新聞を開いて苦笑させられた。2013年10月30日付の朝日新聞14面の社説だ。特定秘密保護法案をめぐる、社説としては型破りなブラック・ジョークだった。
その写真をここに添えておく。まだお読みになっていない方は、新聞紙でもインターネットでもいいから、とりあえず読んで、こんな新聞を読まされる日を想像なさるといい。
自由な言論が世界で最も尊ばれていると自負するアメリカ合衆国では、だいぶ前から伏字でいっぱいのベストセラーが売られるようになっている。国防省や情報機関から伏字を押し付けられたことで、かえってベストセラーになったのかもしれない。アメリカのアフガニスタン最前線での隠密作戦のノンフィクション Anthony Shaffer、Operation Dark Heart だ(米国では St Martin’s Press、英国ではMainstream Publishing 刊)。
特定秘密保護法案では、行政の長が秘密を指定する。
2005年、鈴木宗男代議士が「外務省文書の秘密指定区分に関する質問主意書」を提出し、①外務省の文書にはどのような秘密区分があるか②極秘の指定とはどのような基準でなされているか③秘(無期限)の指定はどのような基準でなされているか④期限付きの秘の指定はどのような基準でなされているか⑤取扱注意の指定はどのような基準でなされているか⑥取扱注意の指定がなされた文書といかなる指定もなされていない文書との間にはどのような差異があるか⑦秘密指定の解除をせずに外務省職員が極秘もしくは秘の指定がなされた文書を外部の人に渡す、あるいは提示することは許されるか⑧許されないとした場合、当該職員にどのような処分がなされるか⑨取扱注意の指定の解除をせずに外務省職員が取扱注意の指定がなされた文書を外部の人に渡す、あるいは提示することは許されるか⑩九が許されないとした場合、当該職員にどのような処分がなされるか。あるいは処分はなされないか⑪極秘、秘、取扱注意の指定もなされていないが、外部に対して公開しない内部文書が外務省に存在するか12そのような文書があるとした場合、当該文書は情報公開の対象となるか――と質問した。
これに対して、小泉純一郎首相が①外務省の文書に係る秘密指定の区分としては、①「秘」及び「極秘」がある②極秘の指定は、秘密保全の必要が高く、その漏えいが国の安全、利益等に損害を与えるおそれのある文書に対して行われる③~④秘の指定は、極秘に次ぐ程度の秘密を含み、関係者以外の者には知らせてはならない文書に対して行われる。また、秘密指定に当たっては、当該文書の内容等を踏まえ、原則として、併せて秘密指定期間を定めることとなっている⑤取扱注意の指定は、秘密文書以外の文書で、当該文書に係る事務に関与しない者にみだりに知られることが事務遂行に支障を来すおそれのあるものに対して行われる⑥取扱注意に指定された文書の取扱いは、秘密文書の取扱いに準ずるものとされている。いかなる指定も行われていない文書の取扱いについては、特段の定めはない⑦~⑩極秘、秘又は取扱注意の指定が行われた文書について、これらの指定を解除することなく外部の者に配付し又は提示することは、原則として許されない。このような行為を行った職員に対する処分の在り方については、一概にお答えすることは困難である⑪~⑫ 極秘、秘又は取扱注意の指定が行われていない文書であって、外部に公開していないものは存在する。そのような文書について行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)に基づく開示請求があった場合には、同法の規定に従って対応することとなる――と答弁書を返した。
筆者がまだ勤め人だったころ、「お話ししたいことがある」と外務省に呼び出されたことがある。出かけてみると、筆者が担当していた企画が現地のイギリス・ウェールズの住民の間で不評だという情報提供だった。その情報源として示してくれたのが、現地ウェールズの新聞の切り抜きだった。
そのスクラップ記事を読みながら、ふと気がついた。その新聞記事切抜きにスタンプが押してあった――「取扱い注意」。
(2013.10.30 花崎泰雄)