおり受給は申請すれば通るというものではなく、無業の無資産無預金状態であるとか、扶助を求められる家族親族がいないだとか、所持する現金が一定額を割り込んでいるとか、条件がさまざまにある。

不正受給うんぬんの話があるのも確かだが、K君の祖父は継続して生活保護を受けていて、そこに地元のケースワーカーの怠慢があったとか、不正受給のコーディネーターが介在したとかいう話ではなさそうだ。

はたしてK君の祖父は、働「け」なかったのだろうか? K君は仏頂面で返す。

「働けましたよ。働かなかっただけです。ケガをしたことでちょっと手が動きづらいとかなんで、左官職人は無理っぽいですけど、毎日、けっこう距離ある自販機まで歩いて行ってワンカップ買ってくることができるヤツが、なんで働けないんですか? それどころか、たまに知り合いの軽トラ借りて無免許で近所まで乗ったりもしてたんですよ? なら免許取れよジジイ。レジ打つとか軽い物運ぶだけぐらいなら、働けたはずじゃないですか?」

なるほど、だが僕は、それでもK君の祖父は働「け」なかったのだろうと、思う。K君の祖父に直接会うことができない(もう亡くなっているので)以上、断言はできないが、これまでの取材の中で会った生活保護受給レベルの貧困にある当事者や、すでに受給中の当事者は、外見や行動を見るかぎりは働けそうにみえても、実際は働けないという人が多かった。「少なからずいた」ではなく、明らかに「多かった」。  

「貧困」と「貧乏」の違いは何か

拙著『最貧困女子』(幻冬舎)で、僕は極度の貧困状態に陥ってセックスワークの中でも最底辺の売春で糊口をしのぐ女性たちのルポをまとめ、いくつかの提言をした。

まず貧困と貧乏は違うということ。これは多くの貧困の支援者が言うことだが、貧乏とは単に貧しい状態を意味するが、カネがなくても周囲に助け合う仲間や家族がいたりすればそのQOL(生活の質)は高く、決して「困」ではない。対する貧困とは、貧しいうえに苦しみを抱えた人たちで、その貧しさから抜け出せずにずっともがいているような状況を言う。  

加えて貧乏から貧困に落ち、そこに固定してしまう人(主に取材対象は女性だったが)にはいくつかの共通点があることを指摘した。その共通点とは、3つの無縁と3つの障害だ。3つの障害とは「知的障害、発達障害、精神障害」、しかも明確に症名が診断されるものではなく、むしろ見過ごされがちな「ボーダーライン上の障害」を抱えていること。一方で3つの無縁とは「家族との無縁、地域との無縁、制度との無援」。つまり、頼れる家族も力になってくれる友人もいなくて、そもそも面倒な申請を伴う公的扶助などに自力でたどり着き獲得する能力を失っている。3つの障害があれば3つの無縁にもつながり、こうした条件がいくつも重なって、人は貧乏ではなく貧困に陥るのだと、経験則的な結論を出した。

だがここで問題なのは、このような状態で働けなくなった人たちは、一目見て働けないように見える人だろうかということだ。

答えは、否である。少なくとも僕が取材した貧困女性に、見てわかる身体障害を抱えた人はいなかったし、重病を診断されて闘病中という人もいなかった。おそらく一目でわかるのは、「この人ぐらい面倒くさい性格だと、どんな職場にもなじまないだろうな」という直感ぐらいだ。

だが取材を続けるほどに痛感するのは、彼ら彼女らは、見た目ではわからない大きな傷や痛みを抱えた人たちだったということだ。見た目には五体満足でも、働けないほどに大きな心の痛みを抱えていて、ずっとずっとその痛みから逃れられずに苦しみ続けている人たちなのだということだった。

つまるところ、導き出されるのは、このすさまじい貧困者への差別や生活保護バッシングの根底にあるのは、そもそも見えづらい痛み、見えない痛みを抱えた人たちの存在と、目には見えない痛みを「ないもの」にしてしまう人々との対立なのではないかということだ。  

なぜ人はアルコール中毒になるのか 

ここでようやくK君の祖父の話を持ち出したところに帰結できる。そもそもアルコール依存症は治療の必要な脳の病気だが、その前段としてK君の祖父がどうしてそこまでアルコールに逃げてしまったのか。連れ合いの死か、そのほかにK君も知らない苦しみがあったのか。よくよく考えてみれば、たとえば薬物中毒者にも当てはまる。

なぜ人はアルコールや薬物の中毒になるのか、弱いからだという人もいる。快楽主義者という人もいる。だがたとえばこんなシーンを想定してほしい。

戦場で兵士が爆発に巻き込まれて足をもがれて、凄絶な痛みにもがき苦しんでいる。前線は移動し、周りには味方も敵もいない。ただただ、痛みに苦しみ、死を待つばかりのとき、その兵士は何を思うだろう。いっそ殺してほしい。いっそ死んで楽になりたい。

