散歩の途中、
「だだ今待ち時間0分」
なる看板に惹かれて美容院に飛び込む。
散歩の時はいつも夫の持っている小財布をもらい美容院に入った。(財布には 一万円札一枚、千円札一枚、百円玉一個が入っている、これで充分のパーマーしか、かけない)
扉を開けると衝立の向うから男性美容師が顔を出し、
「今日はどうなさいますか?」
「パーマをかけて下さい」
「そこのソフーァにお座りになってお待ち下さい」
誰も座っていない。やったーと思ったのはそこまで。
ここへ来て、散歩の途中に見つけていた美容院だ。別にいつでもよかったのだけれど待つのがいやだから、「待ち時間0分」を見て飛び込んだのだった。
それが、20分ほど待たされて衝立の向う側に行くと、お客は10人以上も鏡の前に座って思い思いに髪を整えている。
それに頭に黒いターバンを巻いて、パーマー液を付けてまっている客が20人はいる。
思わず、鶏小屋を想像した。
美容室は殺気だっている。忙しそうだ。汗をかいている。
スタッフは10人いると言う。駆けずっている。
声を掛け合いながら一番さまは、、、五番さまは、、、とお客の所へとんでゆく。
鏡の前に座り、美容師と少し会話をする。
人が足りないから、今治から急遽応援に駆け付けました。
(マンションへ来て、古くなったエアコンを取り替えた。その時の電機工事の職人さんが、今朝は瀬戸大橋を渡って、広島県の福山から工事に来ました、、、と言っていた。世の中は、どうも人手不足らしい)
客の出入りはひっきりなしで、客足は途絶えない。
これだけ客が入れば、商売も面白いなどと思いながら店の観察を、、、
家庭画報繰る歳晩の美容室
ブロイラー小屋やう歳晩の美容院
加湿器の音のしずかや聖樹の灯
ピンの美容室からキリの美容室まで、お客を退屈させぬように、週刊誌と必ず家庭画報や婦人画報を置いてある。
週刊誌は傷んでいるが、家庭画報の新年号の表紙に折り目を入れたのは自分。
櫂先生の「和の思想」の中で書かれていた、家庭画報や婦人画報に関する(和)の記事がいつものようにページを占めているのを読みながら、一句拾った歳晩の美容院であった。