Podium

news commentary

籠池デー

2017-03-23 23:57:57 | Weblog

 

3月23日は「籠池デー」だった。

 右翼愛国教育を旗印にする森友学園「瑞穂の國記念小學院」(一時期は「安倍晋三小学校」を標榜)をめぐる国有地の払い下げ問題や、学校設立準備中に安倍晋三総理大臣夫人の安倍昭恵氏から「安倍晋三からです」と100万円の寄付を頂いたと発言していた、同学園理事長(理事長退任をすでに表明)の国会証人喚問が午前中は参議院で、午後は衆議院で行われた。また、そののち、籠池氏は午後6時過ぎから外国特派員協会で記者会見に応じた。

 午前中の参院喚問は自宅のテレビで、午後の衆院喚問はスポーツクラブのトレッドミルなどについているディスプレーでNHKの中継を見た。シャワーを浴びて自宅に帰り、今度はPCのインターネット中継で特派員協会での記者会見を見た。

 国会審議で野党がさんざん籠池氏の参考人招致を要求しても、与党は応じる気配を見せなかった。籠池氏が「安倍昭恵氏から100万円の寄付をいただいた」と発言した途端に、自民党は籠池氏の証人喚問を提案し、野党と合意を見た。証人喚問は参考人招致と違って、宣誓の上で証言し、偽証すると刑事罰が待っているという厳しいものである。

 去る3月17日の衆院外務委員会で、日本維新の会の足立康史議員が、仮に寄付をしていたとしても(寄付は選挙区外のことで、公職選挙法上は何ら問題ではなく)教育への寄付はむしろ美談ではないか、と発言した。足立氏は本気だったのか、冗談で言ったのか、よくわからなかったが、その足立発言に対して、安倍首相が要旨次のように答えた。妻は名誉校長をしていたので寄付することもありうるから確認をとったが、寄付はしていないということだった。寄付して悪いわけではないが、寄付していないからしていないと答えている。

 安倍昭恵氏が仮に100万円を寄付していたとしても、寄付行為には問題ないと、安倍首相も考えているわけだ。

 それでは、なぜ、与党自民党は籠池氏を証人喚問したのか。まさか自民党議員が野党と組んで、安倍政権打倒を目指すわけはないから、安倍晋三からですと首相夫人から寄付金100万円をもらったという籠池発言が、政府与党に激しい衝撃を与えたのだろう。

 では、どんな衝撃か。安倍首相は森友学園への国有地格安払い下げに関して、すでに国会で、首相も首相夫人も関わっていない、もし関わっていたら首相も国会議員も辞任する、と啖呵を切っている。籠池氏をこのまま野に放置して、吠えつづけさせるわけにはいかなくなったのである。緊急籠池対策が必要になった。

 そういうわけで、たとえば参院の証人喚問ではこわもての自民党・西田昌司議員が、籠池氏が言っている内容は、安倍首相や安倍昭恵氏が言っていることに反するので、うその証言をすると罪に問われますぞ、と強く念を押した。同時に衆参の与党議員は質問を通じて、小学校認可申請をめぐる籠池氏の詐欺師的策略を、テレビ中継を見ている人に強く印象づけようと試みた。

 仮に、籠池氏が詐欺師であったとすれば、この一件はこういうことになる。右翼で愛国者を名乗る詐欺師が立てた小学校設立計画に、国家主義者の安倍晋三首相が、一時期ではあるが、森友学園について、すばらしい教育をしていると聞いていると発言し、また、首相夫人が一時期ではあるが、その名誉校長を名乗り、くわえてその詐欺師が安倍晋三からだと言うことで、安倍夫人から100万円の寄付金をもらったと広言する。つまり、首相夫妻が詐欺の被害者だった、という間の抜けた話になる。だが、一国の首相が間抜けで困るのは国民である。

