Podium

news commentary

これやこの

2024-11-21 13:08:38 | Weblog

パンドラの箱を2度もあけてしまったアメリカの大衆。馬鹿とハサミは使いようと負け惜しみを言ったところで不快はおさまらない。

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予告

2022-03-25 23:23:11 | Weblog

ロシアがウクライナに侵攻して以来、ブログの更新が途絶えています。

4月から気をとりなおして再スタートします。

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お答えいたします/長寿のマントラ

2019-11-28 20:10:07 | Weblog

じゅげむじゅげむごこうのすりきれ……………そもそも桜を見る会は1952年に首相主催の行事として始まったまったもので、各界の功労者の慰労を目的として続いてきました。結果として、今では反社会的勢力の人、選挙カーのウグイス嬢、政治家後援会の皆さま方の参加が増え、選挙目当ての会になっているとのご批判をたまわっていますが、詳細は首相のセキュリティーや参加者の個人情報にかかわるので、詳しいことは控えさせていただきます。また、招待者リストはすでに適正に処分し、電子データも適正に消去し、その復元が可能かどうかについては聞き及んでいませんが、政府としては適正に処理したものと判断し、復元について検討する考えはございません。

かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつ…………それにしても、首相や内閣官房長官の盾になって、苦し気に中身のない答弁をお経のように繰り返している政府委員の高級官僚はかわいそうだ。野党委員に、あなたはいらない、私は総理に聞いているのだ、あなたはいらない、と代弁を制止される姿を国会中継で家族の方が見たらほんとうに暗い気持ちになるだろう。ああ、お、お父さんが……。

くうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじ…………安倍首相の妻が桜を見る会の招待者について意見を言ったというご指摘もあるが、首相の妻の意見は首相を通じて首相の意向となり、首相の意向は招待する方々を最終的に決定する内閣府によって内閣府の判断となるのであって、首相とその妻による桜を見る会の私物化という言い方は適切でない。

ぱいぽぱいぽのぱいぽのしゅーりんがんしゅーりんがんのぐーりんだいぐーりんだいのぽんぽこぴーぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ…………ホテルで開いている安倍晋三後援会主催の桜を見る会前夜祭は、主催者は後援会であるが、会費は参加者がおのおの直接ホテルに支払っており、後援会は金の出入りに関与していない。明細書も領収書もない。安倍晋三首相は夫婦で会合に現れて挨拶し乾杯したが、会費は払っていない。安倍首相は事実上ホスト役をつとめたように見受けられるが、実は、安倍晋三後援会主催の桜を見る会懇親会にゲストとして参加したとみなされる。ロバート・ルイス・スティーブンソンの『ジキル博士とハイド氏』。あれですよ。

なーんだ、もう会期末かぁ。

     (2019.11.27 花崎泰雄)

 

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イギリス議会下院4度目の正直解散

2019-11-10 20:43:30 | Weblog

ヨーロッパ連合(EU)からの離脱をめぐって、この3年ほど政治的漂流を続けてきたイギリス議会下院がついに11月6日に解散した。12月12日投票の総選挙を目指す。ジョンソン政権はそれまで3回にわたって解散の動議を下院に提出したが、ことごとく否決されてきた。4度目の解散動議で、野党労働党が賛成に回ってついに解散が議決された。

イギリスでは、その昔、国王が議会解散権を握っていたが、その伝統が首相に引き継がれ、首相が与党に都合のいいように、恣意的に議会解散と総選挙をおこなってきた。

そういう慣行は時代錯誤だとの批判を受けて、イギリス議会下院は2011年に議会任期固定法を成立させた。この法律によって①内閣不信任決議の可決された場合②下院で3分の2以上の多数で解散を決議した場合を除き、議員の5年間の任期を固定した。

イギリスでは解散はもはや首相の専権事項ではなくなっていたのである。

自動車の道路左側通行と議院内閣制をイギリスにならって採用している日本だが、この時以来、日本国首相の専権事項とされる「解散権」に批判的な意見が目立つようになった。

日本の衆議院は戦後20回以上解散しているが、そのほとんどが「7条解散」である。憲法第7条には、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」とあり、その第3項で「衆議院を解散すること」としている。

