その昔。 俳句を始めた頃、友人から電話があった。(三十年も前)手当たり次第に俳句の投稿をやっていた。
シクラメンにリストショパンの名札立ち
私の投稿をした句が「稲畑汀子さんの選に入っているよ」と知らせてくれた。
花舗に並んでいる、たくさんのシクラメンの種類に、ショパンやリスト、モーツアルトと名札が立っていた。見たままの素直な句。
それが嬉しかった想い出として残り、シクラメンを見る度に、この句を想いだす。
狭いマンションの日当たりの良い窓辺にシクラメンを置いている。
私の趣味は俳句も、お裁縫もすべてインドアーである。それが最近は頭は働かないというか、感性が欠乏をして何を見ても、心が動かない、はっとしない。家の中では俳句の種は何も落ちていない。
その上に肩凝りが激しく、ちょっと根をつめて裁縫をやると、夜は指が痛くて眠れない。
これから何をやるの? テレビのお守り? 寄る年波に勝てぬ日がこんなに早くくるとは思いもしなかった。
室の花針を数へて縫い納め
悴める指先近所へ救急車
ほのかなる障子明かりの方丈に
繭に籠もるごとやはらかき冬の陽ぞ
シクラメン大玻璃よぎる鳥の影