そんなときに目の前に、その後に死ぬほど苦しむのがわかっていても、一時的にその苦しみを緩和してくれる何かが与えられたとき、その兵士は手を出すだろうか出さないだろうか。この差し出されたものが、アルコールであり薬物だ。

だからこそ、アルコールや薬物の依存者には、過去に壮絶な心の苦しみを抱えていた人が多い。そしてその苦しみは、他者から見てわかりやすいものではないのだ。

人間には、血が出ているとか身体のどこかが欠損しているといった見てわかる苦しみとは別に、見えない苦しみがたくさんある。そしてそれが及ぼす痛みは、直接的な外傷の痛みよりも大きく長引くものなのかもしれない。まして他者が見てわからないという理由でそのケガの治療をしてもらえないとしたら、その痛みはより残酷なものとなるだろう。

K君の祖父がアル中になった背景に、どんな見えない苦しみと痛みがあったのかはわからない。だが祖父がその後も立ち上がれなかったのなら、それは受けた生活保護制度の中に、その痛みを発見しケアし緩和し、抜け出させてくれるようなアプローチがなかったからではないのか?

貧困とは、生活保護制度とは何か

働けないのか働かないのか? 生活保護の「旅する人類論」ほどにはすんなり飲み込めなかったようだが、そんな話を最後まで聞いてくれて、仲間内では友達思いで有名なK君は、こう言った。 「今さらっすか? そういう話は、あのジジイが死ぬ前に聞きたかった」

K君ごめん。できれば君は裏稼業からは足を洗って、たまにはメールじゃなくて直接、お母ちゃんのところに会いに行ってみてほしい。

前回記事(若い貧困者が「生活保護はズルい」と思うワケ)で、ずいぶんと誘導的な書き方をしたことを謝罪したい。 僕自身、ウェブ記事の連載というものは初めてだが、紙媒体との差は何といっても読者との相互性だと思う。東洋経済オンラインの記事に寄せられたコメントの中で差別的で脊髄反射的な「ナマポ」(生活保護受給者)の声が重なるのを見て、こんなにも……と落ち込んだが、そもそも貧困とは、そもそも生活保護制度とは何か、人の痛みとは目で見てわかるものだけなのか、批判的な読者も肯定的な読者も、あらめてその意味を考えてほしい。ちなみに僕自身は、「現状の」生活保護制度については否定者である。

鈴木 大介 :ルポライター 鈴木 大介ルポライター1973年、千葉県生まれ。「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会や触法少年少女ら の生きる現場を中心とした取材活動 を続けるルポライター。近著に『脳が壊れた』(新潮新書・2016年6月17日刊行)、『最貧困女子』(幻冬舎)『老人喰い』(ちくま新書)など多数。現在、『モーニング&週刊Dモーニング』(講談社)で連載中の「ギャングース」で原作担当。

2016年07月07日    ルポライター 鈴木 大介

障害者に優しい店へ 北上 UDスキルアップ講座

2016年07月09日 02時24分14秒 | 障害者の自立

 NPO法人アクセシブル北上(小原広記理事長)は7日、「飲食店障がい者対応スキルアップ講座」を北上市常盤台の市総合福祉センターで開いた。市内の飲食店経営者らが、障害者が気軽に安心して店を利用するための環境整備などについて理解を深めた。

 同講座は、同法人の「きたかみ飲食店UD(ユニバーサルデザイン)スキルアップ事業」で実施。UDは障害の有無にかかわらず、多くの人が利用可能な施設などをデザインすること。10月に開催される全国障害者スポーツ大会には、同市にも選手や関係者らが多く集まる。講座は、障害者に対する飲食店の対応能力を向上させようと2015年度に引き続き開かれた。

 同日は3人が参加。小原理事長が講座の趣旨を説明し「北上に在住する障害者の生活向上につなげるのが最終的な狙い」と強調した。

 市社会福祉協議会の佐藤剛主任が「身体障がい者の現状と支援の方法」をテーマに講話。障害者への基本的な接し方として▽困っているときに声を掛ける▽何が必要かを具体的に確認する▽マナーを持って接する―ことを挙げた。

 この後、参加者はキャップハンディ体験で車椅子の操作方法などを学んだ。カフェバーの男性経営者(33)は「障害者も含め、さまざまな客層が気軽に利用できる店にしていきたい」と話していた。

 同法人は、障害者が入りやすいなどの情報をまとめた市内飲食店マップを作製し、国体や障害者スポ大会で訪れた人たちに配布する予定。

キャップハンディ体験で車椅子の操作方法を学ぶ参加者

(7/8)  岩手日日新聞