◇「リヒテンシュタイン展」
国立新美術館の「リヒテンシュタイン展」を見てきました。
正しくは「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」(朝日新聞のページ)。
リヒテンシュタイン公国(侯国とも)という小さな国がヨーロッパにあるのは知っていましたが、はて、どの辺だったっけ… すこぶるあいまいなまま、館内へ。
リヒテンシュタインの地図(ウィキペディアより)
スイスとオーストリアに挟まれた、小豆島ほどの大きさの立憲君主国。国家元首を務めるのがリヒテンシュタイン侯爵家で、美術品収集が一族の家訓とか。
見て回って感じたのは、想像を絶するぼう大なコレクションだということ。それも名品ぞろい。侯爵家はヨーロッパ美術の一大コレクターなんですね~(NHK歴史秘話ヒストリア風)。
・ルーベンスの名画
なかでもルーベンスのコレクションで知られ、今回の展覧会のポスターや図録の表紙に使われている絵がこれです。
ペーテル・パウル・ルーベンス「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」
1616/17年頃 油彩/板で裏打ちしたカンヴァス 37×27cm
5歳の頃の愛娘を描いたものだそうです。ルーベンスらしく、明るく伸びやかな筆致。パッチリした目が生き生きして、強い印象です。でも、この絵が描かれたあと、わずか12歳で亡くなってしまったそうです。こういう名画も、背景を知ると切ないですね。
ルーベンスの他の作品もすばらしいものでした。とくに歴史画「デキウス・ムス」連作(ローマ軍の自己犠牲の故事を描いたもの)や「キリスト哀悼」など、大作には迫力がありました。
・バロック・サロン
リヒテンシュタイン家のコレクションのもう一つの柱とされる、バロック美術を集めた「バロック・サロン」も見もの。
ウイーン郊外の「夏の離宮」で公開されている展示方法を取り入れ、絵画、彫刻、工芸品、タペストリーと家具・調度品が一緒に並んでいます。
部屋そのものがバロックの雰囲気。
「装飾過剰」とも言われるバロック美術。これでもかというぐらい金ぴかの装飾をほどこした贅沢なテーブルやチェストなど、「ああ、これこそ本当にバロック」と実感します。
雰囲気を妨げないよう、展示品には番号だけ。手元のパンフレットと番号を見比べるしくみで、時間はかかりましたがじっくり観賞。
・ビ―ダ―マイヤー
個人的に面白いと思ったのが最後の「ビ―ダ―マイヤー」のコーナー。
19世紀前半に中欧で流行した優美な絵画様式だそうです。
ナポレオン後の王政復古、閉塞的な状況のもとで、政治や理想主義には関心なく、小市民的な身の回りの世界を心地よく描いたもの。
今の日本も閉塞的だけど…
それはともかく、次の2枚の絵が気に入ったのでハガキを買いました。
フリードリヒ・フォン・アメリング「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン侯女 2歳の肖像」
1836年 油彩/厚紙 33×27cm
お気に入りの人形をしっかり抱いて幸せそうに眠る少女。ふっくらした顔、柔らかな巻き毛の表現が秀逸。
小市民的な好みと言われるかもしれませんが、こういう幸せな子供の寝顔こそ平和の象徴。
この絵のハガキが一番売れていたのではないでしょうか。とくにおばさん達に。
フリードリヒ・フォン・アメリング「夢に浸って」
1835年頃 油彩/カンヴァス 55×45cm
これもアメリングの作品。地味な感じで、通り過ぎる人も多かったのですが…
どこか遠く、自分だけの世界を見つめている少女の瞳の透明さが、素晴らしい。
青白いほど白い指、不安げな面持ちに、ちょっとしたことで壊れてしまいそうな、痛々しいほどの若さが表現されているように思いました。
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展覧会を見たあと、館内のレストラン「ブラッスリーポール・ボキューズ ミュゼ」で食事。
逆円錐形の上にレストランがあります。“天空のレストラン”。
思い切った造形ですね。
これを見た私の連れは「地震が来たらこけるンちゃう?」。
ホンマに、大阪の人間はミもフタもない…
手前が「ブラッスリーポール・ボキューズ ミュゼ」(3階)。奥の円錐形の上が喫茶「サロン・ド・テ ロンド」(2階)。1階にも軽食の「カフェ コキーユ」があります。
「ブラッスリーポール・ボキューズ ミュゼ」。ナプキンのデザインが可愛い。
「本日のランチセット」(2000円)。サーモンのムースを頂きました。
味がしっかりしていて美味。
デザートは洋ナシのムース。
名画を見て、美味しいものを食べて。久しぶりに優雅な時間でした。
*「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」は東京のあと高知、京都も巡回します。ぜひご覧になってください。
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撮影カメラ ソニーRX100 (絵画を除く)