横須賀総合医療センター心臓血管外科

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上大静脈の切除・人工血管置換術

2018-11-07 10:53:14 | その他
 上大静脈を切除または人工血管置換する必要のある疾患、心臓血管外科医にとっては珍しい手術となりますが、主に肺癌や縦隔腫瘍による上大静脈への直接浸潤がある場合に適応となります。

 切除の仕方として、部分切除を行い残った静脈壁を縫合して血流を維持する方法と、完全に人工血管置換する必要があります。人工血管置換には主にゴアテックスを素材にした人工血管を使用することが多いです。大静脈は低速系の血管なので血栓閉塞をしやすいといわれており、その予防のために抗凝固療法を継続する場合が多いです。
 過去に自分が経験した症例では、切除部分の上下に脱血管を挿入して連結し、大静脈遮断と同時に連結した脱血管をシャントのルートとして使用して上半身の鬱血を防ぐ方法を採用しています。一説では単純遮断でも十分問題なく手術できるとも言われていますが、万が一大出血した場合などの対処も含めてシャントのルートがある方が安心して手術操作をすることを可能にするにが最大のメリットです。

 上大静脈への直接浸潤が悪化すると、上大静脈が閉塞して、上半身が浮腫になる、上大静脈症候群を呈する場合があります。この予防のためにも手術による人工血管置換術は有効です。
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