横須賀総合医療センター心臓血管外科

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社会問題としての処方箋薬物の薬物依存

2018-11-10 12:37:35 | その他
 昨日、おとといと、たまたま連続して聞いた話。

 アメリカでは、術後の疼痛や慢性の疼痛に容易にオキシコンチンという麻薬性鎮痛薬を処方されることが多く、若年者のこの処方箋薬物に対する依存が増えていて社会問題になっているという、というアメリカ人の話。高校生などでこの薬物依存による死亡者も身近に出ているらしいのですが、処方箋薬物のため、あまりニュースなどでは問題になっていないといいます。不用意に、そして不必要な量のオキシコンチンを処方する医師が少なくなく、それを転売したり、盗難して売買する事例も数多くあるといいます。日本では癌患者の疼痛管理に使用される以外は、処方されることはなく、これを悪用して薬物依存が健常者に発症するそいう意識は日本には、もしくは日本人の医師にはありません。ストリートでDrug Dealerから麻薬を買うのであれば、映画やドラマで見るような感じで想像もできますが、病院で処方される薬物で、実際に薬物依存が発生して多数の死亡者も出ている、というのは日本では想像できません。

 また次に聞いたのは南アフリカ出身の人の話で、南アフリカでは、医師が容易に「リタリン(メチルフェニデート)」という薬物を処方し、乱用している実態があるといいます。日本ではナルコレプシーなどの睡眠発作が起こるような病態に対してのみ、精神科領域で限定的に処方されるのに対して、南アフリカでは学生の試験勉強はリタリンなしでもできない、とも言っていました。リタリンはカフェインとアンフェタミンの中間の覚醒作用があり、依存性はアンフェタミンほどではないにしても、依存性があるので、リタリンの中毒がたくさん発生しているといいます。病院で簡単に処方してもらえるので、学生の間でも蔓延しているそうです。一方、ヘロイン、コカインなどの麻薬はその辺で路上で簡単に購入できるそうです。

 また、オーストラリアでは、タバコの値段が高騰し、ひと箱30~40ドルと、日本の10倍近い値段で売られているそうです。たばこ税をあげて、国民に吸わせないような政策だそうで、それによって疾病患者が減少すれば、医療費の抑制にもつながる理にかなった政策と思います。しかしながら、オーストラリアでは、タバコが高いためにそれよりも安価に購入できる覚せい剤アイス(アンフェタミン)を使用する人が非常に増えているそうです。そのために錯乱状態に陥った人が殺人を犯すという事例が後をたたないそうです。アンフェタミンは日本人が開発した薬物だそうで、旧ドイツ軍で最初に採用され、その後旧日本軍が軍用に製造して兵士が使用していたことから一般化し、戦後も市販されていたそうですが、現在は禁止薬物になっています。

 海外ではこうした話題はかなり身近な話なのだそうですが、日本では一時、ハルシオンがそれに近い扱いを受けていた時代もありましたが、それほど乱用するような文化ではないところが、日本は世界一安全な国、といえる所以でもあるとおもいます。
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