女性にとって、妊娠&出産&育児は人生のスーパーイベント。どれも大きな負担がかかることですから、それまで勤めていた会社を辞めることを考える女性がいます。でもちょっと待った! 特に結婚の段階で会社を辞めることを検討している女性には猛反対の言葉を送りたいくらいです。「寿退社」なんていう言葉がありますが、「昭和か!」とツッコミが入るほどの死語だと思っておきましょう。もう平成も29年目に入りましたよ!
結婚&出産と退職を結びつけるのはリスキー過ぎる
昔のように女性が結婚によって簡単に仕事から離れると損をします。代表的な理由を3つご紹介しましょう。
(1)年功序列や終身雇用の時代ではありません。夫が稼ぐから大丈夫と思っていても、お給料のアップや退職金に期待は持てず、リストラや倒産の可能性もあり、公務員だって職を失ったり身分が変わる時代です。妻がいまの仕事を結婚や出産で手放すのは大きな損になります。
(2)数字のからくりはあれど、いまは3組に1組が離婚している、というデータがあります。自分が離婚しない3分の2に入る自信など持てなくなるほどです。仕事も失い、配偶者も失ったとき、どうやって食べていけばいいのでしょうか?
(3)男性の平均寿命は女性より短いのはもちろん、60歳までに亡くなる率は女性の2倍です。頼れる夫も死んでしまえば、頼れません。
つまり、女性が昔と同じ感覚で結婚や出産と退職を結び付けるのはリスキーになったということです。
結婚&出産後、今の会社はとりあえず辞めて、落ち着いた頃にパートやアルバイトなどで働き続けるつもりの方もいるでしょう。でも、妊娠に伴っての退職を考えている場合は、退職のタイミングを後ろにスライドさせましょう。会社で加入している「健康保険」から出産、育児に対する給付があるからです。ということで、今回は「出産育児一時金」そして「出産手当金」について解説していきたいと思います。
出産育児一時金が42万円!
「出産育児一時金」は、会社を辞めていても受け取ることができる給付で、金額は42万円。お祝いの意味合いではなく、母体保護の考え方によるものなので、妊娠4カ月以上であればおなかの中にいる赤ちゃんにもしものことがあっても給付されます。
出産の際にあなたが一番多くのお金を支払う先は病院などの医療機関です。そのため「出産育児一時金」を自分で受け取るのではなく、健康保険から直接病院などに支払われる仕組み「直接支払制度」という、自腹で病院などにまとまったお金を払わなくて済むとても嬉しい制度があります。出産にかかる費用が42万円以内に収まれば、差額を受け取ることもできます。当然ですが、病院に支払う費用が42万円を超えるようであれば、差額分を医療機関に払うことになります。
1年以上継続して健康保険に入っていた方であれば、会社を辞めてから6カ月以内に出産した場合は出産育児一時金を受け取ることが出来ます。退職後に健康保険を継続する「任意継続」でも、国民健康保険に切り替えた場合でも、受け取れる給付ですし、夫の健康保険の扶養に入っていれば、夫に対して「家族出産育児一時金」として支給されます。つまり保険証を持ってさえいれば、ほとんどの場合、何かのカタチで受け取ることはできるでしょう。
自分の健康保険から受け取るのか、夫の健康保険から受け取るのかを選ぶこともできます。一方の保険証に大手企業や業界の「健康保険組合」の記載があれば、法律上のルールである42万円に、プラスアルファの付加給付がある可能性があります。多く受け取れるほうの出産育児一時金を請求しましょう。
出産手当金はお給料の代わりになる
妊娠&出産で会社をあっさり辞めてはいけない最大の理由は「出産手当金」です。こちらは、夫の健康保険から受け取ることは一切できません。
産前産後は会社を休んでいるわけで、労働を提供していませんから会社に給料支払いの義務はありません。そのため休業中のお給料がゼロという会社はいくらでもあります。そのかわりに健康保険からの「出産手当金」が、出産の日以前の6週から、出産の翌日以後の8週までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として支給されます。
金額は、ざっくりお給料の3分の2くらいをイメージしましょう。これを日割りして休んだ日に対して支払われると考えてください。つまり月給20万円の方が、出産以前6週と出産後8週の98日間お休みをとった場合……
20万円×2/3÷30日×98=435555.5…
ということで、約43万5千円以上を受け取ることができます。計算には細かいルールもあるので、単純に計算通りとはなりません。あくまでざっくりのイメージだと思っておきましょう。また、妊娠中に会社を辞めてしまった後でも、一定の要件を満たした場合は受け取れる可能性もあるので会社に相談しましょう。この給付を放棄することのないようにしてほしいです。
現在は、正社員でなくても健康保険が付いているという方はどんどん増えています。そういう方も、もちろん給付の対象になるので、契約社員、パートやアルバイトであってもしっかり受け取りましょう。
なお「働いてもいないのにお金をもらうなんて会社に悪い」という人と会ったことがあるのですが、お金を払うのは会社ではないので遠慮は不要です。また「今までウチの会社でもらった人がいないので」という声もありましたが、これから出産育児をする人達のためにも、ぜひ道を切り開いてあげてくださいね。
出産手当金を受け取らずして辞めるなんて、「大金を落として歩いているようなもの!」そんな意地悪な嫌味を言いたくなるほど魅力的な給付です。今回は「健康保険」の出産に対する給付を2つご紹介しましたが、その後も育児に対して「雇用保険」の給付があります。原則1歳未満の子のために育児休業を取った場合の育児休業給付金を受け取れる可能性もあるので、こちらも受け取らずして辞めるなんてもったいない限りです。いずれ詳しく解説する予定です。
生き延びるためにも、使える制度は正しく理解して、できる限り活用していきましょう!
2017.01.02 messy