詳しいことはまだ何も公開されていないが、北朝鮮が地下核実験をしたと発表し、多くの国家と国連がとんでもない話だと憤慨している。よくやった、とほめた国があったとはどのメディアも報道していない。北朝鮮を抱え込んでいる中国までが不快であるとのコメントを出している。
インドが核保有国になったため、対抗上、パキスタンが保有国になった。イスラエルは核を秘密裏に保有している疑いが濃厚だ。だから、バランス上、イランがイスラム諸国を代表する形で核保有国になってやむをえないではないか、という主張がでてくる。
北朝鮮が核保有国になったら何が変わるか。中国が東アジアで唯一の核保有国であるという有利な立場を失う。韓国や日本が核保有を目指して突っ走る、という話がまんざら荒唐無稽なものではなくなる。少なくとも韓国や日本、場合によっては台湾までもが、北朝鮮の核の脅威を理由に、米軍の核基地を公然と自国領土内に導入する可能性はある。これらの核は北朝鮮に向けられるが、同時に、中国をも取り囲むことになる。
北朝鮮の存続は中国にとって安全保障の柱である。東ドイツが西ドイツに吸収合併されたように、北朝鮮が崩壊して韓国に吸収合併された場合、米韓条約が存続すれば、中国国境まで米韓合同の戦力が迫ってくる。朝鮮戦争のとき、米軍を中心にした国連軍が北進して中国国境に迫ったとき、中国軍の大部隊が朝鮮半島になだれ込んだ。中国は背後にロシアと中央アジアのイスラム国家、太平洋に面して、アメリカが後ろ盾になった韓国、日本、台湾と向き合うことになる。
そういう銭湯的地政学論議は別にしても、北朝鮮が崩壊すると、まず、難民がなだれ込んでくる。38度線を越えて韓国へ、北の鴨緑江を越えて中国へ。中国ではそれによって中国朝鮮族の人口が増える。韓国は難民の生活を保障し、将来は旧北朝鮮の経済再建という難事業を抱え込む。
とんだはた迷惑な瘋癲国家だが、北朝鮮内部にはそれなりの論理がある。論理の軸は軍である。北朝鮮では軍はすなわち国家である。北朝鮮が崩壊すると軍上層部の特権も消え去ってしまう。したがって軍にとっては現在の体制を守ることが唯一の自己保存の方策である。おとなしくしていれば徐々に周辺大国のいいようにされてしまう。生き延びるためには、一発かましてやるのも方法だ、と軍は考える。
ABCD包囲網でジリ貧に陥った大日本帝国というかつての軍事国家が一か八か的開戦に踏み切ったときと同じような気分に、もし現在の北朝鮮軍部がなっているとすれば、不気味である。
それにしても、「戦後レジーム解体・主張する外交」をめざす安倍晋三日本国首相とその応援団にとっては、おもわぬ追い風が吹いたものだ。
(2006.10.10 花崎泰雄)
インドが核保有国になったため、対抗上、パキスタンが保有国になった。イスラエルは核を秘密裏に保有している疑いが濃厚だ。だから、バランス上、イランがイスラム諸国を代表する形で核保有国になってやむをえないではないか、という主張がでてくる。
北朝鮮が核保有国になったら何が変わるか。中国が東アジアで唯一の核保有国であるという有利な立場を失う。韓国や日本が核保有を目指して突っ走る、という話がまんざら荒唐無稽なものではなくなる。少なくとも韓国や日本、場合によっては台湾までもが、北朝鮮の核の脅威を理由に、米軍の核基地を公然と自国領土内に導入する可能性はある。これらの核は北朝鮮に向けられるが、同時に、中国をも取り囲むことになる。
北朝鮮の存続は中国にとって安全保障の柱である。東ドイツが西ドイツに吸収合併されたように、北朝鮮が崩壊して韓国に吸収合併された場合、米韓条約が存続すれば、中国国境まで米韓合同の戦力が迫ってくる。朝鮮戦争のとき、米軍を中心にした国連軍が北進して中国国境に迫ったとき、中国軍の大部隊が朝鮮半島になだれ込んだ。中国は背後にロシアと中央アジアのイスラム国家、太平洋に面して、アメリカが後ろ盾になった韓国、日本、台湾と向き合うことになる。
そういう銭湯的地政学論議は別にしても、北朝鮮が崩壊すると、まず、難民がなだれ込んでくる。38度線を越えて韓国へ、北の鴨緑江を越えて中国へ。中国ではそれによって中国朝鮮族の人口が増える。韓国は難民の生活を保障し、将来は旧北朝鮮の経済再建という難事業を抱え込む。
とんだはた迷惑な瘋癲国家だが、北朝鮮内部にはそれなりの論理がある。論理の軸は軍である。北朝鮮では軍はすなわち国家である。北朝鮮が崩壊すると軍上層部の特権も消え去ってしまう。したがって軍にとっては現在の体制を守ることが唯一の自己保存の方策である。おとなしくしていれば徐々に周辺大国のいいようにされてしまう。生き延びるためには、一発かましてやるのも方法だ、と軍は考える。
ABCD包囲網でジリ貧に陥った大日本帝国というかつての軍事国家が一か八か的開戦に踏み切ったときと同じような気分に、もし現在の北朝鮮軍部がなっているとすれば、不気味である。
それにしても、「戦後レジーム解体・主張する外交」をめざす安倍晋三日本国首相とその応援団にとっては、おもわぬ追い風が吹いたものだ。
(2006.10.10 花崎泰雄)