横須賀総合医療センター心臓血管外科

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須賀市立うわまち病院心臓血管外科における弁膜症手術の現状と周術期不整脈管理

2018-06-18 19:07:33 | 弁膜症
 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科における2017年の手術件数は383件で、うち心臓胸部大血管手術(いわゆる開心術)は133件であった。そのうち弁膜症は74件と、開心術に占める割合は半数以上で、今後高齢化が進むにつれてますます増加していくことが予想されている。
 こうした背景で、より手術侵襲を小さくし、早期の回復が期待できる低侵襲心臓手術(MICS=Minimally Invasive Cardiac Surgery)が注目されるようになってきた。2018年4月より右小開胸の内視鏡補助下弁膜症手術は保険の加算を認められるようになり、今後盛んになると考えられる。当院においても、僧帽弁形成術、大動脈弁置換術などを8cmほどの右小開胸で行うMICS手術を神奈川県内でも最も早く導入し、術後約1週間での退院を可能にしている。MICSの利点として胸骨正中切開しないため縦隔炎が起こる可能性が著しく低い、回復が早い、術後の呼吸不全になりにくい、等があげられるが、一方、不利な点として、長い特殊で高額な手術器具を必要とする、操作が煩雑かつ難しい、視野の死角が出来やすく出血部位を同定しにくい、片肺換気を要するなどがあげられるため、適応するには慎重な検討が必要である。現時点ではリスクの低く、手技的に確実に手術が可能な症例を選んで適応している。
 また、心房細動において出血などの影響で抗凝固療法が出来ない症例に対して、左心耳の切除をすることで、左心耳内に血栓形成することを予防する手術も、専用のデバイスを用いて5分ほどで安全に行うことが出来る方法も症例によっては適応としている。
 弁膜症に加えて、左小開胸による冠動脈バイパス手術も2017年から開始され、複数のバイパスを作成したり、循環器内科のカテーテル治療との組み合わせ(ハイブリッド手術)によってより低侵襲な人工心肺非使用冠動脈バイパス術、いわゆるオフポンプバイパスも導入し、症例が増加傾向である。
 周術期管理においては、心拍数80以上の頻脈が心血管イベントや心筋のダメージに影響するとの報告があり、積極的に心拍数を低下させる手段として短時間作動型のベータ遮断薬の有用性が指摘されている。
 こうした新しい治療、低侵襲な治療をより積極的に導入することで、今後弁膜症を含む心不全のパンデミックに対応していくことが望まれる。

(第二回 三浦半島Cardiovascular Seminar 講演要旨)
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