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news commentary

国連演説

2009-09-26 00:29:10 | Weblog
国連総会へ始めて出席したリビアのムアンマル・カダフィは、最初はニューヨーク市のセントラル・パークにテントを張って宿舎にしようとした、という。だが、実現せず、つぎに郊外の広大なお屋敷の敷地を借りてベドウィンのテントをたてようとした。しかし、ここでもテント張りの動きを米国のシークレット・サービスが地方検事に通報し、検事がテント張りの中止を命じた。このニュースはおかしかった。カダフィは行く先々でテントを張っているのだそうだ。ニューヨークのテント暮らしは多分、ウォルドルフ・アストリアへ泊まるより高くつくことだろうが、テントで寝泊りすることがベドウィンのアイデンティティーなのだから、月旅行にもテントをかかえて行くことだろう。

そのカダフィが9月23日、国連総会で15分の演説枠をもらったが、持ち時間を無視して延々1時間36分にわたってしゃべり続けたという。イランのアフマデネジャド大統領も途中で席をたったそうだ。

  ちはやぶる神代の声のむなしけれどこ吹く風は紐育の秋

国連総会では1960年に、カストロが4時間29分という広長舌(長広舌)の記録を樹立している。総会ではないが、国連安全保障理事会では1957年、インドのクリシュナ・メノンが約8時間にわたってカシミール紛争でのインドの立場を擁護した。

世界で一番長い演説はたぶん、現代トルコ建国の父・ケマル・アタテュルクが1927年にトルコ議会で行った共和国のグランド・デザインについての演説だろう。6日間にわたり通算36時間31分にわたった。

日本は沈黙をもって金とするお国柄だから、こんなにしゃべる政治家はいない。日本で長時間しゃべり続けた記録の保持者は多分、井原西鶴だろう。俳諧師をやっていたころ、連続して句を詠み続ける大矢数に挑戦して、一昼夜で2万3500句を詠んだそうだ。おそらく空前絶後の記録と言われているが、どんな句を詠んだのか、その記録は残されていない。4秒弱で1句読んだ計算になるので、筆記が追いつかなかったのだろう。

鳩山由紀夫も今回、国連総会で英語で「友愛」を語った。外務省のサイトからその一部を引用すると、

My grandfather Ichiro, then Prime Minister,
was an advocate of the concept of yu-ai,
or "fraternity". This yu-ai is a way of
thinking that respects one's own freedom
and individual dignity while also respecting
the freedom and individual dignity of others.

There is a remarkable resonance between the
concept of the "bridge" in Mamoru Shigemitsu's
address and Ichiro's concept of yu-ai,
or "fraternity".

Now, fifty-three years later, here at the
very same United Nations General Assembly,
I declare with firm determination that
Japan will play again the role of a "bridge".

Mr. President,

Today, the world faces numerous arduous
challenges. This is not an easy era by
any means, but the "new Japan" will
not turn its back on such challenges.
Based upon the spirit of yu-ai,
or "fraternity", Japan will make
utmost efforts to become a "bridge"
for the world, between the Orient
and the Occident, between developed
and developing countries and between
diverse civilizations.

「友愛」に “fraternity” をあてたのだが、OEDをひくと、
fraternityは、

1. The relation of a brother or of
brothers; brotherhood.

2. The state or quality of being
fraternal or brotherly; brotherliness.

3. A family of brothers. Obs. rare.

4. A body or order of men organized
for religious or devout purposes.

5. A body of men associated by some
tie or common interest; a company, guild.

6. A body of men of the same class,
occupation, pursuits, etc.

7. A social association of the students
or alumni of a college or university,
usually having a name

8. Used by Galton for: the brothers (and sisters)
of a family collectively. (1889 F. Galton Nat.
Inheritance 234 A Fraternity consists of the
brothers of a family, and of the sisters after
the qualities of the latter have been transmuted
to their Male Equivalents. )


という男臭の強い言葉だ。

国連開発計画(UNDP)の2008年の統計では、日本は人間開発指数では世界第8位だが、女性の政治経済的活動や意思決定に参画する機会などをもとにしたジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)では、世界58位である。57位はベネズエラ、59位がキルギス。さらに2009年4月現在で、国会議員の中に女性が占める割合は世界134位だった。そういうわけで、いまだに世界から男尊女卑の国だと思われている日本の政治家にふさわしいボキャビュラリー だった。

(2009.9.26)


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うそっぽい、みえすいた話

2009-09-21 20:05:42 | Weblog
民主党政権の新しい外相・岡田克也が核兵器を搭載した米軍の航空機や艦船の日本立ち寄りを認めてきた1960年の日米安全保障条約改定以来の密約について、調査チーをつくり2009年11月末までにその結果を報告させることを明らかにした。せっかくの政権交代だ。そのくらいの掃除は当たり前だろう。