これは、内閣が衆議院解散を決断してこれを天皇に告げ、国民の象徴である天皇が国民に告げる儀礼を定めたものである。また、憲法第7条は憲法改正を交付することを天皇の国事行為の一つとしているが、公布にあたっては内閣の助言と承認が必要であり、内閣が助言と承認を行うには、国会での発議と国民の承認が前提になっている(憲法第96条)。

同様の論理をたどれば、第7条にもとづいて衆議院を解散するには、その前提として、衆議院で内閣不信任が可決された場合は、10日以内の衆議院解散か、内閣総辞職をしなければならない、という第69条の条件を満たす必要がある。69条の定めによって内閣が衆議院解散を決意し、これを天皇に告げ、天皇が衆議院解散を発表する手順となる。

かつて、第7条による解散は政府の憲法違反行であると訴訟を起こした例があるが、最高裁判所は「統治行為」であるとして、判断を避けた。国会あるいは国民が判断すべきだという考え方である。だが、統治行為論という重い言葉にふさわしい7条解散はさほど多くなく、多くは首相と与党のご都合による解散だった。それを許したのは、解散は首相の専権事項と与党幹部が音頭を取り、解散権を行使する首相を、印籠を振りかざす誰かさんを見るような何の疑いも持たない、お祭り気分の有権者が多かったからだ。

日本国憲法で政府が衆議院を解散できる条件を定めた条文は69条しかない。論理的に欠陥があり、政治的には恣意的に利用される7条解散であっても、議員たちは議場で「バンザイ」を叫んできた。議席を失う議員たちの悲鳴であり、やけくその叫びだと解されてきたが、それにしても、なぜ、このような7条解散がまかり通っているかといるのだろうか。

大日本帝国憲法の第7条は「天皇ハ帝国議会ヲ招集シ其の7開会閉会及衆議院ノ解散ヲ命ズ」としていた。日本人の心証はここらあたりからまだふっ切れていないのであろう。

(2019.11.10 花崎泰雄)

 

 

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夏休み

2019-07-26 23:03:11 | Weblog

 

Podiumは8月末日まで夏休みに入ります

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お使い小僧

2019-06-23 21:01:28 | Weblog

5月下旬、トランプ米大統領が国賓として日本を訪問し、相撲を見たり、日本の天皇に会ったり、安部日本国首相とゴルフをしたり、暇をみて首脳会談をしたりした。

そのあと、6月に入って安倍首相が、おそらくトランプ大統領の意を受けて、イランを訪問して、ロウハニ大統領や最高指導者のハメネイ師とあった。かっこよく仲介の旅と銘打ったのだが。

そのさなかの6月13日、ホルムズ海峡付近で日本のタンカーが攻撃を受けた。襲撃の犯人は誰か。正確なことはまだわかっていない。安倍首相のイラン訪問の最中に日本のタンカーを攻撃して、そのことで得するのは誰か。それもまだわかっていない。

そのあと、トランプ米大統領がイラン攻撃を命じた。しかし、攻撃開始の10分前にトランプ大統領が攻撃を中止する命令を出した。イラン攻撃は本気だったのか演技なのか、それもまだわからない。

安倍首相がイランを訪問して2人のイラン指導者と面談して、どのような結果になったのか、詳しいことは明らかになっていない。安倍首相が2人のイラン指導者から感じた、対米交渉についてのニュアンスは、もちろん公に語られていない。

何かしら重要なヒントでも得ていれば、安倍首相は仲介者として米国に飛び、トランプ大統領に直接説明していただろう。それがなかったということは、アメリカ・イラン仲介の旅は空振りに終わった可能性が高い。

彼はイランへ何をしに行ったのだろうか? 例によって、外遊に決まっている。

 

(2019.6.23 花崎泰雄)

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居眠り

2019-06-10 23:57:04 | Weblog

先ごろ秋田市で行われた「イージス・アショア」の住民説明会で、防衛省の職員が居眠りをしていたととがめられた。

東北防衛局長が謝罪し、防衛大臣が「不適切だった」ことを認め、内閣官房長官が「緊張感を持って」と叱咤した。防衛省は居眠りをした職員を口頭で注意した。

秋田県知事は新屋演習場を「適地」とした防衛省調査に誤りあったことで、「話は振り出しに戻った」と述べた。

過去の黒海の予算委員会審議国会中継で、野党議員の質問を子守唄にして、大臣席でウトウトしている姿が何度も写しだされている。

不適切だったと認めた人はいなかった。緊張感を持ってといった人もいなかった。厳重注意した人もいなかった。

(2019.6.10 花崎泰雄)

