Podium

news commentary

脱力の二重価格論議

2024-06-23 14:06:52 | 社会

姫路市が管理する姫路城の入場料を外国からの訪日客を対象に値上げするアイディアを姫路市長が公にした。朝日新聞6月23日朝刊によると「7ドルで入れる世界遺産は姫路城だけ。外国の人は30ドル払っていただいて、市民は5ドルぐらいにしたい」と市長が言った。

観光料金の二重価格である。何十年も前、北京の天壇公園へ行ったとき、入園料は「市民」と「外国人」の二重価格になっていた。この二重価格制度は中国が経済力をつけるとともに廃止された。収入よりも国際的な評判を気にしたせいであろうと思われる。また、メルボルンに住んでいたその昔、市内のチャイナタウンのあるレストランに日本語版のメニューと英語版のメニューがあり、料理の代金が異なっていることを知った。

金が欲しいのなら、「白サギ城」の2重入場料アイディアのような、そんなけちくさいことを考えないで、日本の入国税に相当する「国際観光旅客税」を引き上げればすむ。国際観光旅客税は日本を出入りする旅行者が1回の出国につき1000円の税を払うことを定めている。この金額は航空・船舶料金に含まれていて、航空会社と船舶会社が代理徴収分を国税庁におさめている。

現行1000円の国際観光旅客税を10倍増の10000円に引き上げるとすれば、ちょっとした増収になる。ビジネクラスやファーストクラスの利用者を対象に税額を上乗せすればさらなる増収が期待できる。その税金を国際観光客の急増で困っている都市に対策費として交付すればいいだけの話だ。

どこの誰が、こんなみっともない二重価格のアイディアを姫路市長に語らせたのだろうか?

(2024.6.23 花崎泰雄)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

御破算で願いましては

2024-06-15 22:28:21 | 政治

いつから梅雨に入りいつ頃梅雨が明けるのか。どうもはっきりしないが、6月20日告示、7月7日投票の東京都知事選は確定している。40人を超える人々が立候補を予定しているとメディアが伝えている。賑やかなお囃子にのって現職の小池百合子氏と参議院議員を辞して都政に挑戦する蓮舫氏との争いになると世間は面白がっている。小池氏がこれまでの2期8年、都知事として何をやったか――築地市場移転、東京オリンピック、神宮外苑再開発などをめぐる毀誉褒貶は新聞で読んだが、東京で暮らす人々の日常が、この8年間でどの程度よくなったのか、あるいは悪くなったのか、私にはわからない。蓮舫氏が都知事になって何をしようとしているのか、こちらもよくわからない。

小池―蓮舫対決は都政をめぐって行われる以上に、もっと大がかりな意味がある。

韓国の大統領の任期は1期5年に限られる。台湾総統の任期は4年2期限り、フランス大統領の任期は5年、連続2期まで可能、米国大統領の任期は4年2期まで。ロシア大統領は任期6年連続2期までだが、プーチン大統領が憲法を改正して、2024年からは過去の任期をノーカウントにして、あらたに2期12年とした。中国の国家主席は連続2期までだったが、習近平氏の時代に憲法を修正して任期の制限をなくした。習近平氏は現在3期目の国家主席を務めている。

「転石は苔むさず」という言葉を、肯定的に受け止めるか、否定的に受け止めるか。それは各地の文化や時代によって異なる。国家最高指導者の任期に制限を加えた米仏韓台は権力者のほど良い交代制度を法律で定めた。「さざれ石のいわおとなりて苔のむすまで」とうたってきた日本では公職の期間に制限を定めていない。

そうした事情もあって、日本では古くからの地盤・看板・カバンの3バン選挙を通じて、職業としての政治家の家業化がすすみ、自民党に見られるように、緊張感に欠ける世襲議員たちとそのとりまきが永田町にとぐろを巻いた。

自民党安倍派を中心とした政治パーティー券のスキャンダルを目の当たりにした日本の有権者たちは、日本経済の不振、賃金の低迷、不正規雇用の拡大、学術の賃貸、さらにはこのところの円の弱体化など、そのほとんどが自民党長期政権いすわりと無関係ではないと感じている。

岸田内閣の支持率は低迷を極め、自民党の党勢も大きく陰りを見せている。このところ各地の選挙で自民党は負けを続けている。小池都知事の3選で、何とか負け癖を払拭し、再起のためのカンフル剤にしたいと自民党は考えている。

ということは、小池都知事の3選を阻止できれば、保守政党としての自民党はそのダメージで強度の機能不全に陥り、野党に政権を渡さざるをえなくなる。

この原稿を書いている私のPCは年に1度くらいの割合で帯電して操作ができなくなる。また、部屋の中の家庭用wifi も帯電する。電源コードや機器の接続コードを引き抜いて10分ほど放置する、すると放電の効果で、PCが再び正常に動き出す。

(2024.6.15 花崎泰雄)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

政治ごっこ

2024-06-08 19:36:41 | 政治

かつて南米・ウルグアイに「世界一貧しい大統領」と、その清貧ぶりが国際的な評判になった政治家がいた。大統領在任中も首都モンテビデオ郊外の農場に住み、大統領の給与の多くを学校などに寄付した。ホセ・ムヒカ元大統領。いくつかのドキュメンタリーが作られた。友人から譲り受けたフォルクスワーゲン・カブトムシを自ら運転してして移動、国際会議からの帰国では、知り合いの他国の政治家の専用機に同乗させてもらったりした。「多くのものを必要とする者こそ貧しいのだ」が口癖だった。