 偽証は罰されますぞ、と警告された籠池氏だが、間違いなく100万円の寄付を受けていると言い張った。偽証罪を問われることもある証人喚問での籠池発言は、日本国首相その他に守られた夫人の言い分より重い、と思った人は少なくなかったであろう。

 夕方からの外国特派員クラブでの記者会見で、籠池氏は、ある時期、神風が吹いたように学校設立計画が進み、最後の段階で、その風が強い逆風に変わって計画がとん挫した、と背後に大きな力があったのではないかと推測した。

 そういうことで、23日には早速、民進党が安倍昭恵氏の証人喚問を求め、籠池氏と同じ立場で森友学園との関係を聴いてはどうかと言い出した。証人喚問で籠池氏の口封じをしようとした自民党のやり方は、いってみればヤブヘビだった。

 小学校開校が不可能になり、学園の幼稚園は差し押さえを受け、やがて多額の債務に苦しむことにもなるであろう籠池氏が、安倍首相夫妻と抱き合い無理心中を図ろうとしているようにもみえた。

 

(2017.3.23  花崎泰雄)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「問題ない」は条件反射?

2017-03-21 22:59:57 | Weblog

 主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明に、これまでは盛り込まれてきた「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文言が今回は米国の抵抗で削除された。このことについて、日本国の菅義偉官房長官が3月21日の記者会見で、「問題ない」と発言した、と日本の新聞各紙が伝えた。

菅氏から見れば「問題ない」問題なのだが、G20に集まった各国の財務相・中央銀行総裁は、侃々諤々の議論をし、挙句のはてに、内に忸怩たるものを持ちながらも、米トランプ政権の横車を入れたのである。

菅官房長官の「問題ない」発言を不見識とする意見もある。菅氏が国際政治や国際経済に優れた見識持っているかどうかはさておき、彼は永田町における自分の役目に限って言えば、十分な見識を持っている。

麻生太郎財務相(副総理)が現地バーデンバーデンで、「反保護主義」が盛り込まれなかった点に関して、「『毎回同じこと言うな』って言って、次のとき言わなかったら『なんで言わないんだ』という程度のもの」と説明(日経新聞)している以上、麻生コメントを否定するような発言を控えるのが役目柄というものであろう。官房長官は閣内融和の要である。

菅官房長官は3月14日の記者会見でも、稲田朋美防衛相が2007年に学校法人「森友学園」が起こした民事訴訟に原告側代理人弁護士として出廷したことを示す記録が見つかったことについて「個人的な活動に関することなので政府としてはコメントを差し控えたい。稲田氏から適切に説明されると思う」と述べるにとどめた。稲田氏の進退に関しては「まったく問題ない」とした。(3月14日、産経新聞電子版) 

稲田防衛相は安倍総理大臣のお気に入り閣僚なので、稲田氏を擁護することが安倍首相擁護につながる。

とはいうものの、菅官房長官の定例記者会見での「問題ない」の多発に、気を悪くしている国民もいると見えて、インターネットの世界をのぞくと、菅官房長官の「問題ない」というコメントをメディアの報道から集めた書き込みがあちこちにあった。そのいくつかを拾い読みしていて、筆者の頭の中にも過去の発言がよみがえってきた。

菅官房長官自身の政治資金集めパーティーで同氏の事務所が白紙領収証のやり取りをしたことについて、官房長官が「問題ない」(2016年10月)。望月環境相の政治資金めぐる問題でも、「返金しており、全く問題ない」(2015年2月)。宮沢経済産業大臣が過去に代表を務めていた自民党の支部が、外国人が株式の過半数を保有する企業から献金を受けていたことについて、事実が判明したあと、すぐに返金して適正に処理しているとして、「問題ない」(2014年10月)。原子力規制委員会の委員に就任予定の田中知・東京大工学部教授が、原子力関連事業者から今年前半まで報酬を受け取っていたことについて「いずれも少額で、また専門技術委員の立場から助言を行うような内容であり、委員に就任するうえで全く問題ない」(2014年7月)。百田尚樹・NHK経営委員の個人的発言「南京虐殺は無かった」発言について「は問題ない」 (2014年2月)。NHK籾井会長の「戦争地域ではどこでもあった」という慰安婦問題についての発言も「問題ない」(2014年1月 )。米国の諜報機関の各国首脳の電話盗聴の件で、安倍首相の携帯電話は大丈夫かと聞かれ「問題ない」(2013年10月)。

