流通業者がみる2018年の販売キーワード1位は、3年連続で「安全・安心」となった。日本農業新聞がまとめた農畜産物のトレンド調査で21日、分かった。順位を上げたのは4位の「気象」で、昨年の天候不順や台風の影響で野菜などが高騰したことから関心が高まった。6位に上昇した「値頃感」は、中・外食需要の対応を強める業者の回答が目立つ。景気は「やや良くなる」が3割強に伸びたが、「個人消費を押し上げるには至らない」とする見方が多かった。
18年の農畜産物マーケットのキーワード(複数回答)を業者に尋ねたところ、「安全・安心」が44%で最多だった。「出回りが増える輸入物との区別化で必要」(関東の青果卸)、「健康志向への対応で消費者から求められる」(大手スーパー)。2位の「おいしさ」と3位の「健康」も昨年から順位に変動がなかった。
4位の「気象」は昨年調査に比べ順位を一つ上げた。「異常気象が相場に及ぼす影響が増している」(関西の青果卸)、「米は作柄で全体需給が変わる」(大手米卸)との回答が並んだ。6位の「値頃感」は昨年の11位から急上昇した。食品全般が値上がりしたことで、価格安定を期待する声が根強い。
回答に新たなキーワードとして加えた農業生産工程管理(GAP)は9位にランクイン。2020年東京五輪・パラリンピックでの食材供給や、輸出を進める意識が表れた。昨年6位だった「機能性(表示)」は14位でトップ10圏外に落ち込んだ。
輸入品への対応も聞いた。「増やす」が4ポイント増の21%で、米や食肉を扱う業者でその傾向が強かった。「分からない」も16ポイント増の20%と伸びた。「国産の供給量次第で輸入品の扱いを決める」(関東の青果卸)など、農家の高齢化など国内生産基盤の弱体化を課題視する向きがあった。
景気は「やや良くなる」が11ポイント増の32%となった。「東京五輪に向けて回復する」(大手外食)とした見方が広がった。ただ最多は今年も「変わらない」で49%。「株価上昇だけでは個人の可処分所得は増えない」(食肉メーカー)「都市部と地方の格差が広がる」(中堅米卸)と冷静な受け止めもある。
部門別のトレンドを見ると、野菜は引き続き甘味の強い高糖度トマト「アメーラ」やジャガイモ「インカのめざめ」などの支持が強まる。果実も極早生ミカン「ゆら早生」など甘さが際立つ品種の注目度が高い。
米は相場回復を受けて「あきだわら」「萌えみのり」など多収米の取引要望が強まる。
畜産物は銘柄の取り扱いで販売を区別化する動きが加速する。昨年9月の第11回全国和牛能力共進会宮城大会で好成績を残した産地に注目が集まる。牛乳・乳製品は健康志向を追い風に「整腸作用」「低糖質」をPRした商品が売れ筋となる。
花きは「ウィークエンドフラワー」や「癒やし」など家庭需要の開拓が商機となりそうだ。
日本農業新聞 2018年01月22日