☆ 山茶花の一樹にむすぶ庵かな 長谷川櫂
山茶花の大きな木がある庵である。「一樹にむすぶ」は「一樹に暮らす」とも読める。石川丈山の詩仙堂が思い浮かぶ。
(大呂インターネット句会より)
「俳句自在」から
☆ 朴落葉水面に浮きて動かざる 下村和生
「動かざる」がみえたこと、ここが立派だ。この一語は冬そのものの姿でもある。
☆ 柿熟すおばも熟して九十七 野田省吾
おばあさんを熟柿にたとえた。このいい方が卓抜。
☆ 間引き菜は洗うそばから流れ去る 真板道夫
この句の間引菜は人間界の比喩でもある。逆にいえば人間界を描くにはこうすらばいい。
☆ 秋晴や人形焼の顔を選り 小池沙智知
☆ 生れしより故郷にをり菊の酒 今村武章
ふと気がつけば、ずっと故郷にいる。そうした人の姿が目に浮かぶ。
☆ 柿供へかへらぬ日々にまた涙 橋詰芳子
誰かを悼む句である。「かへらぬ日々にまた涙」という言葉の流れが自然。つまり型どおりではない。
☆ 時かけて十字にひらく椿の実 諏訪いほり
「時かけて」というところが、年齢の賜物。
何年か前の古志のページを繰っていたら、特選句の選評があった。
何げなく読んでいたのだろう。今、読み返すと、いつも師が口を酸っぱく、言っていることが書かれている。
理屈はいけない。思いがこもっていなければ、、、形容詞以外の言葉で。
短い選評の言葉に、これらが込められていた。
咲き満ちて山茶花に翳なかりけり 葉