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Elections

2019-05-28 22:17:09 | Weblog

トランプ米大統領への饗応接待のドタバタ4日間で、「鹿鳴館外交」という明治のエピソードと、 “There is nothing to eat, but please eat the next room.” という笑い話を思い出した。何の脈絡もないのだが。

米大統領が日本を去った5月28日の朝日新聞朝刊4面に、面白くもばかばかしい囲み記事が載った。

「トランプ大統領は、ツイッターで日米貿易交渉について『多く(の成果)は7月の選挙後まで待つ』と投稿した際に、『選挙』を『elections』と複数形で表記した。これに対し、野党からは『衆参同日選を意味しているのか』との臆測が飛び出した」

永田町の面々は夏の衆参同日選挙があるのではないかとピリピリしている。緊張感がたかまり、ちょっとした物音で暴走が始まりそうな気配である。

朝日の記事によると、共産党の小池晃書記局長は、いつから解散が米大統領の専権事項になったのか、とこれまたツイートしたそうである。Elections なら衆参同日選挙ということになり、衆院が解散されていることになる。

立憲民主党の枝野幸男代表は、もし首相が、誰よりも先にアメリカの大統領に解散するかどうかを話していたとしたら、おかしな話だ、と指摘。

国民民主党の玉木雄一郎代表も、複数形になっているので参院に加えて衆院か、という話が出ている。7月と明確に言っているので、国会会期の延長はないのかな、と語った。

議員たちのドタバタを紹介したあと、朝日の囲み記事は最後に「英語の表現では、国の議会選挙は単数形のときも複数形のときもある」とタネを明した。

一犬虚を吠ゆれば万犬実に伝う。

ツイート政治は危ない、危ない。

 

(2019.5.28 花崎泰雄)

 

     

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劇場国家

2019-04-30 21:40:56 | Weblog

ドイツ、イタリア、日本で、ナチズム・ファシズム・軍国主義が政治権力を握った1930年代に、アメリカ合衆国の政治学者チャールズ・メリアムが『政治権力――その構造と技術』(邦訳は東京大学出版会)を書いた。

メリアムは同書の中で、権威主義的政治権力は2つの基盤に立っていると説明した。「ミランダ」と「クレデンダ」である。

ミランダは国家、国旗、巨大な記念碑・構造物、権力にまつわる神話や荘重な儀式、軍服のような画一的な制服といった、理性を超えた崇拝心をかき立てる装置の事である。ヒトラーが世界に冠たるドイツ民族とその頂点に立つヒトラー自身の優越性を誇示しようとした1936年のベルリン・オリンピック大会がミランダの好例である。

クレデンダは「イデオロギー」のような理論的な(合理的であるかどうかは別にして)装いをまとった信条をいう。軍国主義時代の日本の「八紘一宇」やナチスの「アーリア民族の優越性神話」などがこれにあたる。権威的政治権力はミランダとクレデンダを巧みに使って、国民の崇拝感情をあおり、権力維持に利用してきた。

1930年代には時代を反映した政治理論だったが、現在ではマイナーな理論になっている。というよりも、権力者が用いるシンボル操作のなかの初歩的な技術の1つになっている。

訪米した日本の安倍総理大臣がアメリカのトランプ大統領に、新しい天皇の即位はスーパーボウルの100倍以上の行事だと言ったそうだ。天皇交代、元号変更、トランプ大統領訪日という一連のイベントを日本の首相は「ミランダ」として利用する。

このようにミランダとクレデンダは、政治権力が自らの権力基盤の強化や永続を目的に利用するものであるというのが政治学の通念だが、これとは逆の理論もある。

クリフォード・ギアツというアメリカの文化人類学者が書いた『ヌガラ――19世紀バリの劇場国家』(邦訳、みすず書房)は米国で出版された1980年から日本語訳が出た1990年以降にかけて、大きな話題を呼んだ。この本の第1章に、当時あまりにも有名になった次の言葉がある。

「王と君主が興行主になり、(ヒンドゥーの)僧が監督を務め、農民が脇役・舞台装置係・観客になる劇場国家だった」。19世紀のバリでは島内が多くの小王国(ヌガラ)に分れていた。それぞれのヌガラで外国人の目に異様に映ったのは儀礼と祝祭の多さだった。大掛かりな君主たちの火葬の儀式、ヒンドゥー寺院への奉納などに多くの富が費やされた。しかし、それは政治的な目的のためにおこなわれた行事ではなかった。行事遂行自体が目的だった。そのために国家(ヌガラ)があった。社会的不平等・抑圧もあったが、不満は政治に向けられることはなく、壮麗な祝祭のなかで昇華され、浄化されるのがバリのヌガラ社会のありかただった。「華麗な行事のために権力があった。権力のために行事があったのではない」。ヌガラの仕組みをギアツはそう言い切った。

このような権力の地位にある者が壮麗な国家的儀礼をおこなうことで、結果として、支配者たることができるという仮説は、天皇が三種の神器を代々受け継ぎ、国家の祭礼を取り仕切ってきた日本の天皇制にも当てはまるところがある。

2019年4月から5月にかけての天皇の交代とそれに関連する元号の変更という行事は、権力によるミランダ操作なのだろうか。それとも、天皇が興行主、官僚が舞台装置係、マスメディアが囃子方、大衆が観客になる、現代版日本劇場国家のスペクタクルなのだろうか。

 (2019.4.30  花崎泰雄)

 

 

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CEO

2019-04-09 19:18:50 | Weblog

クレプトクラシー(kleptocracy、泥棒政治)という言葉がある。泥棒政治家なら kleptocrat である。

ベルリンに本部がある国際NGO・トランスペアレンシー・インターナショナルによると、世界の泥棒政治家のワースト10は①インドネシア大統領だったスハルト②フィリピンの元大統領マルコス③ザイールの元大統領モブツ④元ナイジェリア国家元首アバチャ⑤元ユーゴスラビア大統領ミロセヴィッチ⑥元ハイチ大統領デュヴァリエ⑦元ペルー大統領フヒモリ⑧元ウクライナ首相ラザレンコ⑨元ニカラグア大統領アレマン⑩元フィリピン大統領エストラーダだそうだ。スハルトは何兆円もの金を国から掠め取り、エストラーダは80億円ほど盗んだと推定されている。その他のクレプトクラットが盗んだ金額はスハルトとエストラーダの中間。(詳しい資料は

https://www.transparency.org/whatwedo/publication/global_corruption_report_2004_political_corruption

Global Corruption Report 2004 を開いて13ページに進むと読むことができる)

クレプトクラシーという用語はもっぱら20世紀になって使われ始めた。合法的支配という考え方が広く支持されるようになったせいである。旧体制のカリスマ的支配や伝統的支配が行き渡っていた時代には、国家の多くは家産制の形をとり、そもそもクレプトクラシーを問題にするような人はきわめて少なかった。

豊臣秀吉の醍醐の花見のような規模の催しは、ルイ14世のヴェルサイユ宮殿造営に比べれば可愛らしい無駄遣いだが、今日の目で見ればクレプトクラシーの一種である。なにしろルイ14世は「朕は国家なり」とのたもうたとされているので、その当時のフランスでその支出の正当性を疑う人はすくなかったことだろう。

そのヴェルサイユ宮殿を借りて結婚披露宴を催し、賃借料をルノーに肩代わりさせた疑いでフランス司法当局の調べが進んでいるカルロス・ゴーン氏への容疑など、フランスが合法的支配を掲げる現代国家なったことの証だ。

さて日本では、ゴーン氏の弁護士が、ゴーン氏の独白録画を4月9日東京で記者たちに披露した。画面のゴーン氏は「私は無実」「日産の陰謀」を主張した。

ゴーン氏がCEOだった時代に日産やルノーから会社の金を私的な目的で流用したと疑われている事件の黒白は裁判を待たねばならない。

もしゴーン氏が「黒」の判定を受けることになれば、CEO の「E」は extortion のEということになる。ゴーン氏が「黒」ということになれば、長年にわたってたかり屋のCEOにしたい放題のことをさせてきた歴代の日産取締役の職務怠慢も厳しく責められることになる。同時に、世界的企業のCEOがたまたまたかり屋になったのか、たかり屋がたまたたま世界的企業のCEOになったのか、ノンフィクション『ゴーン一代記』の出版も待たれる。

 (2019.4.9 花崎泰雄)

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れいわ

2019-04-02 21:32:38 | Weblog

新聞の1面にでかい活字で「令和」とあった。新しく日本で使われる年号だという。「初春令月気淑風和」という大伴旅人の言葉が典拠となった。

優雅な言葉であるが、「令」と「和」を組み合わせた「令和」という熟語は見たことが無い。年号はめでたい言葉を2つ拾い出して組み合わせたものだから、その組み合わせがめでたいか、そうでないか、一概には言えない。

「令」は「令嬢」「令名」の「れい」だが、一方で、「命令」「律令」「軍令」「戒厳令」などの「れい」でもある。杜甫の「後出塞」という詩には、

 

   朝に東門の営に進み 暮に河陽の橋に上る
     落日大旗を照らし 馬鳴いて 風蕭蕭たり
    平沙万幕を列ね、部伍各々招かる
    中天に明月懸かり 令厳にして夜寂寥たり
    悲笳数声動き、壮士惨として驕らず
    借問す 大将は誰ぞ 恐らくは是れ 霍嫖姚ならん

  とある。「令厳にして夜寂寞たり」の「れい」でもある

 

「和」はやわらぐの意。めでたい言葉で老子も仏教も「和光同塵」を言う。「やはす」(和す)は、「やわらげる」と言う意味と「帰服させる」という意味もある。帰服は古くは「きぶく」と読んだ。降伏させて支配下に置くことである。大伴家持の歌に、

 

   久かたの天あまの門開き高千穂の岳に天降し
   天孫の神の御代より梔弓を手握り持たし
   真鹿児矢を手挟み添へて大久米のますら健男を
   先に立て靫取り負ほせ山川を岩根さくみて
   踏み通り国覓ぎしつつちはやぶる神を言向け
   まつろはぬ人をも和し掃き清め仕へまつりて
   蜻蛉島大和の国の橿原の畝傍の宮に
   宮柱太知り立てて天あめの下知らしめしける

とあり、「まつろはぬひとをも和し」とあるは、服従しない人を降伏させて支配下に置く、と言う意味である。英語の pacify に「鎮圧する」という意味があるのと同じである。かつてベトナム戦争で米国が “pacification” という言葉を使った。解放軍が根拠地にしていた農村地帯を制圧しようとするプログラムだった。

語義には多面性がある。年号に「言霊」があるかのような「敷島の大和の国は言霊のたすくる国そまさきくありこそ」など根っから信じない人にとっては、年号など無用の「符牒」にすぎない。

筆者は「れいわ」と言う音を聞いて「零和」の字を思い浮かべた。「零和」とは英語「ゼロ・サム(zero sum)」の日本語訳である。

(2019.4.2 花崎泰雄)

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ヘッドスカーフ

2019-03-18 09:22:35 | Weblog

クライストチャーチの2つのモスクで、白人による反移民・反イスラム主義者による銃撃で大勢のイスラム教徒の移民が殺された。人種間,宗教間の憎しみが平和なニュージーランドにまで及んだことに驚く。

アーダーン・ニュージーランド首相が黒いヘッドスカーフ、つまりイスラムのヘジャブを被り、黒の喪服姿で、被害者の家族やイスラム教徒のコミュニティーのメンバーを弔問に訪れた。日本のテレビもこの映像を流した。

アーダーン首相の黒いヘジャブには2つの意味がある。1つはイスラム教徒のコミュニティーに対する弔問である。ローター通信によると、被害者の親族が首相のヘジャブに大きな慰めを感じたと語った。

と同時に、白人至上主義者や反イスラム主義者によるテロリズムを、ニュージーランドでは2度と起こさせないという決意表明である。

トランプ米大統領がエルサレムの嘆きの壁で被ったユダヤの小さな帽子・ヤムルカや、安倍・日本首相がリオデジャネイロで着て見せたスーパーマリオのぬいぐるみなどとは全く違う真摯な政治的演出なのである。

 (2019.3.18 花崎泰雄)

 

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あらげる・あららげる・あらぶる

2019-03-11 00:58:21 | Weblog

昔々、全面講和か単独講和かをめぐって、日本国内の意見が分かれたとき、時の吉田茂首相が、全面講和を唱えた南原繁・東京大学総長を、、曲学阿世の徒と激しく非難したことがある。

憲法9条の下で日本が武力行使できるのは①我が国に対する急迫不正の侵害がある②これを排除するために他の適当な手段がない③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと――の3要件がみたされた時である、というのが最近まで内閣法制局の見解だった。

それが、安倍政権の新方針で①日本に対する武力攻撃が発生したこと、また日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること②これを排除し、日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと――の新3要件を合憲としたのが、横畠祐介長官率いる内閣法制局だった。

日本を取り巻く安全保障環境が変わったので、日本だけでなく日本と密接な関係にある他国への武力攻撃も、日本が憲法9条の下で武力攻撃に踏み切ることができる条件の1つに加えた。

その大転換の立役者である横畠内閣法制局長官が、さきの参院予算韻会で国会には内閣を監督する機能もあるが、「このような場で声を荒らげて発言するようなことまで含むとは考えておりません」と発言した。

その前段で質問者である小西洋之議員が、「安倍総理のように時間稼ぎをするような総理は、戦後1人もいませんでしたよ。国民と国会に対する冒とくですよ。聞かれたことだけを堂々と答えなさい。我々、国会議員は国民の代表として、議院内閣制のもとで質問しますので、私の質問は、安倍総理に対する監督行為なんですよ」と言ったことと対になっている。

国会は一強他弱で、運営は自民党が思うがまま。野党は首相べったりの法制局長官にまで侮られたと感じた。自民党内の1強である安倍首相の忠臣までもが首相気取りで野党議員を侮った。

そもそも憲法は国会の内閣に対する監督権を認めているが、「声を荒げてそれを行うことまでは含まれていない」と内閣法制局長官が参院予算委員会で公言したのである。発言を撤回し陳謝したので、「声を荒げてそれを行うことまでは含まれていない」という法制局長官の論理展開や判断の法的根拠については明らかにならないままにおわった。

このニュースをテレビは「横畠長官が、声を『あららげて』……」と伝えたが、参議院予算委の審議中継を見ると、“あらぶる”横畠長官は「あらげて」と発音している。「あららげて」が正調日本語、「あらげて」は流通はしているが、堅いことを言えば変調日本語。

 (2019.3.10 花崎泰雄)

 

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さびしい風景

2019-02-26 01:41:12 | Weblog

沖縄の米軍普天間飛行場移設のため名護市辺野古沿岸部を埋め立てていることに関して2月24日に行われた県民投票で反対票が圧倒的多数を占めた。

25日付朝日新聞によると玉城沖縄県知事は政府に対して「辺野古の埋め立てを決して認めないという断固たる民意を真正面から受け止め、『辺野古が唯一』という方針を見直し、工事を中止するとともに、普天間飛行場の一日も早い閉鎖・返還に向け、県との対話に応じるよう、強く求める」と記者団に述べた。

一方、日本国政府は投票の結果は真摯に受け止めるが、移設は先送りできない、という態度である。

安全保障を最優先に掲げる政府とその支持者、沖縄を踏み付けにするなと叫ぶ沖縄の人とその支持者のにらみ合いが続く。沖縄の米軍基地が日本の安全保障に、過去ソ連の脅威が声高に叫ばれた時代においてどれだけ有用であったか。もっぱら北朝鮮の軍事的脅威が叫ばれるいま、沖縄の米軍の存在がどの程度北朝鮮の脅威を払拭してくれているのか。これから議論が展開するといいのだが、いまの日本ではこんな議論は好まれないだろう。

同じ25日の朝日新聞朝刊の天声人語がドナルド・キーン氏の死を悼んだ。その中でこんなふうに書かれた部分がある。「親交の深かった作家の安部公房は『新大陸発見』のコロンブスにキーンさんを讃えてこう書いた。あいにく大陸ではなかったが、日本文学という未知の群島に辿り着いてしまった冒険家なのである」。「群島で見つけた魅力の数々を世界へ発信してくれた」。

10月の「コロンブス・デー」は合衆国の祝日だが、コロンブス以前からアメリカには先住民が住んでいたし、スカンジナビアからバイキングが渡って来ていた可能性がある。コロンブスがアメリカを発見したわけではないが、コロンブスの到来を機に、ヨーロッパ人が南北アメリカにやって来て植民地を築いた。その過程で南北アメリカ大陸に住んでいた1000万人の先住民が暮らしを奪われ、文化を破壊され、部族が絶滅寸前においこまれた。、アメリカン・センター・ジャパンのサイトの記事にあった。

