
昨日は上野のボランティア先の美術館で小学生を対象にギャラリートークを行った後、仲良しの同僚のMさんと駅舎2階に古くからある蕎麦処「ぶんか亭」で昼食を取り、その後は、Mさんも絶賛されていた上野の森美術館で開催中の「シカゴ・ウェストン・コレクション 肉筆浮世絵ー美の競艶展」を、ひとりで見て来ました。
「肉筆浮世絵ー美の競艶展」公式サイト

江戸初期から明治にかけての50人を超える絵師の美人画を中心に見て行くのですが、肉筆画の美しさに改めて驚かされました(他に「京・奈良名所図屏風」や「江戸」鳥瞰図」と言った風景画?等もあります)。
数多く流通した版画に対して、大名や豪商から注文を受けて描かれることもあった1点ものの肉筆画は、画家がその画才のありったけを注いだ渾身の作とも言えます。
そこに描かれた女性の艶かしさ、着物の文様の美しさ、そして時代風俗の面白さ等、本当に見ごたえがありました。
さらに作品によっては、肉筆画の持つ佇まいに合わせたかのように見事な刺繍が施された表装の美しさに目を奪われました(それに比べて額装の味気ないこと)。しかし、展覧会の公式カタログでは、その表装は省かれ肉筆画のみが印刷されていて、正直言って物足りなさを感じました。掛け軸の肉筆画は表装と一体となってこそ、その美しさが際立つのだと再認識した次第です。
今回展示された数ある美人画の中では勝川春章と葛飾北斎が出色で、春章の髪の毛や簾の一本一本まで精緻に描かれた丹精な筆致と、北斎の薄墨で早描きながらも的確に女性の姿態を捉えた見事な形態描写に感嘆しました。
他に定番の喜多川歌麿と、「お前さんは幕末のジェームズ・アンソールかい?」と突っ込みを入れたくなるような奇天烈な河鍋暁斎、さらには着物の粋と艶やかさを、その鮮やかな色遣いと迷いのない大胆な線描で見事に表現した東川堂里風の美人画が印象的でした。
最も気に入った作品は勝川春章の「浅妻舟図」でしが、残念ながら売店でその絵葉書は販売されていませんでした。代わりに同じ春章の「美人按文図」(画像の左下の絵葉書)の絵葉書を購入しました。
因みに画像の右端の大判の葉書は、葛飾北斎の「美人愛猫図」です。北斎の作品では、薄墨で軽やかな筆致の女性の後姿が印象的な「大原女図」が個人的には一番気に入ったのですが、これも絵葉書がなく、展覧会でイチオシの作品らしい「美人愛猫図」の絵葉書を代わりに購入しました。

来日した海外の浮世絵コレクションを見る度に思うことですが、どうしてこれだけの素晴らしい作品群が、生まれ故郷の日本にないのか、と言うこと。かつてそう嘆いて8、000点もの浮世絵を海外で買い付けたのが国立西洋美術館の常設コレクションの礎を築いた松方幸次郎氏で、その浮世絵コレクションは現在、東京国立博物館に収蔵されています。
「肉筆浮世絵ー美の競艶展」、オススメです!