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news commentary

スプラトリー

2015-10-27 20:13:40 | Weblog

米第7艦隊の横須賀基地所属のミサイル駆逐艦ラッセンが日本時間10月27日、スプラトリー諸島の中国埋め立て現場の12カイリ内に入った。中国の領有権を認めないというデモンストレーションである。

米海軍の艦船が中国の人工島から12カイリ以内の海域に入る示威行動の計画は以前から報道されており、10月初めには、準備完了、あとはオバマ大統領の指示を待つだけ、と米海軍に近いメディアが報じていた。それを受けて、日本のメディアもスプラトリー報道をフォローし始めた。

どうなる事やら。といっても、ケネディー・フルシチョフのカリブ海対決の時ほどのびっくり感はない。スプラトリーをめぐる米中の押し問答は、徐々に徐々にレベルを上げて来た。

したがって、緊張の高まりが緩慢に進んできた間に、米中は互いの打つ手を読みあって、互いの国内事情を慮って弱腰は見せず、といって、抜き差しならない事態に至る前に、ほどよい時が来れば落としどころを見つけようという、暗黙の了解の見通しも持っているだろう。

ところで、アメリカは日本の自衛隊にも現場への同行を依頼してくるのだろうか。あるいは日本が率先して同行を申し出るのだろうか。

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ユネスコ分担金

2015-10-15 17:31:27 | Weblog

ユネスコが南京事件の資料を記憶遺産として登録すると決定したことで、日本国政府・与党の幹部が憤慨し、ユネスコへの分担金支払いを停止すべきだと、と言っている。

大人げない話である。

ユネスコの世界遺産リストに載った名前など、知っているのは当事国の人や一部好事家くらいだろう。指定されて、一定の時間が過ぎてからもなお喜び続けているのは、観光関連の仕事に携わっている人たちくらいであろう。

東寺百合文書が記憶遺産に登録されたが、日本人のうちどのくらいの人がこの古文書について知っていただろうか。その古文書を仕事に役立てている人にとっては、記憶遺産のお墨付きをもらったからといって、仕事のステータスが上がるわけでもないだろう。

ユネスコの遺産などその程度のものである。分担金支払いをやめるなら、合わせてこれまでに指定や登録を受けたユネスコの「遺産」をつき返して抗議する手もある。

小泉首相は2006年の南京大虐殺に関する答弁書で「千九百三十七年の旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害又は略奪行為等があったことは否定できないと考えている」と述べた。

「非戦闘員の殺害又は略奪行為等があった」のだが、南京事件の記録文書のユネスコ記憶遺産登録はけしからんと言っているのだ。

中国では30万人虐殺説が支持されている。日本ではそれは法外な数字だとされている。10万程度、数万程度、せいぜい数千、南京事件などなかった、などの諸説が日本では流通している。

日本国政府の最高責任者が国会の答弁書で「あったことは否定できない」と明言した一方で、現在の日本国政府が不満を表明するのは、その殺害・略奪等の規模が問題なのであろう。

恥辱の大きさは残虐行為の規模に比例するか?

アメリカ合衆国がベトナムで戦争を続けていた1968年に、W. カリー中尉が率いる米陸軍歩兵小隊が、ソンミ村の集落を襲い、住民500人余を殺した。この事件はやがて暴露され、ソンミ事件として、ベトナム戦争の推移に大きな影響を与える世界的なスキャンダルになった。19世紀の終わり、アメリカ合衆国の第7騎兵隊がウーンディッド・ニーでネイティブ・アメリカン(当時はインディアンとよばれていた)200-300人を殺した事件以来の米軍による大規模な非戦闘員の虐殺事件だった。

(2015.10.15 花崎泰雄)

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ノーベル賞

2015-10-07 14:03:45 | Weblog

医学生理学賞に次いで物理学賞でも日本の科学者がノーベル賞の共同受賞者になった。そのニュースを伝える日本の新聞――といっても、年金生活に入った今では購読する新聞は朝日新聞だけになったので、具体的には朝日新聞の事だが――の記事には、がっかりさせられた。

たとえば、10月7日朝刊1面トップの受賞記事だが、リード部分で「スウェーデン王立科学アカデミーは6日、今年のノーベル物理学賞を東京大学宇宙線研究所の梶田隆章教授ら2氏に送ると発表した」とあるにもかかわらず、以後1面本記は梶田教授に関わる事ばかりを説明し、ようやく記事の終わりの部分で共同受賞者であるカナダ・クイーンズ大学名誉教授のアーサー・マクドナルド名誉教授の名前と業績が短く紹介されただけである(記事の行数にして7行ほど)。

つまり、日本人以外の人が受賞すれば新聞記事としての値打と扱いはこの程度ということなのであろう。それが、受賞者が日本人となれは、日本人が単独受賞したのかと錯覚するほど、記事が一気にインフレーションを起す。ちなみに、カナダの『トロント・スター』を電子版で読むと、こちらは逆に、マクドナルド教授におおいに焦点を当てた記事になっている(ただし、日本の朝日新聞ほど他の共同受賞者を無視しているわけではない)。日本人は日本人以外に興味がなく、カナダ人はカナダ人以外に興味がない、というのがこれらのメディアのスタンスなのであろう。

ノーベル賞もオリンピックと同じメダル争いだから当然のことなのであろうが。

そこで、受賞者の国籍に関係のない第3国の新聞――たまたまジャカルタの英語日刊紙『ジャカルタ・ポスト』――をそのサイトで見たのだが、記事はAPを使い、共同受賞した両氏の業績をバランスよく淡々と紹介していた。それで十分だ。

(2015.10.7 花崎泰雄)
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