横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

急性大動脈解離の治療の進歩

2018-06-13 19:55:09 | 大動脈疾患
急性大動脈解離は心臓血管外科領域における緊急手術の代表格である。突然発症する大動脈疾患で、即座に診断して治療方針を決定し、外科治療が必要な場合は最も早く治療開始出来るよう病院連携することが救命を左右する。その中で、演者が経験した最近20年間における急性大動脈治療の進歩について概説する。

【大動脈解離治療の流れ】多くは突然発症する胸背部痛であるが、臓器虚血症状が前面に現れることある。CTで確定診断し、上行大動脈に解離を有するStanford A型は緊急手術、B型は保存的治療で、直ちに治療方針を決定る必要がある。手術は、主に人工血管置換による破裂部位置換とエントリーの切除である。臓器虚血症状がある場合は、バイパスや開窓術などのオプションを検討。

【診断・治療の進歩】強く実感するのは、迅速な診断が可能になったことである。特に関西淡路大地震の後、全国の研修指定病院に救急部が設置され、救急医療の普及したことで、急性大動脈症候群が疑われる機会が増え、CTへのアクセスが改善した。手術手技の進歩として、人工血管や止血剤の進歩が手術時間の短縮に寄与している。弓部大動脈置換術においては、商業ベースのオープンステントの登場により下行大動脈の真腔拡大がより期待でき、また脊髄虚血による対麻痺の発生を低下させる手技も検討されている。心尖部や上行大動脈送血など新しい人工心肺の送血方法が考案され、より安全かつ確実、かつ短時間でアクセス可能な送血部位が可能なっている。下行大動脈の解離では、ステントグラフトによる真腔の拡大やエントリーの閉鎖が有効な症例も増えてきた。臓器虚血障害が課題として残るが、早期診断が、早期治療を可能としており、救命率が改善していくと考えられる。

【結語】急性大動脈解離の治療成績は、この20年で大幅に改善し、手術死亡率も平均20%から、現在は10%ほどに世界でもトップクラスの成績となっているが、これには、医療全体のレベルアップにより、早期の診断と、より早期の手術介入が可能となってきたことが大きい。手術・治療の技術革新も治療成績に寄与してきたと考えられる。

(JADECOM学術集会 講演要旨 2018年9月8日 海運ビル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする