社会福祉法人「蓮田市社会福祉協議会」(武内良男会長)は25日の理事会で、来年3月末で事業の終了を決めたホームヘルパー派遣の問題について話し合う。市社協の方針に対しては、利用者らが「ヘルパー派遣が生活の中心」「生死にかかわる大問題」などと反発。市議会も、市社協へ事業の継続を強く働き掛けるよう市に求める請願を採択した。こうした状況を受け、理事会はどういった対応を取るのか。生活弱者を支える立場にある市社協の姿勢が問われている。【木村健二】
利用者の意向聴かず
ホームヘルパーの派遣終了について、市社協は利用者の意向を事前に聴かなかった。このことが、利用者の市社協に対する不信感と反発を強めた。
市社協は3月、2016〜17年度の活動目標や指針を定める「地域福祉活動計画2016」をまとめた。これに合わせてホームヘルパー派遣事業を終了する方針を決め、当時の利用者30人に説明を始めた。
これに対し、利用者らは事業の継続を求めて市議会に請願を提出。この請願を審査した民生文教委員会(6月13日)で、市社協の花俣隆一事務局長は「個別に丁寧にご説明していこうという方針をとった」と釈明した。しかし、利用者の多くは移行先の民間介護事業所が決まらず、事業の終了に納得できていない。
他の事業所への移行に不安
市社協がヘルパー派遣終了の理由として挙げるのが、民間介護事業所の増加だ。市社協によると、蓮田市内のヘルパー派遣事業所数は2000年度に高齢者向けが5カ所、障害者向けが4カ所だったが、15年12月には高齢者向けが12カ所、障害者向けが10カ所に増加し、市内を提供エリアとしている事業所を含めれば、さらに多いとする。だが、利用者には重度の障害者もおり、「一般の介護事業所では歓迎されない」との不安がある。
また、市社協は登録ヘルパー数の減少も事業終了の理由に挙げ、10年度の21人が今年3月末には11人に減ったとしている。市社協はヘルパーの募集を12年度まで続けたが、「応募に至らない」などとして13年度以降は停止し、利用者の新規申し込みも原則的に中止した。市議会では「(ヘルパーの)募集をかけていなければ、ヘルパーの減少は(事業終了の)理由にならないのではないか」との疑問も呈された。
「最後の砦」
県社会福祉協議会によると、県内63市町村の社協のうち、15年4月時点でヘルパー派遣事業に取り組んでいたのは46市町に上り、全体の7割以上を占めた。蓮田市社協の派遣事業は同社協の単独事業だが、市からは人件費などの運営費として年間約8000万円の補助金が支出されてきた。
市社協は25日の理事会で、市議会で請願が採択された経過を報告し、ヘルパー派遣事業のあり方について改めて議論する。1日には、利用者らが市民団体「蓮田市社会福祉協議会のホームヘルパー派遣事業の継続を求める会」を結成。交通事故で左半身がまひするなどして、市社協のヘルパーを利用してきた関口輝子さん(67)が代表に就き、「民間の事業所に受け入れてもらえない人々に『最後の砦(とりで)』として手を差し伸べるのが社協の本来の姿ではないか」と訴えている。
蓮田市社会福祉協議会にホームヘルパー派遣事業の継続を働き掛けるよう同市に求める請願を採択した同市議会本会議
毎日新聞 2016年7月22日