ホセ・ムヒカ氏の清貧は政治的パフォーマンスだったのか、彼の信念だったのか。議論のあるところだったが、ムヒカ氏の生活態度は、金に手を汚さないで政治活動を続ける政治家の、マックス・ウェーバーいうところの「理念型」となりえた。「政治には金がかかる」と、政治資金規正法をめぐって合唱した自民党国会議員から見れば、ホセ・ムヒカ氏は「清貧のピエロ」であろう。

日本の岸田首相は、政治的にはレイムダック状態を過ぎ、政治的な死の床に体半分が入ってしまったような状態だ。岸田氏は政治的な危機感知能力に乏しく、危機への対応能力がないことが日本中に知れわたってしまった。

もう、そろそろ、というわけだろうか、菅元首相がさきごろ同じ自民党の萩生田前政調会長、加藤元官房長官、武田元総務相、小泉進次郎元環境相と東京麻布十番の日本料理店で会食した。

菅氏らが自家用車で日本料理店に到着、渋面を作って見せる一方で肩で風を切るといった感じの政治家特有の気負った身のこなしで次々と店内に入って行く様子をテレビニュースが放映した。レストランへの支払い、自家用車の運転手の給与、秘書の給与、ガソリン代、などの経費はどうなるのだろうか、と気にかかる。レストランへの支払いは割勘だろうか、だれかのおごりだろうか。金の出どころは議員歳費だろうか、政策活動費だろうか。議員会館の空き部屋で、食堂からざるそばでも取って、渋茶をすすりながら清貧の政治的論議はできないのだろうか。

いやいや、それでは彼らに気の毒だ。幼いこどもがままごと遊び(今でもやっているのだろうか?)に熱中するのと同じように、日本の(それに世界の沢山の)政治家は政治ごっこが好きなのだ。これ見よがしに権勢を肩に担ぎ、同業者や世間の耳目を集めることで快感をえているのだから。

議員が使える様々な経費を有効に使って政治的パースペクティブを広げ、政治哲学を深め、それを選挙区で訴える議員は少ない。さまざまな手法でかき集めた資金を選挙区の支持培養費に充てる議員は多い。これからの日本は働く人口が減り、高齢者が増え、消費は伸びず、企業などの生産性の飛躍的な伸びも期待できなくなる。縮む日本にふさわしいじり貧経済における公正な再分配の手法――新しい資本主義――は、ボスが集う高級レストランのメニューには載っていない。

(2024.6.8 花崎泰雄)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

梅雨入り前の感傷

2024-06-01 21:54:16 | 政治

このところ失笑させられることが多い。たとえば北朝鮮が韓国に飛ばした"風船爆弾“。大型の風船に廃棄物や汚物を結び付けて、北朝鮮国内から38度線を超えて韓国領内に送った。飛んできた風船の荷物の廃棄物から細菌やウイルスが出てきたという報道は今のところない。卵をにくい相手に投げつける憎悪の表明の国際版だが、双方の憎悪が高まれば、廃棄物・汚物が銃弾・砲弾に代わる可能性がないわけではない。韓国と北朝鮮は38度線をこえて、宣伝用印刷物などを相互に風船で飛ばし合ってきた。ある意味で毎度のことの延長線上の行為である。別の意味では、いいおとながこどもだましのような侮蔑の交換をしていることに唖然とする。政治というものはそんなにこどもっぽいものなのだろうか。

米国ではバイデン現大統領を相手に、11月の大統領選挙をあらそうトランプ前大統領の不倫口止め料に関連する裁判で、陪審員がトランプ氏に有罪の評決をした。このコラムの筆者が若いころには、米大統領はWASPで、離婚歴がないことが当選の条件とされていたが、この半世紀で米国社会の雰囲気はだいぶ変わってきたようだ。トランプ氏が元ポルノ女優を相手にした不倫は事実であり、彼女に口止め料を支払ったことも事実である。その支払いの手続きに違法性があったことが今回の裁判の焦点だった。その裁判の有罪評決を魔女狩りだの、腐敗した判事の策謀だと公言し、真の評決は11月の大統領選挙で国民が出す、とトランプ氏は支持者に語りかけた。米国から太平洋で隔てられた日本に伝わってくる断片的な情報から判断すれば、トランプ氏は歴代米国の大統領の中でも知性を研磨することの少なかった1人であるように見受けられる。考え方は自己中心的で、自らの存在を異様に増幅して認識している張子の虎のようなものである。トランプ氏が前回当選したとき、「核のフットボール」とよばれる黒いカバンをどうやってトランプ氏の目につかないようにするか、という議論があった。彼は情緒不安定な人物であると、米国人の半分が考えており、残る半分は彼こそ最高の大統領であると信じている。第2次大戦後の米国の外交政策にはベトナム戦争を始めおかしな点が多々あったが、その自己中心的な米国民衆の錯乱がトランプ氏の周りで渦を巻いている。これは止めて留められるようなものではい。静まるまで待つしかないのだが、その時まで、世界の情勢が小康状態を保てるかどうか、不安がある。

日本では、自民党の岸田首相が公明党の山口代表、日本維新の会の馬場代表と会談、今の国会で政治資金規正法の成立させるために妥協した。次の総選挙で自民党が惨敗する可能性があり、その時は自民・公明・維新で連立政権を組み、政権内部でおいしい思いをしようと計算しているのであろう。クリーンな政治は大切だが、まずは権力の座を狙うのが、政党が目指すところであるという、伝統的な政治学が教えるところだ。その代わりにといってはなんだが、有権者諸君は定額減税で夏休みをお楽しみあれ、というのが岸田首相の思い付きである。

   世の中をなににたとへむ朝ぼらけ漕ぎゆく舟のあとのしら浪 (拾遺集)

 

(2024.6.1 花崎泰雄)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする