『洪水から完全復活したニコンタイランド――財産は人材』(2014年1月22日)という記事が、朝日新聞DIGITALに出ていました。
これまで断片的にしか報じられてこなかったタイのニコン工場の洪水被害と、それからの復旧、今後の洪水対策などがまとめられていて面白い記事です。
タイは平坦な地形なので、一度洪水が起きるとなかなか水が引かないそうで、2011年秋から冬にかけ、日本企業に大きな被害が出たニュースに驚き、あきれました。あれからずいぶん経ちますが、どうなったんだろう… と、気にはなっていました。
同記事で参考になるのは、まず生産している製品内容。
ニコンが、「D4」や「D800」などの一眼レフの高級機を仙台工場で生産しているのは知っていました(最近は「Df」も)。ニコンタイランドで生産しているのは「D610」「D7100」「D3200」などの初・中級モデルと普及価格帯の交換レンズだそうです。
また、レンズ加工、超音波モーター、シャッターユニット、オートフォーカスユニット、手ブレ補正ユニットなど、カメラの性能を決定づける、キーとなるような部品もつくっているとのこと。
なるほど、これはニコンにとって大事な工場。洪水被害は痛手だったでしょう。
タイで生産されている一眼レフカメラのひとつ「D610」(フリー画像)。
記事によると、水没していた金型を引き上げ、油につけて守ったり、タイの従業員を日本に派遣して部品を作ったという、興味深い話も。
そうか、金型が大事… そしてタイの従業員が日本に来ていたんだ…
記事は、
『洪水を乗り越えたことで、逆に従業員との絆が深まった。「遠くに工場を移転させると、従業員はついてこない。高性能のデジタルカメラや交換レンズの生産は、熟練工の存在が重要。その人たちがいなくなってしまう損失はとても大きい。人が財産だ」と、村石社長は語った。(BCN・道越一郎)』
と結ばれています。
タイの熟練工がいないとニコン製品がつくれない、という状況。
日系企業は現地の従業員を大事にしないといけませんね。
考えされられる記事でした。
それにしてもタイでは2013年秋にも洪水が起きています。このときは2011年ほどではなかったようですが、頻繁に起こる洪水は経済に打撃を与え、タイの成長を妨げている要因になっていると言われます。
また洪水は、(最近の政情不安とともに)進出している日本企業にとって大きなリスク。
デジタルカメラに限っていえば、この洪水被害から2012年に立ち直り、生産が軌道に乗ったところへスマホのあおりで各社とも売り上げがダウン。在庫が積み上がり価格下落に拍車をかけた---というような話も、過去に聞きました。
タイは親日国でもあり、人材は優秀だとしても、こうした変動要因は頭の痛い問題ではあります。
関連記事
・『タイ洪水、日系企業の被害拡大 操業停止長期化も 』(日経新聞 2011.10.12)
・『タイ洪水:完全に水引くのは数カ月後か-工場の操業再開に影響も』(ブルームバーグ 2011.11.16 )
・『タイ洪水被害の教訓』(東京海上日動火災保険 2012.2=PDF)