9月21日の朝日新聞によると、この「核密約」のきっかけは、1960年の日米安保条約改定の際の日本政府の間抜けさ加減のせいだったという。

同紙が外務省の複数の元幹部から聞きだした説明によると、60年の安保改定で導入された事前協議制度の日米取り決めの詳細部分に、事前協議が「米海軍艦艇の日本領海・港湾への進入に関する現行の手続きに影響を与えるものとは解釈されない」という文章が入れられた。この文章に基づいて、50年代から核の寄港・通過を自由に行っていた米側は、事前協議に縛られないと解釈した。一方、日本側は寄港・通過が「事前協議の対象」になったと解釈したという。

笑わせてくれるのはそこからで、日本側は「 米海軍艦艇の日本領海・港湾への進入に関する現行の手続きに影響を与えるものとは解釈されない」という文面が、「核」に関わることであると思わなかったというのである。

『朝日』の記事によると、1968年1月、当時の牛場信彦外務次官と東郷文彦北米局長がジョンソン駐日米大使から詳しい経緯の説明をうけ、60年安保条約交渉に担当課長として臨んだ当事者・東郷が、このとき初めて日米の「解釈の食い違い」を知った、のだそうだ。

「核弾頭を持った船は、日本に寄港はしてもらわない」という1963年の池田勇人首相の国会答弁に関連して、当時のライシャワー駐日大使が大平正芳外相に米国側の解釈を伝えている。外務省幹部がこの話を大平外相から聞かされていないわけがなかろう。

情報公開されないように、これらの密約文書を破棄した(と言っている)手際のよい国家公務員がもし知らなかったとすれば、なんとも間抜けな話ではないか。

  唐人にすがる大和の女郎花傘に入れてとない袖もふる

ところで、現在、米国はヨーロッパに配備している航空機搭載戦術核兵器を除くすべての戦術核を米国本土に引き揚げている。太平洋に配備されているロサンジェルス級原潜が以前積んでいた核弾頭つきトマホークも降ろされた。戦略核ミサイルを積んでいるオハイオ級原潜も、そのうち4隻が核ミサイルの装備をはずしている。日本に寄港している「オハイオ」「ミシガン」などがそれだ。

民主党は「核の恐怖のない世界を目指して」と言う文書の中で、「現時点において『持ち込み』の対象となるような米軍の戦術核は、アジアには存在しないとされており、また将来については、我々は戦術核の早期全廃を求める立場である。従って戦術核の寄港・通過が今後問題となるのは、極めて限られたケースであると思われる。しかしこのような限られたケースにおいてであれ、我々は米国政府との間で、核を搭載した艦船等の寄港・通過が日米安保条約に基づく事前協議の対象となることを改めて協議・確認することが重要であると考える。このような事前協議がもたれる場合においても、これを拒否することを原則とすべきである」としている。

とはいうものの、民主党代表の鳩山由紀夫は総選挙前の7月14日夕の記者会見で、核兵器搭載艦船の寄港や領海内の通過については事前協議の対象外とすることを容認する考えを示唆している。こうした民主党の核政策をめぐるぶれとあわせて、いまになって、メディアに過去の密約のいきさつをペラペラ話し始めた外務省幹部OBがいったい何をたくらんでいるのかも、興味津々だ。

(2009.9.21)

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昔から犬が西向きゃ尾は東新顔議員けつのとりかた

2009-09-16 21:00:37 | Weblog
朝日新聞2009.9.16夕刊スクラップ

「さあ、こんなとき、日本人ならどうするか」「かれらはお辞儀をするんだよ」――と言うのが、映画『戦場にかける橋』に出演したアレック・ギネスの大好きなジョークだった。

総選挙後の特別国会が16日から始まり、鳩山由紀夫が首相に指名された。その日の朝8時、国会の正門が開かれると同時に、新顔議員が門前横一列に並んで、議事堂に向かって深々と最敬礼した。



この様子はこの日の朝日新聞夕刊に掲載された。夜7時のNHKニュースでも流された。国会に向かってお辞儀する議員の姿を、『朝日』も『NHK』も、彼らがお辞儀している相手が国会議事堂であることを写真で説明するため、彼らの背後から撮影した。

そこで、読者・視聴者である有権者は、『朝日』の夕刊紙面と『NHK』の映像で、議事堂の建物に礼拝している議員たちののケツを拝まされることになった。

メディアの欠礼。いやいや、新顔議員なんてのは、本会議で決を採るときくらいしか役にたたないものだよ、というシャレなんだろうか。

これからの展開が楽しみだ。

(2009.9.16)
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