横須賀うわまち病院心臓血管外科

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急性大動脈解離手術における送血部位

2018-11-21 06:46:17 | 心臓病の治療
急性大動脈解離は分枝の血流障害などが発生しやすい為に送血部位の工夫が必要です。送血部位によってMalperfusionが発生する危険があります。実際の選択しうる送血部位は
①上行大動脈
②心尖部
③腋窩動脈
④大腿動脈
あたりです。

一般に最も多く使われるのは、腋窩動脈と大腿動脈です。腋窩動脈は弓部大動脈以下が順行性であるのに対し、大腿動脈送血では、生理的に逆行性に送血することになり、この逆行性送血が血流障害の原因となることがあるため、ガイドラインでは腋窩動脈からの送血が推奨されています。しかしながら、CT画像から慎重に送血部位を選択することで、Malperfusionを回避することが可能です。
横須賀市立うわまち病院では、現在最も多い送血部位は、上行大動脈と大腿動脈からの送血で、どちらが確実に安全に送血可能かどうかを判別して決定していますが、それがリスクがあるという症例では、腋窩動脈もしくは心尖部送血を選択しています。よって、過去10年間で100例ほどの急性大動脈解離手術を実施してきましたが、最も多いのは心尖部送血、続いて大腿動脈送血、最近は上行大動脈送血が多く、腋窩動脈は少ないです。
 腋窩動脈送血を実施していない理由は、腋窩動脈に人工血管を縫着するのに時間がかかり、手術時間が約1時間長くなるからです。ほとんどの症例が時間外に行う緊急手術である急性大動脈解離では、より短時間で手術を終える必要があり、最も短時間で救命できる手段として送血部位を選択しています。
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