横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

患者さんにとって、手術の出来栄えは手術創の美しさ :形成外科医が心臓手術の手術創を縫合

2019-07-18 04:28:45 | 心臓病の治療
 患者さんにとって心臓手術の善し悪しは、一つは心臓の機能が改善して、自覚症状が良くなること、これが最も重要なことですが、実際に検査所見を説明して理解してもらう必要があります。これに反して、手術創は患者さんにとって自覚できる手術の出来栄えとして、手術創の美しさや痛みの少なさという実感できるものもあります。
 やはり、創がもっとも綺麗に縫合することを専門としているのは形成外科医です。横須賀市立うわまち病院では形成外科医2名が常勤としているため、創部が特に綺麗に縫合してあげたい患者さんには手術の最後に行う皮膚の縫合は形成外科医に依頼しています。右小開胸アプローチでは、正中切開の手術痕に比較してケロイドになりにくく、また、創部が女性の場合は乳房の下縁もしくはその外側に位置するため、上腕でかくれて見えにくくなっています。心臓外科医は、心臓そのものの治療に全精力を集中するため、手術の最後の局面で行う皮膚の縫合には集中力が切れてしまっていることも少なくありません。こうしたときに、創部を綺麗に縫合するには形成外科医に依頼する役割分担は患者さんにとって非常に有益だと思われます。

 すべての手術症例で形成外科医に依頼できるわけではありませんが、術者のほうで特に綺麗に縫合してあげたい患者さんに対しては、横須賀市立うわまち病院では特別にそうしたチーム医療を行っています。
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MICSにおける胸骨椎体間距離の重要性

2019-07-18 04:06:27 | 弁膜症


 右小開胸アプローチによる僧帽弁手術においては、僧帽弁自体は通常、左胸腔内に位置している為、手術創から僧帽弁は胸骨と椎体の間のスペースを通じて観察することになります。そのため、胸骨と椎体の距離が短い体系をしている患者さんの場合は、通常のMICS(低侵襲心臓手術)では僧帽弁が見にくくなります。この見にくい症例の典型が漏斗胸で、胸骨自体が内側に凹んでいるために、著しくこの距離が短くなり、写真のような症例では、ほぼ、右開胸での手術は不可能といえます。すなわち、写真のaの非常に小さい隙間を通して僧帽弁を観察、操作することはほぼ不可能です。
 この漏斗胸ほどではなくとも、この胸骨椎体間距離が小さい患者さんの場合は、胸骨を前上方に機械的に引き上げることで、ある程度(2~3cm)はこの距離が大きくなるために手術が可能になる症例もあります。具体的にはMICS-CABGで開胸器をフックでひっかけて上方に牽引する装置やケント鈎を使用することで視野が改善します。痩せている患者さんは特に肋骨が地面に対して垂直に近い角度を呈している為、これを少しでも水平に近づけることで、この距離を大きくします。
 筆者が経験した今まで最もこの距離が小さい症例は69mmでしたが、今回、59mmの症例に対してCT Retractorという内胸動脈採取の際に胸骨を牽引する装置を使用して良好な視野を得ることが可能でした。MICSをたくさん経験しているExpert Doctor何人かに聞いても有効な方法だということでした。

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