その記事によると、アメリカでは、アメリカ先住民をはじめとする各団体が、コロンブスがアメリカ大陸を発見したという主張に異議を唱えたことで、「全米各地の学校では、コロンブス・デーのカリキュラムにアメリカ先住民に関する知識と、ヨーロッパ人との接触がアメリカ先住民に及ぼした影響についての知識が加えられるようになった。州によっては、この祝日に両方の名前を付けて、「コロンブス・デー/アメリカ先住民の日」と呼んでいるところもある。また、アメリカ先住民の日を別に設けている州もある。サウスダコタ州では、先住民を称えて、正式にコロンブス・デーの代わりにアメリカ先住民の日を祝うようになっている」。

安倍公房存命のころは、アメリカはコロンブスによって発見されたと多くの人が思い込んでいたのだろう。それにしても日本の文芸がドナルド・キーン氏によって発見されたとはさびしい話である。草津温泉はベルツによって発見され、アンコールワットは仏人アンリ・ムーオによって発見され、マチュピチュは米人ハイラム・ビンガムによって発見された、という言説と同じである。遅れた国は白人国家という太陽に照らされて輝く月のような存在であるというある種のオリエンタリズムを感じさせる。

 (2019.2.26  花崎泰雄)

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そうまでしないと……

2019-02-19 23:27:05 | Weblog

日本の安倍首相が私のためにノーベル平和賞の推薦文を書いてくれた、とトランプ米大統領が記者会見でしゃべった時のニュースを伝える日本の新聞に、次のようなコメントが紹介された。

「もし本当ならひどい話だ。でも、お世辞を受け入れることが証明されている人には、とても巧みなやり方だ」(元米国務省当局者)。

このコメントは含蓄に富んでいる。①トランプ氏のような人物をノーベル平和賞に推薦するとは、ひどい話だ②トランプ氏のようなお世辞を受け入れることが証明されている人には、とても巧みなやり方だ(が、これまたひどい話だ)。

世の中には実利第一主義者がいて、トランプがノーベル平和賞に値しないのは誰しもが感じるところだが、彼が値するかしないかよりも、彼のために推薦状を書くことによって、安倍氏がトランプ氏に貸を作り、米国との貿易協定にあたって手加減求める手がかりをつくったという効果はある、と評価する。

上記のような実利論は、まことに短期的なもので、次の選挙でトランプ氏が2期目を失うことになれば、アメリカ大統領への貸しはゼロとなり、日本の指導者はトランプ氏並に下品で、その言動には注意しなくてはならない、というマイナスの印象だけが次の大統領に引きつがれることになる。ブッシュ(父)は2期目の大統領選挙で、民主党のクリントンに敗北している。トランプ大統領に2期目があるとは限らないのだ。

最近の衆院予算委員会の質疑で、野党の議員が、最近の官庁の若手には上だけを見て見て仕事をする者が増えている、と嘆いてみせた。役人だけではなく、日本の会社でも平社員は係長・課長を、係長を課長を、課長は部長を、部長は重役を、とそれぞれが上司のご機嫌をうかがいながら仕事をしている。

民間会社では、無資格者が自動車の完成検査をし、アルミや銅などの品質データ改ざんをやった。

官庁では、森友学園問題、加計学園問題、厚生労働省の統計問題など、怪しげな事柄が国会で追及され、「記憶にございません」という言葉が何度も繰り返された。

文書の隠蔽、改竄、廃棄。役人の劣化から垣間見えるのが、下から上へ、人事権を持つ者への忖度、おべっか、追従である。

日本の政府の役所の頂点に座っているのが内閣総理大臣だから、彼はあらゆる忖度・おべっか・追従を一身に受けている。その日本国首相自らが、あからさまに追従を届ける先が米国大統領である。

そうまでしないと日本の首相は務まりませんか、と予算委で野党議員が嘆くような、いやみな発言をした。

そうまでしないと務まらないのではなく、ついつい発作的にそうなってしまうのである。日米戦争とその敗戦、戦後のGHQとマッカーサー、これらの記憶は世代を越えて、日本の権力の中核とその周辺にいる人たちに受け継がれ、いまや心的外傷後ストレス障害(PTSD)に似た日本支配層の持病になっているのである。

(2019.2.20  花崎泰雄)

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