肝炎治療薬としてヒトに使用されている既存薬である「プロパゲルマニウム」(CCL2阻害剤)によって、がん転移を強力に抑制させることに成功したことがJournal of Clinical Investigationで発表されたそうです(財経新聞)。がん細胞の周囲には「がんニッチ」と呼ばれる細胞群が存在し、がん細胞の増殖や転移を積極的に手助けしていることが知られています。特に血液由来の「線維芽細胞」や「単球細胞」は、がんニッチの構成因子として重要とのこと。がん治療においては、がん細胞だけでなく、このがんニッチも同時に消滅させる必要があるそうですが、これまでどのようなメカニズムでがんニッチが形成されるかについてはあまりわかっていなかったそうです。今回、「Fbxw7」と「CCL2」と呼ばれる二つのタンパク質に注目。まず、乳がん患者の血液細胞を調べ、Fbxw7の発現量が低い人は、がんの転移や再発がしやすくなることを発見。次に、Fbxw7が低くなると、CCL2が過剰に分泌され、それががん細胞の周りに単球細胞を異常に呼び寄せて、がんニッチを作り上げていたことを発見。そこで、このCCL2の働きを阻害するために、マウスにCCL2阻害剤である「プロパゲルマニウム」を投与すると、単球細胞の集積がみられなくなり、転移先でのがん細胞の増殖が抑えられたというのです。プロパゲルマニウムは既に肝炎治療薬としてヒトに使用されている既存薬でもあることから、今後なるべく早い時期にプロパゲルマニウムの臨床治験を進めていく予定だそうです。
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