まあ、ざっとこんな調子である。政権に降りかかる火の粉を払うのは官房長官の役目だろうが、ここまで来ると、定例会見での記者の突っ込み質問に、梅干しを見ると唾が出るような条件反射で「問題ない」と答えているようにも思える。

(2017.3.21 花崎泰雄)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一国資本主義

2017-03-04 00:12:25 | Weblog

 アメリカ合衆国のトランプ大統領が2月末日、米議会上下両院の合同会議で演説した。日本の新聞が伝えるところでは、国防予算の増額やオバマケアの撤廃、法人税減額などの税制改革とともに、メキシコ国境での壁建設開始を強調した。

トランプ大統領は打ち上げ花火のように思いつきの政策目標を次々に打ちだして人気を煽り、大衆からの喝采に酔いしれる自己陶酔型の人物と、大統領とその側近が敵視する米国の主流派メディアは酷評する。

日本のテレビやアメリカのCNN、イギリスのBBCが流す映像では、トランプ大統領はいつでも自ら拍手して聴衆の拍手を煽っている。ペンス副大統領もポール・ライアン下院議長もトランプ大統領と一緒に立っているときは、大統領に拍手をおくっている。メキシコと米国の国境に壁を張り巡らし、その建設費用をメキシコに払わせるというアイディアに、副大統領も下院議長も拍手喝采してきたのだろうか。

それはさておき、国境の壁の建設費をどうやって捻出するか、具体的な方法論なるといまだに状況は混沌としている。

国境の壁の建設はフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策・テネシー川流域開発ほどには雇用促進の効果は出ないだろうが、それでも1兆円を超える費用がかかるそうだ。

この金額をメキシコ政府あての請求書に書き込んだところで、メキシコがこれを支払うことは100パーセントない。日本の安倍政権の対米インフラ投資やソフトバンクの雇用協力資本を回すこともできない相談だろうから、結局、米国自身が払うしかない。

トランプ大統領はメキシコからの輸入品に税金をかけると言った。

日本の関税法では、関税を納める義務がある者は、通常、貨物を輸入する者と規定している。つまり荷物の受取人が関税を払うのである。

この制度は米国でも同じとみえて、メキシコからの輸入品に課された税金を払うのはアメリカの輸入業者である。アメリカの業者はこの税額を商品の価格に反映させるので、最終的にはアメリカの国民の財布からの支出となる。連邦政府が予算から支出しないというだけのことである。

このような手品はすぐバレてしまうえ、メキシコ製品への関税についてはWTOの協定違反になる可能性が大きい。

そこで、「国境税調整」という共和党のアイディアに乗って税制改革で建設費を捻出する策に、トランプ大統領が乗り気だと報道されている。

国境税調整というのは、一口で言えば、米国内に生産拠点を置く企業の輸出には税制上の優遇措置を与え、米国外に生産拠点がある商品の米国内販売には税制上きびしく対応する方式の法人税の扱いである。

これもまた、新手の輸出補助金の疑いで、WTOの場で問題になる可能性が大きいそうだ。

だが、アメリカ・ファーストの「一国資本主義」を声高に叫ぶトランプ政権は、WTOの決定がアメリカの主権を侵害する場合はその決定に従わない方針である。、最新のニュースがそう伝えた。

米国がWTOの決定を無視すれば、あらゆる国が自国に不利なWTOの決定を無視するようになり、WTOがTPPと同じ運命をたどることになる。

(2017.3.3  花崎泰雄)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする