はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

映画評1247 ~ 正体(Netflix)

2025-02-06 | 映画評
今回は「正体(Netflix)」です。

染井為人の同名ベストセラー小説を、横浜流星の主演、「新聞記者」「余命10年」の藤井道人監督のメガホンで映画化したサスペンスドラマ。
これまでも「ヴィレッジ」や「パレード」で藤井監督とタッグを組んできた横浜が、姿を変えて逃亡を続ける鏑木を熱演。鏑木が日本各地の潜伏先で出会う人々を吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈が演じ、山田孝之が鏑木を追う刑事の又貫に扮した。

主演:横浜流星
共演:吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、前田公輝、田島亮、遠藤雄弥、宮﨑優、森田甘路
その他:西田尚美、山中崇、宇野祥平、駿河太郎、恵木野花、田中哲司、原日出子、松重豊、山田孝之など

<ストーリー>
日本中を震撼させた凶悪な殺人事件を起こして逮捕され、死刑判決を受けた鏑木慶一が脱走した。鏑木を追う刑事の又貫征吾は、逃走を続ける鏑木が潜伏先で出会った人々を取り調べる。しかし彼らが語る鏑木は、それぞれがまったく別人のような人物像だった。さまざまな場所で潜伏生活を送り、姿や顔を変えながら、間一髪の逃走を繰り返す鏑木。やがて彼が必死に逃亡を続ける真の目的が明らかになり・・・


昨年11月に劇場公開された作品で、ネットでの評判があまりにもいい(5段階で4)ので、見ようかと思っていたものの、そのうちNetflixでやるだろうと思っていたら、早くも配信されていたので見ることにした。

そして、見終わった後の感想は・・・この映画を見て感動した人というのは、間違いなく最後のシーンで、主人公鏑木慶一が再審によって無罪になった瞬間に号泣したのだろう、ということだ。

それ以前の「何で?」とか「どういうこと?」とかいう違和感だらけの展開については、何の疑問も持たずに、ただただ最後の判決のシーンだけで泣いちゃうような人。

単に「流星クン、カッコいい」「良かった」だけの人もいるのだろうけど、この映画を見て感動する人の気持ちは私にはまったく理解できない。

ということで、いつもと違って悪態から入りましたが、とにかく違和感の連続でした。

まず、あらすじにもあるように、主人公は姿・形を変えて全国を転々とする、となっているのだけど、建設現場でひと悶着があった後は、なぜか吉岡里帆演じるジャーナリスト安藤紗耶香に記事を提供するフリーライターとして登場する。

この時の主人公は、どこからどう見ても横浜流星そのもので、つまり逃亡者である鏑木慶一にしか見えない。

最初は一人二役かと思ったくらいだし、もしかして紗耶香が鏑木慶一であることを知っていて、あえて雇ったのかと思ったのだけど、その後そうではないことがわかるし、とは言えいくら何でも素顔そのものだったので、見ていて異様なほど違和感があった。

だいたい、あれだけニュースで報道されている事件で、顔写真も複数出回っているのに、ジャーナリストである彼女だけでなく出版社に勤める人全員が気が付かないわけはないからだ。

そもそも、彼女は鏑木をいったいどこでどうやって雇ったの?
そのあたりの描写も一切なかった。

さらに、彼女の家に鏑木がいることがバレて警察に踏み込まれてしまうのだけど、この時紗耶香はなぜか鏑木を逃げる手助けをする。

何で?
この時点で、彼女が鏑木は無罪であると信じるような確証などなかったはずだ。
というか、その直前に彼が鏑木であると気が付いたのだから、彼女自身が何か調べていたわけでもない。

その前のエピソードとして、彼女の父親が痴漢の冤罪事件に巻き込まれてしまうという描写があるのだけど、「自分の父親は冤罪だから、鏑木もきっと冤罪にちがいない」という思考回路だとしたら、この女も相当頭がおかしい。

さて、鏑木は再度逃亡した後、今度は長野県にある介護施設で働くことになる。

ここは、主人公が死刑判決を食らった事件の唯一の生き残りである女性が入所している場所なんだけど、そんな施設にどうやって就職できたの?

どこの誰でもいい、という施設ではないし、介護士の資格が必要とかいう以前に、履歴書とか身分証明書はいったいどうしたの?

仮に介護士の資格があったとしても、それは鏑木慶一そのものの物だから、すぐにバレてしまう。

しかも、この時の主人公も鏑木慶一丸出しで、序盤に見せていた変装云々の話など、すでにどこかに行ってしまったみたいだ。

とにかく、このあたりの描写が「いいかげん」とか「ご都合主義」とか言うよりも、むしろ「な~んにも考えていない」としか思えなかったのである。

その後、主人公が殺人犯だと思われた時のシーンが流れるのだけど、これまた違和感の塊だった。

主人公は当時高校生で、閑静な住宅街を歩いていて、突如悲鳴を聞いたので、その犯行現場である家に行ったのである。

そして、家に上がり込んだところ・・・というか、普通勝手に家に上がり込んだりするか?

そこは、まさに犯行直後の状況であって、犯人が逃げようとしていたのである。

ところが、主人公はなぜか殺された住人の一人の背中に刺さっていた鎌を引き抜いたために、返り血を浴びてしまうのだけど、そんなバカなことをするヤツがいるか?

「犯行現場でむやみにそのへんのものを触るな!」ということじゃなくて、あんな血まみれの状況の中にわざわざ入っていくとか、わざわざ刺さっている鎌を引き抜くとか、普通そんなことをするヤツなんかいないだろう。

そこで呆然としているところに、警察官が突入してくるわけだけど、警察にはいったい誰が通報したの?

唯一の生き残り者は、その時半狂乱だったのだから、通報したのは近所の人であることは間違いない。

その人は、いったい何を見て、どう判断して通報したの?

悲鳴を聞いただけで、すぐに警察に通報するヤツなんかいるわけがないので、当然主人公と同様「何なんだ?」と隣家(?)に覗きに行ったか、あるいは外に出てきて犯人らしき者を見かけたはずである。

劇中で、この通報者についてまったく触れられていないのは、これまた監督が「な~んにも考えていない」からだろう。

この通報者の話を聞けば、その時の状況はもう少し詳しくわかったはずだろうし、少なくともあの状況だけで主人公が犯人となり、すぐに死刑判決が出るなどということは、およそ考えられない。

しいて考えられるとしたら、主人公が想像を絶するほどのバカで、殺人現場でしばらくウロウロしていた、という状況以外にない。

劇中でも、主人公を追う立場にいる山田孝之演じる刑事又貫の上司である松重豊演じる川田が「18歳である主人公を犯人にすれば、犯罪抑止にもつながる」などとわけのわからないことを言っていたが、警察がいくら犯人に仕立てようとしても、検察がそう簡単に立件するとは思えない。

つまり、そもそもの大前提である主人公が死刑囚になった経緯がムチャクチャなのだ。

そう思いながら続きを見ていると、主人公は介護施設でとうとう捕まってしまうのだけど、警官たちに囲まれたあの状況でナイフを振り回して逃げようとする主人公も違和感バリバリだった。

その直前に、生き残り者の証言を得ているわけだから、ここでもうひと暴れする理由などない。
後は素直に投降して「再審してください」と言えばいいだけだろう。

さらに言うと、主人公が介護施設に行く前後に、かつて主人公と触れあった人たちが、一緒になって主人公の再審を認める署名を始めるのだけど、その理由は「彼はいい人だから」というものだったので、これまたビックリ。

主人公が犯人ではない、という確証があればわかるのだが、単に「彼はいい人だった。そんな彼が人殺しなんかするはずがない」という理由だけで署名活動をするのも変だし、私ならそんな署名活動には賛同しない。

だいたい、建設現場で仲良くなった(?)ジャンプと言われる若いあんちゃんなんて、主人公を警察に密告しようとしていたんだぞ。
そんなヤツが「鏑木は友達だ」などとよく言えたものだ。

そして、その後審査をやり直した結果・・・というのではなく、直前に実際の犯人(というか、こいつは同様の事件を再び起こして逮捕され、供述の中でも最初の殺人事件についての関与もほのめかしている)が捕まったことで、主人公は無罪を勝ち取るのである。

冤罪事件となった袴田事件とは違い、わずか1~2年の間の出来事だから、こんなにスピーディに裁判が行われるというのも、どうなんだろう。

ついでに言うと、劇中のラストに主人公に対する無罪判決が出されるのだけど、それは音声ではなく、傍聴人が一斉に拍手するという形で表されている。
ところが、裁判所での拍手は禁止だそうだ。

これまた、監督はな~んにも調べていないし、考えていないのだろう。

ただ「冤罪は恐ろしい。でも無罪になってよかった」ということだけが伝えたかった映画としか言いようがない。

ということで、役者さんの演技がどうのこうのなんてどうでもいいくらい、とにかくムチャクチャな内容だったので、かえってビックリしてしまった。

当然、評価は「D」です。

おまけで・・・

ラスト近くでの拘置所にいる場面で、面会に来た又貫刑事から「なぜ脱走したんだ」と聞かれた主人公は、「信じたかったんです、この世界を」とか言っていた。

いや、ちょっと何言ってんのかわかんないです。


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