横須賀うわまち病院心臓血管外科

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関東手術手技研究会

2018-11-11 05:04:56 | 心臓病の治療
 11月10日 関東手術手技研究会が都内で開かれました。毎年開かれる研究会で、心臓血管外科手術のなかでも、特にその道のプロが、専門医向けに講演するかなりニッチな、専門性の高い研究会で100名以上の参加者がありました。
 今回のテーマは、一針から学ぶ でした

内容として
① 冠動脈バイパス術  心拍動下冠動脈バイパス術は麻酔科とのコラボ手術である 
② 僧帽弁形成術    運針 完璧な僧帽弁形成で長期の逆流再発がない手術を行うには
③ Nowood手術の工夫  手術死亡率がこの20年で大幅に改善している
④ 大動脈(基部)手術における止血剤の使用方法
⑤ 大動脈弁形成
⑥ 左室形成術の治療成績
⑦ 弓部大動脈置換術の手術手技

について、その道の第一人者から、非常にわかりやすいビデオで、ニッチな部分のレクチャーがありました。
流れるようなプロの手術は、スムーズに短時間で終わり、またビデオは編集されていることもあり、見ていると、だれでも簡単にできるのではないか、と錯覚をおぼえるほどです。美しい手術は見てて飽きません。特に手技上、新しく導入したいというほどの技術はありませんでしたが、大動脈弁形成は将来どのくらいまで普遍化できるのか、普及するのか、生体弁置換よりも成績が上回ることができるのか、という疑問と将来の期待があります。

大動脈弁形成術は、まだ大動脈弁閉鎖不全症における実施率は全国の統計でも5%以下です。普及しない理由として
①生体弁置換のほうが長期成績が良い(形成術のほうは逆流再発率や、逆流遺残率が高く、いまだ道半ばですが、うまくいくと長期的にも安定している症例も多いようです)
②時間がかかり、リスク上昇
③大動脈弁閉鎖不全症の割合は狭窄症に対して小さいため、適応になる疾患は中小規模病院では少ない
④人工弁を使用しないため、スポンサーが付きにくく、学会などでの宣伝がしにくい(これは自己心膜による再建手術も同様と思います)
など考えられます
コメント
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