今年一番の寒さである。
姫 が、ご機嫌が悪く、パソコンを打っていると、ベランダの窓を開けてくれという仕草をする。
「寒いよ」と言いながら開けてやる。
寒いことに気がついたのかすぐ戻ってくる。
部屋から、出て行ったと思っていたら、階下へ降りて行く足音がする。
すぐに「ウウー」「ニヤーアア」と腹の底からご機嫌が悪い時の声を出して戻って来た。
パソコンを打っている椅子の下に来て、しきりにズボンの裾を噛む。
「ちょっと待って」と言って、きりの良いところまで打つ。
言葉が通じたのか、じっと私のことを上目使いに見て、静かにしている。
「姫 お待たせ」と言って、椅子から立ち上がると、私が付いて来るのを確かめながら、先にたって階段を降りて行く。
真っすぐに餌のトレーの前に行く。朝から、缶詰は一缶食べているから、お腹は大丈夫と思っていたのだが、まだお腹が空いていたらしい。
「待ってて」と缶詰を開けている間、餌を入れるお皿の前で私の様子をちらちらと見なが待っている。
食べ終わるのを待ち、
「姫 上に行こ」と言うと、お気にいりの桃の箱の中入った。
一段落。
姫 の、こ難しそうな顔。
2008年の春の写真。 殿 はすぐにも散歩に行くのが、解っているらしい顔。
玄関まで、姫 は出て来て、殿 が散歩に行くのを察している。
殿 が帰るまで、塀の上で、外を通る人を眺めながら待っているのが常だった。
殿 が元気で私達も幸せだった頃。
太鼓焼き買ふて巡礼発ちにけり
紅葉かちつ散る香煙をゆらす風
神留守の宮でねの刻きもだめし
星月夜最終便の船の笛