相模原市の障害者支援施設で入所者19人が殺害された事件を受け、国と自治体が防犯対策を強化する福祉施設の支援に乗り出しており、倉敷市は市内の障害者支援施設7カ所を支援対象に選んだ。ただ、施設側には「地域との交流が阻害されないか」と不安もある。防犯対策と、開かれた施設運営をどう両立させるかが問われている。
障害者支援施設の防犯対策事業は、国が2分の1、倉敷市が4分の1を助成し、事業者が残り4分の1を負担する。対象となる事業は、門やフェンスなどの設置・修繕では事業費100万円以上、非常通報装置などの設置では同30万円以上に限っている。
市は昨年10月28日~11月2日、助成を希望する市内の障害者支援施設を募った。5社会福祉法人の計7施設から応募があり、全てを助成対象に選んだ。国は採択するか否かを2016年度中に決める。
7施設の一つ、「瀬戸内学園」(同市連島町矢柄、利用者約60人)は施設入り口にゲートを設置し、敷地内に24時間稼働の防犯カメラ3台と防犯灯4基を取り付ける計画。
学園を運営する社会福祉法人・瀬戸内福祉事業会(同所)の宮本勇理事(59)は「人命を守るために防犯対策は必要」としつつも、「地域に開かれた施設を目指しているだけに複雑な気持ちもある」と打ち明ける。
学園では、1979年の開設当初は入り口にゲートが設けられていたというが、「障害者施設と地域との垣根をなくしたい」との理念から、85年ごろに撤去した経緯がある。宮本理事は「今後も理念は変わらないが、ゲートの再設置などで、地域との交流を妨げるような雰囲気が生まれてしまわないか心配」と話す。
社会福祉法人・ひまわりの会(同市福田町福田)が同所で運営する「ライフステーションひまわり」(利用者約60人)、「ライフステップひまわり」(同約50人)は、隣り合う両施設の周辺に、防犯カメラ8台を設置する計画を立てている。
同会の西江嘉彰理事(59)は「防犯対策の強化と、障害者の社会参画はどちらも進めなければならない。障害者への理解を広め、今なお残る偏見を解消する取り組みも必要だ」と指摘する。
相模原殺傷事件 昨年7月26日、相模原市の障害者支援施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が刃物で刺されて死亡、職員3人を含む27人が負傷した。神奈川県警が同日逮捕した元職員男は「障害者なんていなくなってしまえ」と供述したとされる。
瀬戸内学園の入り口。国や倉敷市の助成を受け、ゲートを設置する計画を立てている
2017年01月02日 山陽新聞