横須賀総合医療センター心臓血管外科

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血管吻合における標準術式と修練医のトレーニング(マットレス吻合と連続縫合)

2019-01-09 14:29:09 | 大動脈疾患
 大動脈疾患の手術は基本的に自分の血管と、人工血管の縫合手技がメインとなります。その縫合の工夫として、確実に出血せず、強固に吻合することが基本です。また狭窄を作って血流障害を起こすことも予防する必要があります。大動脈の手術は、出血の制御に難渋したり、循環停止中に吻合するため一刻を争って確実に吻合する手技が要求されます。
 この対策として、自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科のグループでは、大動脈の吻合をプレジェット付2-0ポリエステル糸による全周マットレス吻合を基本手技として採用し、これによって若手の修練医にも安心して術者を経験させることができるため、他の医局に入局するよりもより早期に多くの症例を術者経験できることが多く、それを目指して全国から心臓血管外科医を目指す若手医師が集まっています。

 横須賀市立うわまち病院でも、その指導をしながら若手医師にも大動脈瘤や大動脈解離の術者を経験させることがより早期にできるような体制としていますが、常にこのマットレス吻合で慣れてしまうと、かえって連続縫合による吻合の経験が不足し、いざ連続縫合をするときにイメージできない、手が動かない、というリスクを持っていることがあります。当施設で採用している全周マットレス吻合は、特に口径差がある血管どうしを形態良く吻合したり、形がいびつな断端の血管を、人工血管にプロポーションよく吻合するのに非常に優れた方法です。たしかに優れた吻合方法で楽に確実に吻合が可能であれば、それにこしたことはありませんが、急に従来の方法で吻合するというときに、いざとなると出来ないというようなことでは、不足の自体が起きやすい心臓血管外科の世界では対応出来なくなる危険性があります。これはまるで、電子カルテに慣れすぎてしまい、いざ電子カルテが故障したり、採用されていない施設で仕事をしようとすると機能しないということや、普段は洗濯機で洗濯しているのに突然手洗いで選択しなければならいないような事態に似ているとも思います。


 世の中ではまだまだ連続縫合による吻合が主流ですので、それにも十分習熟しておかないと、どこの施設でも通用する技量とはいえません。特に、最近はリスクに対しての予期や対策が重要視されていますので、いかような手術手技にも対応できるように、普段から修練しておくことは非常に重要と感じています。
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