横須賀総合医療センター心臓血管外科

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フリースタイル弁

2019-01-19 12:44:14 | 心臓病の治療
 フリースタイル弁は豚の大動脈基部をそのまま処理して大動脈基部ごと移植することができるタイプの人工弁です。冠動脈再建しての移植も可能ですが、多くは冠動脈口の部分をくりぬいて、その下部の大動脈弁だけを移植します。特殊な使用方法として、感染性心内膜炎に対して大動脈基部再建に使用したり、Apico-aotic counduitなどに使用します。

 感染性心内膜炎に使用する場合は大動脈弁輪に膿瘍を形成した症例において、膿瘍の除去をした後に、このフリースタイル弁を移植し、冠動脈は入口部で閉鎖した上で、冠動脈バイパス術を左右冠動脈に行うか、もしくは冠動脈を直接このフリースタイル弁に縫着して冠動脈再建をすることになります。実際にこのような手術を行う必要のある重症の症例は非常に希であり、前任地でもハイボリュームセンターを言われているにもかかわらず、おそらく開設後25年で1万件以上の心臓手術を行ったうちでも1例しかありません。
 最近、紹介されてきた患者さんで、他施設において同様の手術で救命された患者さんがおり、その治療・手術は賞賛すべき内容であることを患者さんにお伝えしました。

またApico-aortic conduitは、心尖部に人工血管、それにフリースタイル弁を連結し、それにまた人工血管を連結して、下行大動脈に遠位側を吻合する手術です。大動脈弁狭窄症において、大動脈弁を操作せずに左室内から大動脈へ血流を導く新たなルートを作成する手術ですが、この場合もフリースタイルベント人工血管のフィッティングが良く、使用するのに便利です。TAVI(経カテーテル的大動脈弁位人工弁挿入術)が普及する右用になってからこの手術が行われることは非常に希になっています。

 その意味で、このフリースタイル弁が使用されることは非常に希で、国内で使用される個数は年間数個と聞いたことがあります。フリースタイル弁は、他の生体弁と違って、金属製などのステントが入っていないステントレス弁であり、これによって弁口面積が大きいのが特徴です。最近は狭小弁用の生体弁が多数開発されるようになって、このフリースタイル弁を使用されることはますます希になっていますが、こうした知識を保持しておくことも心臓血管外科専門医にとっては重要です。
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