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ペンタックス「645Z」あれこれ

2014年04月19日 | カメラ

リコーが4月15日、中判デジタル一眼レフカメラ「PENTAX 645Z」を発表。(リコーのニュースリリース

新型CMOSイメージセンサーは、有効約5,140万画素。すごいですね。

発売は6月末。価格は80万円前後が予想されていますが…

 

買う買わないは別にして(とても買えない?)、興味だけはあるのでスペックなどを色々チェックしてみました。

RICOH PENTAX 中判デジタル一眼レフカメラ 645Zボディ 約5140万画素 新型CMOSセンサー 645Z 16602

 「PENTAX 645Z」(フリー画像)。

 

センサーの変更

2010年に発売された「PENTAX 645D」の後継機。背面液晶がチルト式になった以外、外観はほとんど変わらないものの、中身は一新されています。

一番根本的な変化は、イメージセンサーが従来のコダック製4,000万画素CCDから、ソニー製5,140万画素CMOSセンサーになったこと。

この理由として、CMOSセンサーのほうが撮影データの読み出し速度が速く、動画やライブビューにも対応できる、とリコーの開発陣は説明しています。

また、同じ中判カメラメーカーのハッセルブラッドや、デジタルバック(中判カメラに装着してデジタル化するユニット)のフェーズワンも最近、ソニー製CMOSを採用。業界の流れでもあるようです。

 

ただ、この背景にコダックがイメージセンサー事業を売却したことが影響しているのかどうか、ちょっと気になりました。

(コダックは2011年11月、イメージセンサー事業を Platinum Equity に売却、Platinum傘下の Truesense Imaging という会社が事業を継承しました。最近の報道では、そのTruesense Imaging も別の会社に買収されるようです。

 EE Times Japanによると、『オン・セミコンダクターは2014年4月、高性能イメージセンサーを手掛けるトゥルーセンス・イメージングの買収を発表した。買収額は約9200万米ドルで、2014年6月末までに買収を完了させる予定としている。トゥルーセンスは、イースタン・コダックのイメージセンサー事業部門を承継した企業。』とあります。)

かつて世界で初めてデジタルカメラを開発した栄光のコダックが、事業を切り売りした果てに凋落してしまう話は、長くなりすぎるのでやめますが、ビジネスの世界の無常をつくづく感じますね。そして、そもそもCCDの製造はどうなってしまうのか。

リコーは、CCDの画質が良いため(リコーがはっきりそう言っているわけではありません)、従来の「645D」の生産を続け、「645Z」と併売するとしています。でも、そのCCDは、どこから供給してもらうのでしょう…

(まあ、そんなことは心配せんでもいいことか… )

 

その他のスペック

ともあれ、「645Z」に採用されたCMOSイメージセンサー。面積は「645D」とほぼ同じ(やや小さい)43.8×32.8mmで、引き続き光学ローパスフィルターレス。

ISO感度は「645D」が100~1600(拡張時)だったのに対し、 「645Z」は100~204800。これは驚異的な高感度性能です。

画像処理エンジン「PRIME III」は、高度なノイズ処理が可能。連写速度は約1.1コマ/ 秒から約3コマ/ 秒にアップ。

AE・AFモジュールは、基本的にAPS-C一眼レフ「K-3」と同じ。-3EVという暗い被写体でAFが使えるというのも良いですね。

1920×1080:60i/30PのフルHD動画撮影が可能。4K(3840×2160ピクセル)サイズのインターバル動画(Motion JPEG:AVI)撮影機能も備えています。

 

「645Z」は今年2月に開催された「CP+ 2014」で、名称未定のまま参考展示されていました。

その会場のセミナー「スペシャル対談『ペンタックス・リコーの秘密に迫る!』で、写真家・田中希美男氏が「予想」したスペックに近いものになっています(デジカメWatch参照)。

 

最新レビュー

カメラ雑誌の5月号では、各誌が一斉に、この「645Z」を取りあげています。

なかでも「アサヒカメラ」5月号が、実写例もあり詳しいと思いました(表紙写真はフリー画像)。

アサヒカメラ 2014年 05月号 [雑誌]

「 PENTAX 645Z 実写速報!」という特集。

まず「645Z」(ベータ機)と「645D」、ニコン「D800E」との解像力比較をしています。

結果はもちろん「645Z」が圧倒。フルサイズ機では3630万画素のすばらしい画質を誇る「D800E」もかないません。

645Z > 645D > D800E の順番でした。

さすがに中判フォーマットの余裕ですね。

次に高感度画質。

調整中のベータ機のため、最高感度であるISO204800の画像は載っていませんが、月光の下、ISO12800で撮った富士山と白糸の滝の画像。まるで昼間に撮ったかと思われるような画像です。

ISO6400で撮った「月下の鳥居」。「D800E」との高感度ノイズ比較では、「645Z」のほうがはるかにノイズが少ないのが分かります。

暗い場所でのライブビューの視認性が際立っていること、レスポンスの快適さ、大型チルト式液晶モニターの見やすさも、特集記事で強調していました。

 

中判デジタルの世界では“格安”

記事の末尾に価格の比較が載っていました。

それによると、

「645Z」の予想実売価格は80万円前後。これに対して、同様のソニー製5000万画素級CMOSセンサーを搭載したハッセルブラッドの中判デジタルカメラ「H5D-50c」は288万円(税別)、フェーズワンの中判デジタルバック「IQ250」は450万円(税別)するそうです。

まさに「645Z」は“格安”。

さらに、価格.comをのぞいてみると、最安777,110円という価格がついていました(4/19)。すでに80万円を割り込んでいるではないですか。もっと安くなるかも…

これは買わないとソン… (いや買えない、買えない!)

 

どんな人が買うんでしょうね。

 

「アサヒカメラ」の記事では、リコーの開発者との、次のようなインタビューも載っています。

『 ---今回、2号機が出るということは、645Dはかなり売れたわけですね。

 (リコー側)中判デジタルカメラとしてはケタ違いの数が売れました。

  ---どんな人が645Dを購入したのですか?

 (リコー側)ほとんどがアマチュアで、9割近くが風景を撮る人。これは当初の予測通りでした。』

 

フィルム時代でも中判カメラで風景を撮る人は多かったですから、そういう層がデジタルへ移行して買っているのでしょうね。

(ゼンザブロニカとか… 懐かしいカメラが色々ありましたね)

 

リコーとしては今後、プロにも積極的に売っていくそうです。手持ちで、人物撮影にも使ってほしいとのこと。

ファッションの広告写真に使われているハッセルブラッドなどをイメージしているようです。

 

モード界の“皇帝”で写真家でもある、カール・ラガ―フェルドが、普通のデジタルカメラに失望した末、ハッセルブラッドHシステムに出会って気に入り、ファッション写真を撮るのに愛用しているというのをカメラ雑誌で読んだことがあります。

すごくゴージャスな話。そんな世界で「645Z」もシェアを伸ばしていけるか…

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